やっぱりアール・デコ

何本あっても欲しくなるアール・デコ・スタイルの腕時計。今回は給付金案件でもあるコレクションをご紹介します。

昨年ひっそりと(?)ローンチしたブローバのジョセフ・ブローバ・コレクションです。

Joseph Bulova “Banker” / BULOVA 

Ref:96B330
ケース径:45.0 x 33.0mm
ケース厚:10.15mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:ステンレス・スティール
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:3気圧(30m)
価格:$1,095.- 

これは間違いなく給付金案件です。ブローバといえば今はクオーツ中心ですが、1920年代以降は米国の大衆腕時計市場の担い手であった老舗です。

1960年発表の音叉時計アキュトロンでも知られており、ブローバを知らない好事家はいないでしょう。

現在も本社はニューヨークにありますが、2008年1月にシチズンによって買収され、今は日本とも縁のあるブランドです。

このジョセフ・ブローバ・コレクションは1920-40年代、ブランドが米国市場で隆盛を極めた時代のトリビュートであり、まさに現代に蘇ったアール・デコという訳です。


複数モデルが展開されており、いずれも非常に魅力的なのですが、特に私の目を惹いたのが、このトノーケースのバンカーです。

ボールドなアラビアン・インデックスにレイルウェイ・トラックを配し、剣型の針を合わせたダイアルデザインは、典型的なアール・デコ・スタイルです。

このデザインは幾らあっても飽きません。

ケースはスクウェアに近いバランスのトノー型で、9連(7連?)のブレスレットが付いています。

ブレスレットはちょっとなんか形容し難いデザインですが、これからの季節を考えれば、やはりSSブレスが欲しいところ。

<色違いの革ベルトモデル>

実にノスタルジックで素晴らしいデザインです。非ラウンドケースを好む私としては、この幅広なトノーケースは一つ欲しいと思っていた所です。

カルティエトーチュジラールペルゴリシュビルなんかも勿論魅力的なのですが、ブローバの大衆的なというか、気取らない感じもまた良いんです。

ベゼルはフラットな平面で造形され、ブレスレットを含めてポリッシュ仕上げです。ややぽてっとしたサイドビューですが、厚みが約10mmというのは決して分厚いという訳ではありません。

いまのブローバにはアール・デコのイメージは全くありませんが、過去のアーカイブにこんな素晴らしいデザインが眠っているというのは、やはり老舗の強みといえる部分ですね。


型番:SELLITA SW 200
ベース:ETA 2824-2
巻上方式:自動巻
直径:25.6mm
厚さ:4.60mm
振動:28,800vph
石数:26石
機能:センター3針デイト
精度:-
PR:38時間

機械は信頼と実績のSW 200です。シチズングループのブローバですがミヨタじゃないんですね。日本的な考えだとグループ外のムーブメントを使うなんて考えられないですけど、ブローバにはある程度裁量があるのでしょうね。

今更語ることもない汎用3針ムーブの傑作機(のジェネリック)ですので、普段使いにおける信頼性は十分ですし、メンテナンスに気を使う必要もありません。

とはいえすでに旧式化して久しいスペックですので、ETAの最新鋭機に比べると短いパワーリザーブやエタクロン緩急装置など性能的な物足りなさは感じざるを得ません。

裏蓋は半分開口という珍しいタイプですが、テンプがしっかり見えています。

これで10万円ちょっとという価格はフェアバリューといえるでしょう。同じく米国にルーツを持つハミルトンと同価格帯で、両者はライバルといえる関係でしょうね。

実際ムーブメントの性能を比べれば現時点ではハミルトンが圧勝していますが、ジョセフ・ブローバに限ってはそれを補って余りあるデザインの良さがあると思います。

そして、このコレクションは他にもレクタンギュラーケースの”ブレトンとラウンドケースのコモドアも用意されていて、これまた魅力的なんですよね。

<Joseph Bulova “Breton”>

出典:HODINKEE 

レクタンギュラーはやや大ぶりな32 x 46mm(ラグ含)というサイズ感。これだけ横幅があるとそれなりの存在感になります。

角がカットされた10.5mm厚のケースは独特のシルエットを持っています。形はアップルウォッチのようですが、デザインは100年前の意匠というのは面白いですね。

このブレトンはポーセリン風(ラッカー?)のアイボリー文字盤、マット仕上げのサーモンピンク文字盤などのバリエーションがあり、いずれも甲乙つけ難い味わいがあります。

自分が一本選ぶなら、やはり艶やかなアイボリー文字盤のブレスレットモデルかな。

<Joseph Bulova “Breton”>
出典:HODINKEE 

一方、ラウンドケースのコモドアはワイヤーラグがセットされており、これによって非常に魅力的なシルエットの時計になっています。

ぱっと見エルメスアルソーを想起するデザインですが、こちらはよりクラシックで正統派の文字盤デザインを持っています。

この可愛らしさのあるワイヤーラグが私はとっても好きなんです。砕けた感じというか、愛嬌があって軽やかなデザインですよね。

コモドアが素晴らしいのは38mmに加えて34mmという小径モデルがラインナップされている点です。後者はデイト窓の位置が完璧であり、個人的には断然こちらがお勧めです。

<Commodore 34mm>

ジョセフ・ブローバは各モデル350本の限定モデルです。ネットを見たところまだ各モデル在庫はありそうです。

しかし、国内にないのです。どうやら米国限定のようなんですよね。

なんでそんないけずなんでしょう。

こんな如何にも好事家受けしそうなモデルを米国でしか販売しないなんて勿体ない話です。せめて親会社が存在する日本では売ってよ!とか独りよがりな事を思います。

いずれ劣らぬ秀作揃いなので、一本一本試着して気に入ったモデルを買いたいところですよね。

しかも今この国では、おあつらえ向きに全ての時計オタに10万円が給付されようとしているのに。なんてビジネスチャンスの逸失でしょうか。


しかし裏を返せば日本で人と被ることはほぼ無いといえますから、それはそれでMinority’s Choice としては嬉しいかも。

この先ブローバがこんな自分好みの時計を販売するかどうかも定かではないと考えると、余計に後ろ髪を引かれる思いです。。

古き良き米国のアール・デコ。

いいですよね。