母が来なくなり、毎日の家事は全て私がやる様になった。

母を断ったのだからダンナが手伝ってくれるのかと思っていたが、

別にそんな気持ちは持ち合わせていない様だった。


 ダンナは定時に帰ってきて、子供をお風呂には入れてくれたが、

それだけで、後は自分の部屋に籠って自分の好きな事をしていた。


 私がその日にあった子供の成長を話しても、煙たそうに遮り部屋に入って行った。

今考えれば、確かにつまらない内容だった。

笑った様な気がするとか「あ~」「う~」と言ったとか・・・。

一日中家にいて、誰とも話していない私は人との会話に餓えていて

ダンナの帰りを待ち構えていたのだから、きっとウンザリしていただろうとは思う。


 出産後1ヶ月は飲み会には行かずに帰ってきて欲しいとお願いしていた。

それを過ぎたら構わないから、我慢して欲しいと。

ダンナは承諾して、毎日帰って来てくれた。


 ある日、明日は残業だから遅くなると言った。

前の日に残業があると言うなんておかしいと思ったが、

あまり頭が働いていなかったので「わかった」と言った。


 夜、帰りに買ってきて欲しい物があり、

携帯に電話をしたが電源が切ってあったので会社に電話をしてみた。

結婚式にも出てくれたダンナの上司が電話に出て

「今日は飲み会だ」と教えてくれた。


 遅くに帰ってきたダンナは「携帯を会社に忘れちゃって出られなかったよ。

取りに行ったら遅くなった」と言った。

「会社に電話したよ」と言ったら、顔色を変えた。

嘘のつけないわかりやすい男なのだ。


 私はとても悲しくなった。

飲み会ごときで嘘をつく必要があるのか?

後1週間我慢すれば、普通に飲みに行けるじゃないか。

どうしても断れない飲み会なら、むやみに反対しないのは

ダンナもわかっていると思っていたのに。


 ダンナと結婚したのは、嘘をつかず私を裏切らない人だと思ったからだった。

嘘の中味はたいしたことがないけれど、

私にとっては許すことのできない嘘だった。