His internal eyes go for... | The Story of Ver Fallen

The Story of Ver Fallen

この世の人生舞台に想いを吸い取られ、夢中になり没入して生きる「フェア・ファレン」という名の男の物語。

BGM:ズラチナルーカ/スキマスイッチ



流れてく 僕ら過ごした時間(とき)

慌ただしく散り去る傘模様

響きだした空の悲鳴

光が舞った 街が沈む…



…依然、彼は怯えながら生活をしている。



人に、空に、そして自分の運命に。



彼は実に賢(さか)しかった。



万事がうまく運ばれている時は己の力を誇示し、



一方で事がうまく運ばれない時には、「自らの運命」とやらを恨むのが常套手段だった。



しかし今の彼は、そのいずれかの行動を取るでもなく、一寸先も見えない鬱蒼とした森にただ立ち尽くしている。



「少し考えているだけ」



―そううそぶく表情は苦しい。



自らの圧倒的力不足を目の前にして身動きが取れなくなっているのは、誰の目から見ても明らかだ。



もはや「運命」などという都合のいい言葉でごまかせはしない―



もっとも、彼自身が一番理解している事だが。



いろいろな事が頭をよぎる。



―これまでいろんな「気付き」があった。



これまでいろんな事ができるようになった。



自分自身の課題だって、ひとつずつだが解決している。



…なのに何だ?この虚無感は。



ふと見渡してみれば、辺りは一面森、森、森。



立ち止まって考えていた間に、鬱蒼とした木に囲まれている。



陽も見えない…暗い…怖い。



いつの間にこんなに臆病になっていたのだろう。



―こんな事を考えながら、彼は気が狂ったように泣き叫び続けた。



しかし、助けに来る者はいない。



もう、もはや何でも良かった。



彼は無我夢中で、辺りの木を片っ端から切り倒していった。



目は剥き出しになり、手の爪からは血が滴り落ちていた。



その場ではプライドなど無価値だった。



「とにかくこの状況を抜け出したい」



―その一心が、彼をその行動に駆り立てていた。



もはや血か涙かも分からぬ液体が彼の目に流れ込んだその時だった。



空に雷鳴が響いた。



空から落ちた雷(いかずち)の炎がみるみるうちに燃え広がり、辺りの木を全て焼き払っていった。



…どれだけの時が経っただろうか。



雷雨がいきり立つ火柱の全てを消し去っていった後には、剥き出しの荒野に佇む一人の男の姿があった。



ただ呆然と、呆然と立ち尽くしていた。



その時、遠い地平線の彼方で何か黒い影が動くのを彼の目が捉えた。



確かに、いる。



立ち止まっていた間にできていた、自分と他者を隔てる壁が全て破壊された後に、彼の目は確かに捉えていた。



あの雷(いかずち)が「運命」だったのかどうかなんてもうどうでもいい。



彼は、確かに自分の足で、地平線の彼方に向かって歩き出していた。



今の自分自身にない何かを求めて―




ありったけ強く抱いた祈り

見上げれば雲を裂く箱舟

動き出した空の向こう

雨が上がった 空が微笑(わら)う