Go my own way

いやあ、前回は失敗でした。。なんでKSK取り上げたんでしょうね私は笑

話題の最新モデルのプレビューなんて業界方面から幾らでも良質な記事が出ますから、場末のブログなど無価値でしたな。

という事でいつもの誰得路線に回帰します。

ところで、不可能な事の比喩で「砂漠の中で砂金を探すようなもの」とか言いますが、腕時計の世界において自分にとって最高の一本に出会うのってこれに似ているような気がします。

毎年何百本もの新作が世に出ているのでそれを追うだけでも大変ですが、振り返れば過去の作品がそれを遥かに上回る種類流通しているのです。

メディアも過去作品を取り上げるなんてことは余程の有名モデルを除けばあまりないですから、名作でありながらマイナーな存在であった過去の時計を見つける事など殆ど不可能なように思えます。

ですが偶にはそんな奇跡的な出会いもある訳で、それが時計趣味の醍醐味だったりするんです。

そんな訳で久々の名作アーカイブスはこれでいきましょう。

Hampton Exclusive Handwind / BAUME ET MERCIER 
Ref:MOA10033
ケース径:45.5 x 29.9mm
ケース厚:10.65mm
重量:-
ケース素材:ローズ・ゴールド
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:アリゲーター・レザー
バックル:ピンバックル
防水性:5気圧(50m)
価格:1,245,000円(税抜)

2012年に登場した手巻きのハンプトンです。ハンプトンといえばリシュモングループでエントリーラインを担うボーム &メルシエのレクタンギュラーコレクションですね。

ボーム&メルシエ(B&M)はスウォッチグループでいえばロンジンくらいの立ち位置だと思いますが、美しいデザインかつバリューの高い時計を送り出す老舗です。

私が初めて機械式時計(ケープランド)を買ったブランドでもあり、個人的な思い入れもひとしお。

そのB&Mが1940年代のモデルを復刻したのがこちらになります。


形はレクタンギュラーですがカーブしたサファイア・クリスタルを持つグラマラスな造形がポイントの時計ですね。

この盛り上がった風防とそれを支えるケースサイドのデザインが実に美しい。官能的とすらいえるラインじゃないですか?

45.5 x 29.9mmというサイズはやや大きいです。風防がカーブしているので厚みも10.65mmと結構あります。装着感は実際腕に乗せてみないとなんとも言えないですね。

ローズ・ゴールドのケースにコッパーダイアルと、カラーリングはゴージャスですが、嫌味はありません。

スッキリとしたローマン・インデックスと四角いスモセコダイアルを配した文字盤も、1940年代の香りを感じるクラシカルなデザインです。


元々B&Mが好きだということもあって、このモデルを偶々Webクロノスで見たときは衝撃が走りました。大袈裟にいえば天啓なんじゃね?と思ったくらいです。


おそらくこのモデルは相当マイナーでしょう。

何故ならアンダー50万円が主戦場のB&Mが125万円というプライスタグをつけているんです。

ほぼタンク・ルイ並みの値段だと考えれば、敢えてこの時計を買う人はかなりのB&Mフリークか、さもなければ変態です。

まあ流石に私も定価だと躊躇するかなって感じですが、自称B&M愛好家としてこの名作を手にしないなんて許されるのかって思いもあります。


型番:La Joux-Perret 736-3
ベース:-
巻上方式:手巻き
直径:-
厚さ:4.80mm
振動:21,600vph
石数:21石
機能:スモセコ3針
精度:-
PR:42時間

搭載する機械も中々興味深いものがあります。ラ・ジュウ・ペレ736-3はあの珍しい角型ムーブメントです。

オリジナルはJaquet 736として知られており、結構色々なレクタンギュラー時計で採用されているムーブメントなので、角型好きな人にはメジャーな存在かも知れません。

両持ちのバランスブリッジにコート・ド・ジュネーヴ仕上げと青焼ネジを使った装飾はジュネーヴ様式であり、B&Mらしい部分といえるでしょう。

6振動/秒42時間パワーリザーブ、旧式の緩急装置と、性能面で取り立てた特長はありませんが、角型時計には角型ムーブが欲しいMinority’s Choiceとしてはこの点は見逃せません。

決して極上の仕上げではありませんが、シースルーバックからその姿を鑑賞できるのも嬉しいポイントですね。


100万円超えるというのは中々ハードル高いですが、優れたデザインに角型ムーブメントを搭載し、殆ど市場で忘れ去られたモデルというのが何とも魅力的です。

ただ、ネットで探した感じでは近場に在庫はなさそうでした。

時計自体のボリュームがありそうなので、やはり一度試着してみないとダメだと思いますが、中々そのチャンスは無さそうですね。

冒頭でも述べた通り私にとってはB&Mは初めての機械式時計ブランドでもあるので、どこか特別な思い入れがあるのは否めません。

そんな彼らの特別なモデルとなればどうしても気になってしまいます。

B&Mにそんな思い入れがある人は多くないと思うので、このハンプトンへの想いは中々伝わらないでしょうけど、まあ別に良いです笑

今回のポイントは、機械式時計の膨大なアーカイブを探れば、自分にとって気になるモデルがあったりするので、そういったものを気長に探してみるというのもまた面白いですよ、っていう話です。

デリバリー間もない最新作だ!とか超プレミアムのレアモデルだ!!とか、SNSでいいねが一杯つきそうなモデルも良いんでしょうけど、物の価値なんてのは結局自分の尺度で決める方が良いのです。

そうやって決めたモノなら、後から他人に何と言われようと鼻で笑ってやり過ごせるでしょ?