ちゅーやんビブリオ 12冊目 鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」 | MINoiD official blog

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ひと月ぶりのビブリオです。

今回は地味に好きな作家、鯨統一郎のデビュー作を紹介します。

この作家は歴史モノを良く書きますが、作風が独特で、歴史に対し新説・珍説・新解釈を論理性よりもインパクト重視で次々にぶちこんできます。

デビュー作こそそこそこ面白いのですが、正直シリーズ続編の「新・世界の七不思議」「新・日本の七不思議」と続いていくにつれて、面白さがスケールダウンしていく感は否めません。

ちなみに歴史の新解釈という同様のスタイルの作品である、「歴史バトラーつばさ」は超絶つまらないので気を付けてください(笑)

 

更に、普通の(?)ミステリーも書きます。というかこの人、20年ちょいの活動期間で100冊目前というイカれた執筆ペースなんですよね。

しかしはっきり言ってまぁ駄作が多い。でも、読みやすいので疲れない。んで読んじゃう。たまにそこそこ面白いのがある。んでまた買っちゃう。

というように、鯨作品とは非常に都合のいい付き合い方をしております。

 

正直鯨作品は今回紹介する「邪馬台国はどこですか?」だけ読んどけばいいレベルなのですが、強いて他に個人的なオススメを挙げるならば、

 

頭がアレな警部が本人にしか理解できない謎理論を展開し、自信満々にまぐれで事件を解決していく「『神田川』見立て殺人」

事件の報を受けるたびにまず激高し勢いのまま容疑者をぶった切ってしまう侍が、あとからアリバイが見つかって毎回背水の陣で推理する「KAIKETU!赤頭巾侍」

匣の中の失楽を思わせる(というと怒られそうだが)作中作のマトリョーシカ連作短編で、前作の被害者がどんどん次作で減っていき、最終的に一人だけになり、どんな結末になるのかわくわくしていると最後はしっかりがっかりする「ミステリアス学園」

わりかし普通に面白い、童話を研究する女子大生がメルヘンになぞらえて未解決事件のアリバイ崩しを行う「九つの殺人メルヘン」

 

このへんが好きです。

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鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」

 

 

・あらすじ

カウンターだけのとある小さなバー。

新人マスターの松永は、3人客相手に不慣れなカクテルをふるまう。

大学教授の三谷敦彦、助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。

三谷と静香がブッダについて議論を交わしていると、聞き耳を立てていた宮田から「ブッダは悟りなんか開いてない」という爆弾発言が発せられる。

この発言を機に、壮絶な歴史解釈バトルの火蓋が切って落とされたのだった・・・。

 

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※以下宮田の主張のネタバレ含みます

 

物語は連作短編で、それぞれに議題があり、本作では6つの新説が宮田によって語られます。

 

1.悟りを開いたのはいつですか?

⇒ブッダは本当は悟りを開いていなかったのではないか?

2.邪馬台国はどこですか?

⇒邪馬台国は東北地方、岩手県八幡平にあったのではないか?

3.聖徳太子はだれですか?

⇒聖徳太子は架空の人物で、推古天皇と同一人物なのではないか?

4.謀反の動機はなんですか?

⇒本能寺の変は信長による自殺だったのではないか?

5.維新が起きたのはなぜですか?

⇒明治維新は自然発生したものではなく、勝海舟による計略だったのではないか?

6.奇蹟はどのようになされたのですか?

⇒キリストの復活は、イエスとその12使徒によるトリックだったのではないか?

 

物語の流れとしては、宮田がこの突拍子のない持論を展開し、静香がイライラしながら反論。結局は言いくるめられ、最後はマスターのカシスシャーベットが出てきてシメ。といった感じです。

僕自身が歴史や地理にそこまで明るくないので、特に2などは「本当にこの説が正しいのでは」と思わされてしまいました。

説そのものが突拍子もなく、かつ宮田の説明も強引な推察、こじつけが多い為(○○は催眠術が使えたとかw)、ほとんどの説はばかばかしいのですが、面白い目の付け所と論理展開には一読の価値があります。

回を追うごとに歴史にハマっていく松永も面白いですw

 

まぁ、続編はかなり話も説もレベルダウンするので、とりあえずこれだけしかオススメとは言えないのが悲しい・・・

鯨統一郎としても最高傑作は未だにこれなんじゃないだろうか。

倉知淳みたいに寡作で、でもすべてが名作という作家もいますが、鯨統一郎や折原一(この人は名作も本当に多いけどね)みたいに多作で、当たりはずれ激しい作家もいいもんです。

 

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鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」

オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆