魅惑のブルー

ブルガリといえばイタリアを代表するジュエリーブランドですが、近年は機械式腕時計メーカーとしても飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しています。

一昔前なんて、時計好きからはエボーシュを使う割高ファッションウォッチと認定されていた感じもありますが、今や世界最薄の自動巻クロノグラフキャリバーを要するなど、業界屈指の技術力を誇っています。

従来から得意としていた高いファッション性に加え、マニファクチュール(しかも高い技術力を誇る)としての付加価値まで備えた事から、業界の風雲児的な存在であると言えるでしょう。

時計そのものだけでなく、ゼニスタグホイヤーウブロを傘下に持つLVMHグループにおけるウォッチ&ジュエリー部門の盟主として、バーゼルワールド2020からの離脱をいち早く表明し、独自の見本市を主導するなど、政治力も見せつけています。

とはいえ、いち時計ファンとしてはそんな事はどうでも良くって、やっぱり気になるのは時計そのものです。

Octo Finissimo Automatic / BVLGARI 

Ref:103431
ケース径:40.0mm
ケース厚:6.40mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:ステンレス・スティール
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:100m
価格:€11,500.-

2020年7月発売予定の新作であるこのオクト・フィニッシモのブルーダイアルは、かなり楽しみな一本です。

デザインはすっかりブルガリの基幹コレクションとして定着したオクト・フィニッシモそのものですが、美しいサンレイ仕上げのブルーダイアルは待ちに待ったバリエーションといえるでしょう。

複雑な多面カットを用いたケース形状故に、スクウェアケースのようなシルエットになっており、40mm径と言いつつかなりボリューム感のある時計です。

しかしそれとは裏腹に厚みはわずか6.4mmしかないという繊細も持っており、デカ薄という独自のキャラクターを持つ時計です。

これによってブルガリらしい大胆さと腕時計としての装着感の良さを両立していますが、イタリアファッション業界の重鎮たるブルガリのキャラクターがなければデカ薄という領域は中々真似できないでしょう。

その意味でもオクトは素晴らしいコレクションだと思います。

その新作であるサンレイブルーはデザイン・仕上げ・実用性のバランスが良く、ブルガリのラグスポカテゴリーを担う素晴らしい一本です。

何よりもまず目を惹くのはその美しい文字盤です。以前からラインナップしていた地中海のように鮮やかなブルーとは異なり、ややグレーがかった落ち着いた色を採用しています。

しかしこれがサンレイ仕上げと出会う事で、なんとも色気のある雰囲気になっています。


そしてケースの仕上げも筋目の強いサテン仕上げがステンレス特有の輝きと相まって実にカッコよく仕上がっています。

白銀色に輝くステンレス・スティールの良さを引き出す強めのサテン仕上げは、ロイヤルオークでも証明されている通り、実にシャープです。

そして向上した実用性も見逃せません。既存のチタンケースは厚さ5.15mmと非常に薄いのですが、その分30m防水と実用面での頼りなさがネックでした。

その点、このモデルでは100m防水と文句なしにラグスポといえる実用性を確保しています。僅か6.4mmの厚さでこの防水性能は他に類を見ません。これは何気に凄いと思います。


型番:BVL 138
ベース:BVL 127
巻上方式:自動巻
直径:36.6mm
厚さ:2.23mm
振動:21,600vph
石数:36石
機能:スモセコ3針
精度:-
PR:50時間

搭載するのは2017年の登場時に、ピアジェP12を王座から引き摺り下ろし、世界最薄自動巻キャリバーの座についたBVL 138

ブルガリがマニファクチュールとしての評価を確固たるものにしたのは、このムーブメントの薄型化によるものです。

ブルガリは、高い技術で知られた独立系ブランドであるジェラルド・ジェンタダニエル・ロートを2000年に相次いで買収し、ブルガリの複雑時計部門として吸収しました。

いわゆる超複雑機構を手掛ける一方で、量産モデルにおける極薄キャリバーを開発したこともこの技術部門の大きな功績の一つといえるでしょう。

直径36.6mmと大型の機械なので、水平方向に十分なスペースが確保できる事から薄型化自体はそれ程高いハードルではなかったかも知れません。

しかし、シースルーバックから覗く目一杯に詰まった、ムーブメントは迫力満点であり、プラチナ製マイクロローターを持ち、コート・ド・ジュネーヴペルラージュが施された美しいキャリバーです。


オクトコレクションの特徴の一つでもある短いコマのブレスレットは装着感も良く、これからの季節には重宝します。

まだ国内定価は定かではありませんが、€11,500を単純に円換算すれば140万円程度ということになります(実際はもう少し高いでしょうかね)。

決して安くはありませんが、同価格帯のライバルとしてはピアジェポロSショパールアルパインイーグル辺りになるでしょうから、ほぼ同価格帯になりそうです。

イタリアらしいキャラの立ったデザインと仕上げが最大の魅力である新作オクトですが、機械も極薄マニファクチュールキャリバーという見所を備えており、高い実用性と合わせて、パッケージングは見事です。


私の細腕にはちょっとボリュームありすぎかなと思うのですが、イタリアファッションを愛する洒落たオヤジには似合うハズです。

なんとも妖しい魅力のブルー文字盤に精悍で彫刻的な外装の美しさは見る者を魅了します。

それなりに派手な時計なので誰にでも似合うというわけではありませんが、ビジネスシーンにもビーチリゾートにも映える華やかさは格好いいですね。

ブルガリは時計メーカーとしてはちょっと歴史が…とかそんなオタク的視点を持つ人には刺さらないかも知れませんが、現行モデルは間違いなくモノとしてのレベルも高いですし、直感を大事にする人には刺さると思います。

似合いそうな人にはこの夏全力でお勧めしたい一本ですね。