日本の冒険家

先週はセイコーから怒濤の新作リリースがあり祭り状態でしたね。特にグランドセイコーの新型機械式キャリバーには感動しました。

散々セイコー機械式の技術力に疑問を呈して来た私は猛省している所であります。

まあその話はまたいずれ。

今日は一足先に今年はじめにリリースされたロングセラーであるアルピニストの新作を見てみましょう!

SBDC087 / PROSPEX

Ref:SBDC087
ケース径:39.5mm
ケース厚:13.2mm
重量:147g
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:ステンレス・スティール
バックル:三つ折式Dバックル
防水性:20気圧(200m)
価格:77,000円(税抜)

2020年、プロスペックスの先陣を切ってリリースされたのが、アルピニストです。昨年秋頃から噂は出ていたファン待望のアドベンチャーウォッチですね。

アルピニストというペットネーム自体は1963年からありますが、今のデザインとしては1995年の初代目、2006年の2代目に続く3代目という事になります。

2代目が長らく人気を博していて2018年まではグリーン文字盤のモデルが生産されていたため、今でもそれなりの数が流通しています。

2020年に生まれ変わった3代目は黒、アイボリー、グリーンの三色展開で、黒文字盤のSBDC087にはご覧の通りSSブレスレットが装着されています。


アルピニストは何といってもデザインが格好良いです。簡易方位計を備える回転式インナーベゼルには細かく目盛りが付され、楔形インデックスの内側にも分目盛りがプリントされています。

サイクロプスレンズ付きの日付窓にマット仕上げの文字盤など、アドベンチャーウォッチとしての性格が現れたフェイスです。

その一方で、カテドラル・ハンズっぽい時分針や筆記体のAutomatic 表記などはレトロな風合いで、モダンとレトロのバランスが絶妙だと思うのです。

赤字の20 BARが良い挿し色にもなってますね。

ケースに目を移すと、シンプルなスムースベゼルにウェッジ型のラグとリューズガードを備えるシルエットはスポーティでありながら抑制が効いています。

ゴリゴリのスポーツモデルでなく、どこかノスタルジックなニュアンスを持つデザインは実に秀逸です。1995年の初代から基本的なデザインは踏襲されていますが、プロスペックスの中では個人的に最も好きなデザインです。


型番:Cal 6R35
ベース:Cal 6R15
巻上方式:自動巻
直径:27.4mm (ベースキャリバー)
厚さ:5.2mm (ベースキャリバー)
振動:21,600vph
石数:24石
機能:センター3針デイト
精度:日差 -15/+25秒
PR:70時間

搭載するのは2019年に登場したセイコーの新型ムーブメント6R35。外乱が想定されるアドベンチャーウォッチとしては6振動/秒はややもの足りませんが、パワーリザーブは70時間と十分。

公称日差も-15/+25秒と良好で、これからのセイコーの10万円前後のラインを担うムーブメントです。

といっても先代にあたる6R15からの明白な進化はパワーリザーブの延伸くらいで、緩急装置も見た感じ未だにエタクロンなので、新型キャリバーとしては正直もの足りません。

まあこれは先週(3/5/2020)までのグランドセイコー(GS)にも言えた事で、正直セイコーの将来のムーブメント開発はライバルについていけるのかずっと心配でした(もはや杞憂ですが)。

あと、いつも通り装飾性は皆無です。しかしこのワークホースの姿を鑑賞できるシースルーバックは有難い。


出典:HODINKEE 

他にも今回から風防に無反射コーティングが施されたりと、細々とアップデートがされており、いわゆる正当進化版といえる新作です。

このパッケージングで税抜7.7万円というのは十分競争力のある価格だと思いますが、パワーリザーブ以外ほぼ同等で実勢価格5万円程度の2代目がまだ市場にそこそこあるので、特にグリーンは苦戦するかもしれません。

しかしSSブレスのSBDC087は待ちに待ったというファンも結構いるのでは?

私も試着しました。やはり39.5 x 13.2mmはちょっと自分には大きいと思いましたが、それ以外の満足度はかなり高いと思います。

いわゆる高級時計!という感じはありませんが、アドベンチャーウォッチとしてはデザイン、実用性、精度のいずれも優れていますから、人気を博すのも頷けます。

<カラーバリエーション>
出典:HODINKEE 

本作は黒文字盤xSSブレス(SBDC087)のほかにアイボリー文字盤x革ベルト(SBDC089)グリーン文字盤x革ベルト(SBDC091)の3色展開となるコレクションです。個人的にはせっかく20気圧防水あるのでSSブレスを選びたいですね。

ただ、そのブレスレットがケースの出来に対してやや頼りない印象があるのは否めません。仕上げの質感やソフトで軽い感触は改善の余地があるように思います。

とはいえそこを突き詰めると当然コストにも反映してきます。でもそれでも良いんじゃないかと。

これだけ格好良いんだし、お手頃価格の先代もまだまだ入手可能なので、新作は20万円前後で相応に質感を高めたパッケージでも全然売れたんじゃ?という気がしますがどうなんでしょう。

それだとアルピニストっぽくなくてファンは納得しなかったでしょうかね?


因みにアルピニストは海外でも大人気で、先代の時にはHODINKEE がネイビー文字盤のコラボモデル(SPB089)を発売しています。

これがめちゃくちゃ格好良いんです。eBay とかにはちょくちょく出品されていたりするんですが、見るたびに後髪を引かれる思いです。

これはマジでポチってしまうかも知れません。

しかし、サイズ的な事を考えればやはり初代が至高のアルピニストなんではないかと思ったりするのです。


SCVF005 / SEIKO

Ref:SCVF005
ケース径:36.0mm
ケース厚:11.0mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:ミネラル・ガラス
裏蓋:ステンレス・スティール
ベルト素材:ステンレス・スティール
バックル:三つ折式Dバックル
防水性:20気圧(200m)
価格:実勢6-10万円程度

ムーブメントの名をとって4Sアルピニストとも言われる1995年発売の初代アルピニストは今なお輝く90年代セイコーのマスターピースと言えるでしょう。

見ての通りそのデザインは25年前にして既に完成しています。しかもサイズも36 x 11mmと文句なし。

当時から20気圧防水を達成しており、アドベンチャーウォッチとしても申し分のない堅牢性を誇っています。


よーく見ると文字盤中心からインデックスに向けてうっすらと黒のラインが放射状に描かれています。これは現行モデルにはない意匠ですが、これが妙に格好良いんですよね。

36mmケースという事で、必然的に文字盤が小さくなる訳ですが、それによって凝縮感が出たダイアル表現も格好良いです。

インナーベゼルと特徴的な時針が目を惹くデザインはオリジナリティに溢れていて、どちらかというと保守的なデザインが多いセイコーにあって、キャラが立っています。

文字盤だけではなく、裾野の長いリューズガードや4時位置のベゼル用リューズ、バランスの取れたウェッジ型のラグなど、シルエットも非常に綺麗です。


型番:Cal 4S15
ベース:-
巻上方式:自動巻
直径:25.6mm
厚さ:4.17mm
振動:28,800vph
石数:25石
機能:センター3針デイト
精度:日差 -15/+25秒
PR:40時間

搭載する4S15キングセイコー(KS)などの高級ラインでも使用された機械ですから、当時としてはかなりの高性能機といえるでしょう。

25.6 x 4.17mmというサイズも薄型と呼べる水準ですし、高振動に40時間パワーリザーブはETA 2824を仮想敵としたスペックと見受けられます。

私にとって現行セイコーの不満点の一つである分厚さがこの4Sアルピニストでは抑えられているのは4.17mm厚のムーブメントのおかげです。

4S秒針停止手巻き機能付きなので、時刻合わせや、数日ぶりに時計を使う際にも苦労はありません。セイコー5あたりではこれらの機能がオミットされている事もありますから、嬉しい配慮です。

これだけの機械を搭載しながら当時定価35,000円だったというのですから非常に良心的です。


4Sアルピニストも、黒文字盤xSSブレスのほかにアイボリー文字盤x革ベルトグリーン文字盤x革ベルトのラインナップで登場しました。

このグリーン文字盤は当時としては珍しかっただろうと思います。これに関しては公式HPで特集があったりします。

大して宣伝もしてなかったのに売れた、という辺りがアルピニストの魅力です。デザイン・性能・価格がよくバランスしていれば、自然とファンはついてくるという好例ですね。

高級機とも言える4S15キャリバーが大量生産に向かなかった事もあり4Sアルピニストは玉数も少なく、今では定価の2倍以上の価格で取引されています。

最新モデルである3代目以上の高値という事ですから、その人気の高さが伺えます。それでも絶対額としては、比較的手を出しやすいレンジですから、当面需要過多で推移するでしょう。


アドベンチャーウォッチとしての共通項から和製エクスプローラーと呼ばれることもあるようですが、そんな虎の威を借るまでもなく、アルピニストは素晴らしい時計です。

そしてやはりサイズ感に秀でる4Sアルピニストが最高に使いやすそう。3代目の70時間パワーリザーブは本来なら実用的なのですが、取っ替え引っ替えの私にはあまり重要ではありません。

4Sの中では黒文字盤xSSブレスが使いやすそうで良いかなと思っていましたが、セイコーHPの記事を読むと無性にグリーンが良く思えてきます。

しかしながら、雨天/真夏用の実用時計を買わないといけないMinority’s Choice としてはやはりブレスレットが優先かな、などと。


しかし玉数の少なさと人気故に簡単には手に入らなさそうです。

3代目も39.5mmというサイズは現行プロスペックスの中では小ぶりで、正直全然ありなのですが、厚さとブレスレットの軽さが気になります。147gというのは個人的には結構重いですしね。

無い物ねだりは色々ありますが、プロスペックスの現行モデルの中では随一のお気に入りです。価格も手頃なので、これは夏が近づくと更に欲しくなりそうな予感。

でもホントにもう今年の予算ないんだけど。。