完璧な調和
このブログでは、自分の好みの物を中心にあれこれと時計をご紹介しているわけですが、私はスモセコ3針の時計が好きです。
2針も捨て難いですが、6時位置にスモセコダイアルを持つ文字盤の美しさったらありません。
インデックスはローマン、アラビアン、バー、ブレット等々それぞれの良さがあって甲乙つけ難く、全て欲しいです。
スモセコ3針というレイアウトは懐中時計の時代から基本中の基本といえるフェイスなので、それこそ無限にモデル数は存在します。
そのフェイスの美しさを決定付けるのはスモセコの位置と大きさです(私の中では)。
結論から言えば、デカいのが正義です。
位置についてはスモセコの中心は文字盤中央と6時側の文字盤外縁を結んだ線分の中心、大きさについてはスモセコダイアル外周が文字盤中央および外縁に接するギリギリの大きさ、これがベストです。
百聞は一見にしかずですが、こんな↓感じです。
<Ref.8 Big / URBAN JÜRGENSEN>
たっぷり大きなスモセコダイアルのバランスが素晴らしすぎるのがウルバン・ヤーゲンセンです。
価格も素晴らしすぎてどうにもなりませんが、このバランスこそが理想的なのです。
本日はもう少し現実味のある選択肢を検討してみましょう。
Q-2010.1 Klassik / D.DORNBLUETH & SOHN
Ref:2010.1(GR) ST
ケース径:38.5mmケース厚:10.0mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:アリゲーター・レザー
バックル:ピンバックル
防水性:非防水?
価格:$ 8,380.-
ドーンブリュート&ゾーンというブランドは語感からも想像される通り、ドイツのメーカーです。しかし本拠地はグラスヒュッテではなく北部のカルベという田舎町。
それでもコアな時計ファンなら名前くらいは聞いた事がある、という実力派マニファクチュールであります。
デザインはいかにもドイツ時計という感じの、アラビアン・インデックス、レイルウェイ・トラックにスモセコを合わせたクラシックスタイル。
時分針がスペードハンズというのがオツです。数ある針の中でも私はスペードハンドはかなり好きです。持ってませんが(好きすぎて悩んでるんです)。
この顔で最も有名な時計は、IWCのポルトギーゼ・オートマティックでしょう。今年インハウス・キャリバーの新作を出して、時計好きの間では話題沸騰のモデルです。
しかしアレは私には大きいです。IWCの中では小さい方ですがそれでも全然大きい。
それに対してこのQ-2010は38.5 x 10.0mmと中々いいサイズです。ベゼル幅も普通にあるので、数字以上に文字盤はコンパクトです。
そのため凝縮感のある顔立ちになっており、それなりに余白のあるポルトギーゼとはかなり趣が異なります。
私としては顔だけ見ればポルトギーゼのバランスは流石だなと思うのですが、大きさや装着感は妥協できませんから、自分用に選ぶとなるとQ-2010になりますね。
ケースに目をやるとやはりこれもドイツらしい寸胴の3ピースケースです。リューズのサイズも程よく、小ぶりながらエッジが立った重厚感のあるケースですね。
ホーン型のラグは細長く、綺麗なシルエットを描いています。ラグの外側にバネ棒穴が開いているのは好みではないですが、総じて外装の質感は高いです。
で、肝心のスモセコはどうなんだと言うと、まあ80点くらいでしょうか(何を偉そうに…)。
中心の位置は完璧ですが、大きさはもっと大きい方が私の好みです。でもラグとのバランスなどまで考慮すると、この大きさが完璧なバランスに思えてきます。
型番:Q-2010
ベース:-
巻上方式:手巻き
直径:34.3mm
厚さ:4.70mm
振動:18,000vph
石数:29石
機能:スモセコ3針
精度:-
PR:52時間
ドーンブリュートが好事家から支持される理由は何と言ってもインハウス・キャリバーの存在でしょう。
搭載するのは、まさにあつらえたような34.3 x 4.70mmというサイズのQ-2010です。
3針キャリバーにしてはやけに大きいですが、ツインバレルで52時間とそれ程長くないパワーリザーブという事は、PRの延長ではなく等時性を重視した設計でしょうか。
巻き上げヒゲ(ブレゲヒゲ)にちらネジ+スワンネックという、いにしえのムーブメントの様式美を受け継いでいます。
4分の3プレートに青焼ネジをふんだんに用いて、ビス留めゴールドシャトンを有する上に、彫金も見事な高い審美性を誇る機械です。
Q-2010.1 Klassik では、ブリッジにピンクゴールドの金張りが施されており、裏からはその艶(あで)やかな姿を鑑賞することができます。
ケースいっぱいに詰まったムーブメントは、それだけで専用設計である事が窺い知れて贅沢です。この点はケース径に対して不釣り合いなサイズの機械を積むエボーシュモデルとは一味違うなと感じる所でしょう。
文字盤とムーブメント双方にドイツらしい意匠と仕上げを持つQ-2010はいかにも好事家受けしそうな洗練された一本です。
私にとっても、行き届いた仕事ぶりに加えて年産数十本とも言われる希少性も含めて、非常に興味を惹かれます。
時計好きの端くれとしては絶対ドイツ時計は欲しいのですが、一方で人と被ると死ぬ病を患っている身としては、ランゲやGOってその界隈ではメジャー過ぎて手を出せないんですよね。
もちろんランゲが世界最高峰の時計を作っているのは分かっているのですが、それだけに好事家の所有率は非常に高い印象です。
とくにSNSなんか見てると、時計好きは皆んなサクソニアかランゲ1のどっちかは持ってるんじゃないかと思うほどよく見かけます(実際そんなわけないんですけど)。
そうなるともうランゲは選択肢から外れます。まあそれ以前に経済的理由でスコープからは外れてますが笑
その意味でもドーンブリュートは良いです。コレを持っているってのは相当なコアな時計好きでしょう。その生産数からしても被る可能性は極めて低そうです。
その上でモノは素晴らしい訳ですから、文句ありません。
そして価格も、90万円程度(国内代理店を経由するともっと高いかも知れません)というプライスタグは良心的といえます。
先日のライネ程のバーゲンプライスではありませんが、インハウス・キャリバーを擁することなどに鑑みれば十分リーズナブルです。
気がかりは長期に渡るメンテナンスサービスですが、こればっかりは何ともいえません。会社が順調に成長し、後継者が生まれる事を祈るしかないでしょう。
それでも恐るべき新技術を投入している訳ではないでしょうから、国内の名のある修理技師さんに見て貰えば何とかなるのではないでしょうか。あまり無責任な事も言えませんが。。
シンプルかつ端正であり、装飾性の低い硬派な出立のドイツ時計は、実に格好いいです。
ジュネーヴ様式とは一線を画す哲学を有する彼らのウォッチメイキングには興味が尽きません。
そこには見ているだけでは分からない、より深い魅力があるはずです。スモセコ3針を蒐集する旅の中で、立ち寄らずにはおられません。
ドーンブリュートは確か国内でも日本橋三越か新宿伊勢丹にはあったような気がするのですが、まずは実物を拝みたい一本です。