憧れをこの手に


さて、私のTwitterをフォローして下さっている方は既にご存知かと思いますが、この度新たに時計を買いました。


題名にある通り、私が長年憧れていたピアジェ・アルティプラノ60周年記念モデルです。薄く小さく美しい時計こそが理想である私にとっては、最近の時計としては限りなく理想に近い一本です。



Altiplano 60th Anniversary / PIAGET 

出典:www.piaget.com


Ref:G0A42107
ケース径:38.0mm
ケース厚:6.00mm
重量:35.6g
ケース素材:ホワイト・ゴールド
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:ホワイト・ゴールド
ベルト素材:アリゲーター・レザー
バックル:ピンバックル
防水性:3気圧(30m)

この時計を買ったのはつい先日なのですが、アルティプラノ誕生60年の記念モデルなので、伝説的な極薄キャリバー9P搭載モデルが発表された1957年の60年後にあたる2017年に発表された時計です。

じゃあ中古かというと、そうではなくて今回はブティックで購入しました。有り体に言えば売れ残っていたんです。

もちろんこういう古いモデルはいつまでもショーケースにはありません。私は以前からこのモデルの存在は知っており、そのデザインに惹かれていたので、在庫の有無を確認してもらいました。

これまでの経験上、もう廃番となった(もしくは売り切れたとされる)モデルがひょっこり正規店に出てくるというのを何度か見てきた事もあり、このモデルもひょっとしたら?という思いがあったのです。

特に、このモデルは460本の限定ですが、これってピアジェの知名度を考えればかなり多いと思っていました。

加えて60周年時にはこのモデルを含めた複数のアルティプラノが同時にリリースされていた事もあって、正直7-8割方は在庫あるだろうと思っていたのです。


果たして問い合わせから程なくして、「1本だけご用意できます」という連絡を頂きました。いやもっとあるやろ、と内心思いつつも、実物を確認しに行きます。

もう一本の候補として以前ご紹介した2020年の限定モデルと並べて実物を見れたので非常に良かったです。


この時の記事でアルティプラノの魅力は語ったつもりでしたが、やはり所有するとさらに見えてくる事が沢山あります。

まずはこの60周年モデル特有の意匠ですが、インデックスは現行アルティプラノが採用しているシングルとダブルのバー・インデックスを交互に組み合わせるパターンではなく、12時インデックスのみがダブルであとは全てシングルのバー・インデックスとなっています。

これに関しては正直言って現行デザインの方が好みです。

一方で個人的にこのモデル最大の魅力はPIAGETロゴです。よーく見ると、このロゴは現行より少し縦が短く、角の取れた可愛い書体です。

これが堪らないんですよ。

初代Cal 9Pを搭載した伝説的ラウンドウォッチに通づる(私にとっては)極めて魅力的なディテールです。


もう一つ特徴的なのは文字盤上のクロスです。これは上述の1957年のモデルでは無かった意匠ですが、1960年に登場した極薄自動巻キャリバー12Pを搭載したモデルに見られたデザインです。

それは手巻きモデルで要るんか?という疑問はありましたが、自動巻モデルとのデザインの平仄を取っているのでしょう。

引き算の美学を体現するアルティプラノにとっては若干蛇足か?という気もしつつ、このライトブルーのクロスがもたらすアクセントが中々良いのです。

外装仕上げに関しては文句なく、サンレイ仕上げのラッカー文字盤、ブラックポリッシュされた針とアプライド・インデックス、更に一見するとシンプルなケースも非常に凝った作りです。

アルティプラノといえばご存知の通り極薄ケースを実現するための2ピース構造ですが、ベゼルは3面のファセットを持つ立体的な構成です。

ポリッシュ面も全く歪みがないため、このベゼルが光を様々に拾ってまるでカッティングされたジュエリーのようにキラキラと煌めく様は実に美しいです。



型番:430P
ベース:-
巻上方式:手巻き
直径:20.5mm
厚さ:2.10mm
振動:21,600vph
石数:18石
機能:2針
精度:-
PR:43時間

搭載する430Pは傑作機9Pの系譜を継いで1998年に登場した手巻きムーブメントです。9Pが40年近く現役を務めたあと、20年以上にわたってピアジェの基幹ムーブメントの一つとして生産されて来ました。

厚さ僅かに2.1mmで、極薄キャリバーとしては生産性と耐久性に非常に優れた名機ですが、流石に現代の目線で見れば華奢というか、性能面での旧式化は避けられません。

しかし430Pはピアジェ以外でもリシュモングループ各社や懇意とする他ブランドにエボーシュとして提供されている事から、案外いろんな時計で使われています。

パッと思いつく限りでも、ヴァンクリーフカルティエラルフローレンなどが430Pベースのムーブメントを使用しています。

青ネジサーキュラー・コート・ド・ジュネーヴをあしらってはいますが、ブリッジのパーティングはややいびつで、審美性という観点では先代9Pが明らかに優れています。

私は基本的に機械式時計はシースルーバックが良いのですが、アルティプラノを調べるうちに、薄さを追求するためにソリッドバックにするという選択肢を取ることがあると知りました。


1957年に登場した9P搭載のウルトラスリムモデルも、やはりこのアルティプラノと同様にソリッドバックの2ピース構造のケースを持っていましたが、仮にシースルーバックにすると+0.5-1.0mm程度は厚みが増してしまう筈です。

よくシースルーバックに関しては夏場のベタつきを嫌う意見を目にしますが、私はそれは殆ど気にならず断然裏スケ派でしたが、時計を薄くするためのソリッドバックであれば完全にそちらを支持します。

またこのケースは外端を絞っており、断面がどら焼きのようになっています。これが一層時計を薄く見せると共に、手巻きのし易さにもひと役買っており、非常によく考えられたケースだと思います。

という事で、430Pの審美性には物申したいものの、そもそもソリッドバックが前提の極薄ムーブメントであればこそ、審美性を犠牲にして信頼性を取ったと考えれば、全く不満はなくなるのです。

<3面のファセットを持つベゼル>

という事で自己満足度は極めて高く、ドレスウォッチに関してはこれ以上望むものは特にありません。

アルティプラノ購入に当たっては、本当にコレで後悔しないかを考えるために、貴金属ケースのドレスウォッチをかなりみて回りました。

カラトラバ、トラディショナル、サクソニア、1815アップ/ダウン、ブレゲ・クラシック、ヴィルレ、マスター・ウルトラスリム、アトゥム37、トレゾア、GP1966、トリック、パノリザーブ、セネタ・エクセレンス、チェリーニ etc.

とにかく思いつく対抗馬は片っ端から見たつもりです。

第三者的に評論するなら、アルティプラノよりお勧め出来ると思える素晴らしい時計は幾つかありましたが、主観的にはアルティプラノの美しさを上回る時計はありませんでした。

最後まで迷ったのは900P搭載のアルティプラノですが、文字盤側に輪列を持ってきたアヴァンギャルドなデザインの900Pを着用するシーンが全く思い浮かばず、こちらのモデルにした次第です。

(ただ900Pはディスコンとなっているので、今でも後ろ髪を引かれる思いは少しあります笑)


今回この時計を迎えたのは、私がキャリアアップを目指して転職する事にしたので、その記念に何か1本、と思ったのがキッカケです。

有り体に言えば、望外に退職金を貰えたのが引金なのですが笑

次の会社のコーポレートカラーもこのアルティプラノによく似た深い青という事もあって、思い入れはひとしおです。

という事で、新しい職場に馴染むまでしばらくブログの更新頻度が落ちるかも知れませんが、悪しからず。

この憧れの一本と共に、新たな挑戦を始めたいと思います。