年の功より亀の甲 

最近私は正気を失っていたかも知れません。いや調子に乗っていたという方が正しいでしょうか。

このブログも3年目に突入し、色々な時計を紹介してきた中で、超高級レンジに目を取られ過ぎていたような気がいたします。

2021年は地に足をつけて、もっと現実的な時計に注力していきたいと思います。

という事で本日はサーチナ(CERTINA)です。古参時計ファンにはお馴染みかと思いますが、若い皆さんはあまりご存知ないんじゃないでしょうか。

勿論一般的知名度は皆無です。

サーチナ1888年にスイスはグレンヘンで創業した老舗メーカーで、スポーツウォッチを得意としています。

1971年スウォッチグループの前身であるASUAGの一員となっており、スウォッチGの中でも古参のメーカーになります。

現在は国内では展開していないブランドですが、かつては日本とも縁があり、冒険家山家の三浦雄一郎氏が1970年にエベレストのサウスコル(8,000m)からスキーで滑降した際に、着けていたのがサーチナのDS-2クロノグラフでした。

ブランドロゴに亀の甲羅DSの文字がありますが、これは同社の製造する時計の堅牢性を示しています。DSはDouble Securityの略で、対衝撃性と防水性を備えている事を示しています。

その堅牢性は先のエベレスト登頂などが証明していたという訳ですね。

DS Chronograph Automatic / CERTINA 
出典:www.certina.com


RefC038.462.16.037.00
ケース径:42.0mm
ケース厚:13.9mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:ステンレス・スティール
ベルト素材:レザー
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:10気圧(100m)
価格:€1,920.- (約24万円)

そんなサーチナにおける一番のお勧めはこのDSクロノグラフ・オートマティックです。

この秀逸すぎるヴィンテージルックの2レジスター・クロノグラフは最高じゃないですか?しかもノンデイトというのがまた懐古的で素晴らしいです。

マットなシルバーオパリン仕上げのダイアルは3時位置に30分積算計、9時位置にスモセコダイアルを持ち、ミニッツトラック、タキメーター、テレメーターが密集する外周デザインは萌えまくります。

アワーインデックスは12、6のアラビアン・インデックスとウェッジ型インデックスを合わせ、いずれもアプライドです。

針も青焼きかつ先端を少し曲げてあり、中々凝っています。


デザインは無茶苦茶素晴らしいのですが、惜しむらくは42 x 13.9mmというサイズです。このモデルは同社の1940年代の作品に範をとっていますが、オリジナルは36mmという素晴らしいサイズでした。

後述するムーブメントありきという点があるにしても、39mm径くらいには抑える事ができたはずなので、ここの判断は悔やまれます。

厚みが13.9mmというのは数字的にはかなりの物ですが、ボックス風防とドーム型の裏蓋なので実際はそこまで厚みは感じないでしょう。

もう一つ気になるのはクロノグラフ・プッシャーの形状です。このモデルでは長方形のプッシャーが採用されています。

まあオリジナルがそうなので仕方ないのですが、個人的にはヴィンテージ風のクロノグラフにはシリンダー型のプッシャーが欲しいところです。

しかしその辺りを差し引いてもこのダイアルデザインはホントに素晴らしいですね。

型番A05.H31
ベース:Valjoux 7753
巻上方式:自動巻
直径:30.0mm (ベースキャリバー)
厚さ:7.90mm (ベースキャリバー)
振動:28,800vph
石数:27石
機能:スモセコ3針クロノグラフ
精度:-
PR:60時間

搭載するのは自動巻のValjoux 7753をベースにしたA05.H31。抜群の信頼と実績を誇る7750系キャリバーですから、精度や堅牢性に不安はありません。

また将来的なメンテナンスでも困る事は少ないでしょう。

7750系なのでクロノグラフ機構はカム式水平クラッチ(スイングピニオン)になります。しかもこのA05.H31は、シリコン製ヘアスプリングを搭載しています。

これはスウォッチグループのブランドにしか(今の所)許されないアップデートなので、興味津々です。耐磁性と理論上の等時性に寄与している事でしょう。

ヘアスプリングがシリコン製という事で、上の画像を見ても分かりますが、テンプはフリースプラングです。

フリースプラングの7750系っていうとオメガCal 3330辺りもそうですが、あれはコーアクシャル脱進機、コラムホイール化などなど魔改造されていますのでお高いです。

A05.H31ハミルトンティソで見られるような簡易型のフリースプラングのようですが、お陰で低価格でこのアップデートなのは良いですよね。

出典:monochrome-watches.com


このデザインにこのムーブメントを載せて、約24万円という価格は破格と言っていいんじゃないでしょうか?

他社で7750を載せた時計といえば40万円前後はするイメージなので、スウォッチグループのスケールメリットが活かされたパッケージといえるでしょう。

逞しい手首をお持ちで、ヴィンテージルックな2レジスター・クロノグラフをお探しの方にはかなりお勧めです。

この見た目で10気圧防水という実用性を備えている点も見逃せませんね。

個人的にも大きさ以外殆ど文句がないのですが、いかんせんサーチナが国内展開していないので触れません。

確かにロンジンも最近いい感じのヴィンテージ風クロノグラフを投入しているので、競合するといえばそうなんですが、価格面の魅力は結構あると思うんですけどね。


でも多分入ってこないでしょう。

サーチナの主力は10万円前後のスポーツウォッチなので、グループ内でもティソハミルトンと被りますし、国内にはセイコーオリエントも控えているので後発では厳しそうです。

サーチナの中では圧倒的にこのモデルが高額なので、気合の入れようも違うのだと思います。

それだけにコレは指名買いに値すると思うので、例外的にデパートのスウォッチGコーナーにでも置いてくれたりすれば面白いんですけどね。

また老舗なのでアーカイブは結構面白くて、Chrono24などを見てみると1970年代にはレトロフューチャーなモデルやヴィンテージ・ダイバーなど格好いいモデルが色々あって、この辺を復刻すれば売れそうな気もします。

まあいつもの素人の戯れ言ですけど笑

ユニオン・グラスヒュッテなんかもそうですが、日本未上陸のスウォッチ傘下のブランドは、私のような人と被ると死ぬ病の人間には刺さるものがあります。

また何か見つけたらご紹介したいと思います。