If I had been born with wings... | The Story of Ver Fallen

The Story of Ver Fallen

この世の人生舞台に想いを吸い取られ、夢中になり没入して生きる「フェア・ファレン」という名の男の物語。

BGM:¿Viva La Gloria?/Green Day



翼を持つ者がいれば、それを羨む者がいる。



「もしも自分が翼を持っていたら…」



…もしも翼を持っていたら?



その翼が、自分と他人を区別する指標にでもなるのだろうか。



「あなたとは違うんです」―



…何に、「自分」を求める?



翼のような、先天的なものに回帰するのか、



それとも、一寸先も知れぬ後の世に突き進むのか―



少なくとも、この男はそのどちらにも依存している。



彼はあいにく翼など持ち合わせてはいない。



でも、「フェア・ファレン」というこの名と、この身体を授けられた。



そして、この名前と身体で社会的な繋がりを得、生活を営んでいる。



今属している様々なコミュニティ、



その中で価値観を重ね合わせてきた様々な人間たち、



その影響の下、リアルタイムで更新され続ける価値観、世界観―



多くの人間たちのエキスが、世界にひとつしかない触媒で吟醸されていく。



その触媒さえも、この瞬間もまた絶えず変化している。



……この事実だけで充分。



明日はどんな化学変化が起こるのか。



彼が胸の高鳴りを必死に抑えているこの瞬間にも、吟醸は進んでいく。