仕切りのビニールのカーテンを少し横に寄せて、モニターの画像を見やすくしてくれた医師。
会話形式の方が分かりやすいと思いますので、会話を再現しますね。
先『えっと、こちらが先日の画像です。ご覧の通り複数の腫瘍が見られます』
これは叔母達への配慮だろう。
叔1「えっと、良く分からないのですが指してもらえますか?」
医師は比較的数個大きなものを指し示す。
想像以上の画像に黙る叔母2人。
先『この真ん中の大きな腫瘍が、動脈を巻き込み12cm………拳の大きさがあり原発と判断しました。周囲のものは転移だと……』
叔2「12cm…………」
先『で………ですね。先日血液検査を受けてもらいましたよね。他の病気の可能性を確認するために………次の治療に素早く進めるようにと』
いや、他の確率を潰すためだろ?と、思ったけど素直に返事をした。
私「はい。ですから今日はこの病院でのカンファレンスの結果と全ての検査結果をもらって、必要なら紹介状を書いてもらうつもりで来ました」
先『で、その検査の結果何ですが、リンパ腫に見られる特定のマーカーが異常な高値となりました』
私 ?(・_・;?
叔母1( ・ω・)? オバ2 (*・ω・*)?
先生( ´・∀・`)
私「えっ………と?
先週GISTと言われたのは?違ったんですか?」
先『血液検査の結果から、リンパ腫の可能性が高くなりました。詳細な検査は必要ですがカンファレンスでの画像を診て、消化器外科部長も血液内科の専門医もリンパ腫を疑ってます』
決して誤診とは言葉にしない医師を前に
私 (・о・)えっ
叔2 (゜゜;)
ほぼ、頭真っ白の私達を現実に引き戻したのはしっかり者のサバイバーの叔母。
叔1「先生!GISTじゃないんですね!!リンパ腫ですね!!」
先『はい。恐らく間違いないだろうと私達は判断しました』
叔1「良かった!良かったリンパ腫なんですね。リンパ腫は治りますよね?私は治りました」
先『えっ?』
そりゃ驚くだろ(笑)リンパ腫サバイバーとは知らないのだから
叔1「私は濾胞性リンパ腫でした。治療して17年です。リンパ腫は治りますよね治る癌ですよね」
先生は、決して治るとは言葉にしませんでした。
それより、自分の誤診が責められる事無くリンパ腫を喜ぶ叔母に………驚いて、ホッとしたのか?
この日、初めて表情が緩んだのを、じっと先生を見ていた私は見逃さなかった。
私「えっ……と、取りあえずGISTは誤診と言うことでよろしいのでしょうか?手術不可能とか……永続的投薬とかは白紙で良いですか?」
と、明確にしたくて聞いた。
先『……はい……、手術等が必要なのか等の詳しい事は、血液内科の方でお聞きになるのが良いかと思いますので……、この後、血液内科に院内紹介をと考えますが……それで宜しいですか?』
誤診の言葉も(笑)永続的投薬も言葉にせず。
でも、確かにホッとした。
それは、新たな癌の告知ですが……
私の真横に克服者がいる癌ですからね。
そして、叔母の時に調べて知識は古いけれど持っていました。
知らないのは………
この病院の血液内科の現状等、全く調べてなかった事です。
私「私は今日、GISTと疑わず色々調べてこちらに伺いました。未知でしたので叔母にもついてきてもらいました。そして、癌センターへの紹介状をもらうつもりで来ました。GISTの対応可能だと調べましたので」
先『はい……そう……ですよね。癌センターの血液内科への紹介状もお出しできます』
やっぱり責められると思ったのか?表情が曇る先生
私「リンパ腫を疑って無かったので、この病院の血液内科の規模と医師を調べてません。教えててもらえますか?」
拍子抜けしたような先生(笑)
先『こちらの血液内科の設備及び規模は、かなり高水準だと私は思っています。そして、本日の診察は血液内科部長の杉先生です。とても素晴らしい優しい先生です』
その言葉で私は即決しました。
私「分かりました。院内紹介して下さい。血液系の癌、特にリンパ腫は治療マニュアルがほぼ決まっていますよね。でしたら、こちらの先生のお話を聞いてから決めます」
先『分かりました、血液内科はこの向かい側になります外でお待ちください。15番診察室から呼ばれると思いますので……』
私「分かりました……色々ありがとうございました。」
そう言って席を立ち、外に出ようとして足を止めた。
私「先生?私のお腹が腫瘍だらけなのは変わらない事実です。でも、GISTとリンパ腫では先生はどちらが良かったと思われますか?」
何故だろう?何故か私は誤診を下し私に魔の10日間を与えた医師にそんな質問をしていた。
でも、この日初めてではないだろうか……
しっかりと私を見て、はっきりと言葉にされた。
先『リンパ腫で良かった。本当にそう思います。リンパ腫も辛い治療になるのは間違い有りません。でも、間違いなくリンパ腫で良かったです。私はそう思います。頑張ってくださいね』
私「はい!ありがとうございました」
この診察室を出た瞬間に……
あの大量のGISTの資料は………ごみとなりました。
心で思ってた
(おい!先生!!あの日悲観して電車に飛び込んでたらどうすんねん)
てね(笑)
と、言うことで
ここまでGISTの情報が欲しくて読んで下さってる方がおられたらごめんなさい。
ここから先は、リンパ腫のお話になります。
ごめんなさい
でも……二年経つから思うのは
きっと私は、リンパ腫で良かったと喜ぶ叔母の言葉よりも、医師としての言葉が欲しかったのかもしれない。
『リンパ腫で良かった』と……
後にも先にも、この後医療関係者に『リンパ腫で良かった』なんて、言われるほど甘い病気ではないですからね。
きっと、あの先生は私のあの時一番欲しい言葉を、笑顔と共にはっきりと言いきってくれたのだ。
誤診は許してやろう(笑)
二年経っても、ここに書いてるけどね(笑)