平和あっての趣味生活
そういう意味ではミリタリー趣味というものは矛盾を孕んでいますね。
真面目に考えると、いい歳して銃器や兵器が趣味だなんて如何なものかと言われそうですが、悪者を倒すヒーローに憧れる心の延長線上にあるのがミリタリー趣味だと思っています。
時計の世界にもミリタリー・ウォッチと言われるカテゴリが存在します。かつて軍用に使われていた時計のレプリカが主役のカテゴリですね。
Khaki Field Mechanical / HAMILTON
Ref:H69439931
ケース径:38.0mmケース厚:9.50mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:ステンレス・スティール
ベルト素材:ファブリック
バックル:ピンバックル
防水性:5気圧(50m)
価格:58,000円(税抜)
フィールドウォッチとしてはカーキフィールドは最も有名なのではないでしょうか。
ハミルトンは第一次大戦時から米軍に正確な軍事行動のために必須となる高精度の時計の供給を行っていました。第二次大戦中には民間用の生産を停止して、百万個以上の時計を軍に納入しています。
そして大戦後も軍とのパートナーシップは継続し、そこで得たフィードバックは、民間用のカーキ・コレクションに反映されきたという歴史を持ちます。
このカーキフィールドは1960年代のミリタリー・ウォッチにインスパイアされたモデルです。
マット仕上げのケースにサンドブラスト仕上げのダイアルで光の反射を抑え、可読性の高いアラビアン・インデックスは24時間表示まで付ける念の入れようです。一方でデイト表示もないシンプルな機能。
時間を知ると言う最低限の機能に最大限にフォーカスした、まさに道具としての時計の出で立ちには遊び心など入る余地はありません。この無骨さがミリタリー・ウォッチの魅力なのです。
カーキ色のNATOストラップが似合いすぎですよね。
そして何より良いのがサイズ感です。38 x 9.5mmというのは理想的といえるほど扱いやすく腕に馴染むサイズです。
<2801-2 / ETA>
型番:ETA 2801-2
ベース:-
巻上方式:手巻き
直径:25.6mm
厚さ:3.35mm
振動:28,800vph
石数:17石
機能:センター3針
精度:-
PR:42時間
ムーブメントはETAのポン載せです。ハミルトンはスウォッチ・グループの一員ですから、これは非常に合理的な選択です。面白いのはオリジナルに忠実に手巻きの機械を載せている点ですね。
2801-2は僅か17石の手巻きという事で、非常にシンプルな構造の機械です。それだけに信頼性は高く、メンテナンスコストも抑えられるという利点があります。
42時間パワーリザーブだと2日もたない訳ですから、かなり頻繁に巻き上げる必要があります。これは所有すると意外に億劫で、自動巻のありがたさを実感します。
しかし愛があれば全く問題ありません。しかもこの時計は日付も曜日も無いので、時間合わせは楽な方です。
ヴィンテージ感に溢れる無骨なミリタリー・ウォッチの魅力は抗いがたいものがあります。しかも価格も6万円程度とかなり良心的です。
基本的にカジュアル用ですが、夏場にポロシャツOKな職場なら全く問題なく着用できるでしょう。暑い季節には大活躍してくれそうな時計ですね。
この時計の誘惑にいつまでも耐えられるとは正直思えません。臨時収入があったりするとすかさず買ってしまいそうだなと常々思う一本です。
Heritage Military / LONGINES
Ref:L2.819.4.93.2
ケース径:38.5mm
ケース径:38.5mm
ケース厚:11.7mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:ステンレス・スティール
ベルト素材:レザー
バックル:ピンバックル
防水性:3気圧(30m)
価格:253,000円(税抜)
お次はMinority’s Choice 大好きなロンジン・ヘリテージ・コレクションからその名もミリタリーです。
これは1940年代にイギリス空軍(Royal Air Force, RAF)に支給されていたロンジンの戦闘機パイロット・ウォッチのオマージュ作品になります。
#26でも少し触れた通り、パイロット・ウォッチとして視認性と操作性を重視したシンプルなダイアルがヴィンテージ感満載でそそられます。
38.5 x 11.7mmというサイズもグッドです。3針にしてはやや厚いですが、未だデカ厚隆盛の2018年のモデルなのにケース径を抑えている点は、ヘリテージとしての分別をわきまえた思慮深さが伝わってきて好感です。
それぞれ見分けのつきやすい形状をした針は青焼きで、可読性の高いアラビアン・インデックスを配し、レイルウェイ・ミニッツ・トラックも秒針がしっかりと届いており実用性を備えています。
アイボリーのダイアルにはそばかすの様に細かいチップが散りばめられており、(ちょっとワザとらしいですが)ヴィンテージ感が表現されています。
ポリッシュ仕上げのベゼルにサテン仕上げのケースはメリハリがあり、エッジもきっちり立っていて、流石にロンジンといった良質な出来です。
ラグは細身ですが綺麗な曲線を描いてケースのシルエットをスッキリと見せており、装着感の向上にも寄与しています。操作感を重視した大きめのリューズも細かくカッティングされていて、抜かりありません。
<L619/888 / LONGINES>
型番:L888
ベース:ETA A31.L01
巻上方式:自動巻
直径:25.6mm
厚さ:3.85mm
振動:25,200vph
石数:21石
機能:センター3針
精度:-
PR:64時間
ムーブメントは安定のETA社によるロンジン専用キャリバーL888です。グループ内にETAを有する利を存分に享受しているロンジンですね。もちろんそれを価格という形で消費者にも還元している点が素晴らしいです。
このL888は21石のシンプルなセンター3針キャリバーですが64時間という比較的長いパワーリザーブを有し、サイズもコンパクトな質の高い機械です。
ただ、なぜ3.85mmの薄型キャリバーを搭載しているのに、ケースが11.7mmもあるのかよく分かりません。アンダー10mmにだって出来たのでは?と思うのは私だけでしょうか。
しかしそれとて大きな問題ではありません。味わい深いヴィンテージテイストにコンパクトなケースとそれにマッチしたエイジドレザーの風合いなど、かなり良くまとまった時計です。
名乗るほどミリタリー感はないですが、実際に空の男達が着用していたモデルのオマージュであり、装飾性を配した無骨な出で立ちが渋いな、と思わせる一本です。
裏蓋の素っ気なさなどは清々しい程です。
サイズ感も意匠もヴィンテージ感溢れる一本は、コレクションに加えてみたくなる何とも言えない魅力がありますね。
BR 03-92 Bi-Compass / BELL & ROSS
Ref:BR0392-IDC-CE/SRB
ケース径:42 x 42mm
ケース径:42 x 42mm
ケース厚:13.3mm (BR0392-BL-CE)
重量:-
ケース素材:マットブラック・セラミック
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:マットブラック・セラミック
ベルト素材:ラバー / ファブリック
バックル:ピンバックル
防水性:100m
価格:€ 3,500 (約45万円)
今日の時計業界において、ミリタリー風ウォッチの代表格と言えるベルロス。発表したての新作バイ・コンパスは現代的なミリタリー・ウォッチに仕上がっています。
新作なので国内定価も決まっていなさそうですが、海外では€ 3,500という事なので、45万円相当なのですが、既存のセラミック・ケース3針モデルが54万円(税抜)ですから、国内定価はそれ位になるでしょうか。
BRコレクションの外見上の特徴は言うまでもなく、ゴツゴツしたスクウェアケースです。コレクションの中ではミドルサイズのBR03シリーズですが、42 x 42mmというのは相当な存在感です。
ダイアルはベルロスらしく、オシャレかつ斬新です。マットブラックのケースと文字盤が特殊部隊の装備を思わせる一方で、ミントブルーとアイボリーの差し色がスタイリッシュさを演出して、非常にクールなダイアルです。
表示方法も面白くて、時針が針ではなくてディスクになっています。軍用機の計器に着想を得たデザインという事で、ノーマルな時計とは違ったユニークなフェイスです。
通常あまり私の好みではない4時半位置のデイトも、このユニークなデザインの時計なら許されると思える所が不思議です。
これ程ハードな外観の時計はG-SHOCKを除けば中々ありません。機械式時計の有名どころでは唯一と言えるのではないでしょうか。それだけの個性を持っている点がこの時計の最大の魅力です。
<SW300-1 / SELLITA>
型番:BR-CAL.302
ベース:Sellita SW300-1
巻上方式:自動巻
直径:25.6mm
厚さ:3.60mm (SW300-1)
振動:28,800vph
石数:25石
機能:センター3針デイト
精度:-
PR:42時間
ベルロスはエボーシュを使いますので、BR-CAL.302と名乗るムーブメントはセリタSW300-1ベースの機械です。ただどれほど改造しているのか分かりません。日付ディスクは変えているでしょうが、能力的な上積みは無さそうです。
SW300-1はETA 2892のジェネリック版なので、汎用3針キャリバーとしては薄型の上位モデルです。かつてはセリタとETAでは大きな技術格差があり、設計は同じでもセリタ製はETA製に大きく劣るとされていましたが、近年その品質は目覚ましく改善されています。
2020年問題で最も利を得たのはセリタかも知れません。ETA擁するスウォッチ・グループのライバルであるリシュモン・グループを筆頭に、スウォッチと距離を置くメーカーからの引き合いは急増しています。
今ではIWCのエントリーモデルもセリタベースですから、その飛躍は目覚ましいものです。
話が逸れましたが、要はバイコンパスは機械も信頼性の高いエボーシュを搭載しており、問題はないという事です。
バイコンパスは2019年4月デリバリー開始とあるので、もう店頭にも並んでいるかもしれません。こちらは世界で999本の限定生産となっています。
ベルロスの規模を考えれば十分な生産量なので焦ることはないと思いますが、この先何年も生産されるというわけではないので、気に入った方は一度時計屋に遊びに行って試着してみると良いかもしれませんね。
気になるのは今後発表されるであろう国内正規価格です。60万円に近付くようならちょっと割高と言わざるを得ないですね。