見た目か、中身か、

今日は時計選びで何が一番大事か、というお話です。散々申し上げていますが、答えは自らの心の声でなので人ぞれぞれという事です。

で、今日は私の場合は何をみているのかという話です。優先度が高い順に、

1. 見た目
2. 希少性
3. バリュー
4. 機械
5. 堅牢性
6. 精度

こうですね。

1. 見た目
私の場合、まず何と言っても見た目です。見た目が好みじゃなければ絶対に買いません。多くの人もそうだと思いますけどね。

ケース、ラグ、ダイヤルデザイン、素材、仕上げ、針、ベルトの出来など無限の宇宙が広がる世界ですから、楽しくてしょうがないです。

特に重要視しているのは美しさです。優雅さ洗練を感じさせるデザインでなければ私の琴線には触れません。そこに儚さや少しの遊び心があると惚れ込みます。

例えばブランパンムーンフェイズとか好きです。デイトポインターも洒落ているし、ダイヤル仕上げも極めて上質なヴィルレ・コンプリートカレンダーは素晴らしい時計だと思います。

<Villeret Quantieme Complet / BLANCPAIN>


ま、ちょっと違ったタッチのものも気になる事はありますが、ロジェ・デュブイのようなゴツゴツしたタイプやリシャール・ミルのようなSFみたいな時計には惹かれません(RMとか買えませんが)。


2. 希少性
これはMinority’s Choice たる所以でもあるわけですから、非常に重要です。他人と同じはつまらないという思いは物心ついたときからの私の行動原理とも言える習性です。

「これ人気なんですよ〜」とか言うセールストークは完全に裏目で、そんなもの絶対買いません。これはある意味で理屈を超えているので、どうしようもないのです。

私がメジャー・ブランドの人気モデルに否定的なのはこんな性根をしているからなので、どうか大目に見てやってください。


3. バリュー
これはつまり価格と価値のバランスです。例えばこれまでご紹介してきた、タンク・アメリカンドルチェヴィータ(#12)エクスプローラーエンジニアM (#9) の話は、私のバリューに対する考え方を表したいい例です。

価値観というのは主観的なものなので、例え経済力が同じであっても、ある時計を高いと思うか安いと思うかは人によって違うでしょう。

でも人の話を聞いて、フムなるほど、と思うこともあるでしょうから、この点については可能な限り比較可能な形で紹介できたらと思います。

因みにリセールバリューは全く考慮していません。しても良いんですが、そもそもリセールが良い時計は人気モデルなので、2.の時点で俎上にないわけです。


4. 機械
散々機械式を勧めているくせに、機械の優先順位低いんかい!と言われるかも知れませんが、実際こんな所ですハイ。

言うまでもなく本来ムーブメントは機械式時計において最も価値ある物なのですが、いかんせん高価になりがちなのがネックです。

優先度が低いというより半ば諦めざるを得ないと言った方が正確ですね。

ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨンといった超複雑機構を乗せようものなら、私には手が出ません。

比較的メジャーなその他の機構としてクロノグラフ、ムーンフェイズ、レトログラード、ワールドタイマー などがありますが、これらの機構はデザイン的に様々な表情を与えてくれる物なので、デザイン重視で選好することはあります。

ピエール・クンツパピヨンなんて素晴らしいですよね。レトログラードとムーンフェイズの調和が実に神秘的な芸術作品だと思います。425万円(税別)というのが問題ですが...

<Papillon (Ref: A004HMRL) / PIEERE KUNZ>
無くても困らないけどもの凄い技術が詰まっている機械を手にするというのが正に機械式時計の贅沢な楽しみ方の一つというものです。


5. 堅牢性
実用性と言っても良いと思いますが、私はさほど重視しません。そんなにアクティブでもないですし外回りしている訳でもないので。

そもそもブレスレットは重いのでデスクワークには向きません。休日も冬場は革ベルト、夏場はNATOストラップでいいと思っています。

確かにオメガマスター・クロノメーター認定モデルの実用性とかって凄いと思いますけど、正直無くても困らないので、それよりもっと美しい時計を作ってくださいという感じです。

とか言いつつ、堅牢なSSモデルをふと欲しくなる自分がいる事も確かです。しかし確実に持て余すので、試着して溜飲を下げるのがお決まりのパターン。

<RailMaster the 1957 Trilogy / OMEGA>

このトリロジー(復刻三部作)におけるレイルマスターなんかは中々良いです。ノスタルジックなスタイルながら15,000ガウスという超々高耐磁性COSC認定の精度を誇るSSモデルですからね。

防水性が今ひとつ(60m)なのと、73万円(税抜)という価格が大きな障壁です。これならあと2万円だしてシーマスター300のトリロジー買うわなという感じです。


6. 精度
ぶっちゃけ精度は結構妥協できます。正確な時刻などスマホで分かるんだから。

と、ユーザー目線ではそうなるのですが、時計メーカーとしては、精度をなおざりにする訳にはいきません。

愛好家の間でも特に機械の良し悪しを論じる上では精度を重視する人が多いですし、真っ当な議論だと思います。

実際、トゥールビヨンは姿勢差を無くすために開発された技術である訳ですから、精度の追求を止めたら機械式時計業界は終わるでしょう。

精度が機械式時計にとって極めて重要な位置付けにある事は重々承知の上ですが、実際は日差が5秒だろうが20秒だろうが大して困らないという現実があるため、個人的な時計選びにおいてはそこまで重視しません。

もちろん精度は高いに越した事はないので、COSC認定ムーブメント搭載モデルなんかを安価に提供しているメーカーは尊敬に値します。

<Ballade Automatic / TISSOT>
その最たる例が、ティソパワーマティック80搭載モデルでしょうね。まさに価格破壊といえる恐るべき時計です。なにせ、このバラード・オートマティック80時間パワーリザーブ(しかもシングルバレル)、COSC認定シリコン製ヘアスプリング採用でありながら9万5千円(税抜)です!

デザインはベーシックなドレス・ウォッチですが、文字盤の内側とベゼルはクル・ド・パリ装飾が施され、3針のバランスも良くスッキリまとまった顔つきです。

ケース径は39mm、厚さは9.8mmに抑えられているのでシャツの袖口にも収まる非常に使いやすいサイズですね。シリコン製ヘアスプリングなので裏スケながら耐磁性にも優れているという実用性の高さも併せ持ちます。

<Ballade Automatic / TISSOT>
価格に対して驚異的な性能を持つキャリバーPowermatic 80.811ですが、ETA 2824-2をベースにティソが開発したムーブメントです。同じスウォッチ・グループに属する2社による開発ですが、静かなる革命(Silent Revolution) とまで言われたほどの機械です。

ライバルのリシュモン・グループも負けじとボーマティックという素晴らしいムーブメントを開発してきましたから、ますます高性能な時計が手軽に手に入る時代になりそうですね。

同時に、これまで全モデルCOSC認定とか、ツインバレルで72時間のロング・パワーリザーブとか、シリコン製ヘアスプリングによる高耐磁性を実現とか言って差別化していた高級ブランドがどう出るかも見ものです。

<Ballade Automatic / TISSOT>
最後はティソの宣伝みたいになってしまいました。確かに素晴らしい時計ですが、個人的には見た目的にも希少性的にも自分で買おうとはなりません笑

この素晴らしいムーブメントを使って、外装にもこだわった時計が出てくると面白いと思いますが、現状では以前ご紹介したクリフトン・ボーマティック(ボーム&メルシエ)に軍配を上げます。

様々な切り口で探すと、より一層素晴らしい作品に出会える時計の世界。抜け出すのは至難の業でですね笑