ちゅーやんビブリオ 6冊目 清涼院流水「コズミック」「ジョーカー」 | MINoiD official blog

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施川ユウキの読書漫画「バーナード嬢曰く。」で壁本として清涼院流水の「コズミック」が紹介されていました。

 

壁本。

それは、「読み終わった後、怒りのあまり壁にぶん投げてしまうくらいどうしようもない本」のことである。

結末がバカバカしかったり、シンプルにつまらなかったりと、平たく言えば「地雷本」である。

 

しかし、ハナから壁本だとわかって読む場合、それはそれで味がある。

過去ビブリオで紹介した柾木政宗の2冊なんか(特に「ネタバレ厳禁症候群」)は正にド級の壁本ではあるが、そういう本は最初からそう宣伝されているし、その場合は「一体どんなバカバカしさなんだ?」と逆に楽しめようものなのである。

また、壁本という言い方は俗的なもので、シンプルにつまらないものは置いておくとして、楽しみようがあるものは、ジャンルとしていわゆる「バカミス」に分類される。「バカミス」とはそのまま「バカなミステリー」という意味だが、「そんなバカな!?」という驚嘆の意も含まれる。

 

清涼院流水の書く「JDCシリーズ」は、壁本界のいわば金字塔ともいうべき作品である。

 

先に言っておくが、これは人に勧めづらい作品郡である。

内容もそうだが、まず作者の文体が独特で、非常に読みづらい。

特定の登場人物が出てくると、同作品中であっても毎回容姿や異名の説明が入るため妙にテンポが悪く、ストーリーの進行に関係ない作品の世界観構築の為のキャラクターや構造描写も多いため、必然文量が多くなる。

作品の結末もかなり荒っぽく、ミステリー要素も薄いため、結果こんなに長くしなくても良くない?的な感想は常に抱き続けることになる。ていうかマジでクソ長い。

そもそも「バカミス」というジャンル自体、好きな人以外は手を出さない方がいいものなのだ…。

 

ただ、僕は大好きです。早く新作書いてください。

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①「コズミック」

 

あらすじ

 

・日本探偵倶楽部。通称「JDC」と警察、マスコミ各所に、突如「密室卿」を名乗る者からFAXで犯行声明が送られた。


    「今年、1200個の密室で1200人が殺される。誰にも止めることはできない」 ― 密室卿

 

平安神宮を皮切りに、密室卿の予告通り次々と不可能状況下での密室首切り事件が続発する。

果たして、密室卿の正体は?連続不可能密室殺人のトリックは?

 

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シリーズ1作目。

「1200個の密室で1200人が殺される」という言葉のインパクトがものすごいですよね。

また、密室状況も、トリックが介入する余地がないようなものばかりで、読んでいて、これ収集つくの?という心配でいっぱいになります。

最終的なトリックは物凄い力業なんですが、一応まぁ収集はついています。(相当な強引さですが…)

 

ちなみに、このシリーズではだいたい歴史上の人物が犯罪の根幹に関わっており、鯨統一郎も裸足で逃げ出す程の超絶歴史解釈もおバカポイントを大きく上げてくれます。

 

しかし、この作品が本当にヤバイのは、作者の異常な言葉遊び(主にアナグラム)への執着です。

特にJDCのエース探偵の一人として登場する“黒衣の推理貴公子”「龍宮城之介」は、どんな状況を見ても真っ先にそこから強引極まりないこじつけアナグラムを拾い出し、「符合だ」と豪語する。その符合(?)に周囲の人間は毎度驚愕(なんで?)し、読者を圧倒的な温度差に叩き込むこと請け合いです。

 

更に、JDCの探偵の面々のキャラクターの濃さも半端なく、個性的な容姿と、それぞれ独自の推理法をもって犯罪に立ち向かいます。説明すると長くなるので、ぜひWikipediaのまとめを読んでみてください。謎にワクワク感だけは高まります。

 

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②「ジョーカー」

あらすじ

・京都にある古城風の旅館「幻影城」にて、合宿を行っていた「関西本格の会」の作家達。

合宿中に会員の一人濁署院溜水は、自身が定義した「推理小説の構成要素三十項」を網羅した実名小説の構想を発表するが、翌日から、その構想に乗っ取ったかのような連続殺人事件が発生する。

現場には芸術家(アーティスト)を名乗る者からの犯行声明が残されていた。

偶然幻影城に居合わせたJDC第2班副班長の螽斯太郎(きりぎりすたろう)は、JDCに応援を要請。

第一班のエース探偵らも合流する中、殺人は続いていく…。

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まぁこれもストレートに結末はヤバいし、相変わらずアナグラムサイコパス全開なのですが、この作品に限っては、普通にミステリーな部分もあります。

JDCシリーズを全て読んだ後にジョーカーを思い返すと、真っ当な推理に違和感を禁じえません(笑)。

 

 

でもって、この「コズミック」「ジョーカー」ですが、両者の間にはある重要な関係があり、文庫版では特別な読み方をすると、作者のある仕掛けが浮かび上がります。

それは「コズミック」の上下巻で「ジョーカー」の上下を挟む読み方です。

ただ、これらの作品には上下巻という書き方はされておらず、「コズミック」ではそれぞれ「流」「水」、「ジョーカー」では「清」「涼」となっています。つまり、「コズミック 流」「ジョーカー 清」「ジョーカー 涼」「コズミック 水」の順です。作者曰く「清涼in流水」で読めとのことです。

※この仕掛け、微妙にわかりづらいのですが、それについては次回作「カーニバル 1輪の花」の巻末付録にて詳細な解説があります。

 

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さて、長くなってしまったので今回はここまで。

次回は清涼院流水特集後編。

・人類絶滅危機!毎日数千万人が殺される!?「カーニバル」

・殺人事件?そんなことより奇術の練習だ!!「彩紋家事件」

を紹介します。

 

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清涼院流水「コズミック」

トリック★

ロジック★

人物★★★★★

読みやすさ★

バカバカしさ【独自枠】★★★★★

13/25

※独自枠は、作品ごとに特色により変化します。

https://www.amazon.co.jp/dp/4062646498/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_ENJjFb469QWYN

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清涼院流水「ジョーカー」

トリック★★

ロジック★

人物★★★★★

読みやすさ★

サイコパス【独自枠】★★★★★

14/25

※独自枠は、作品ごとに特色により変化します。

https://www.amazon.co.jp/dp/4062648466/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_LNJjFbM9FRTMA

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おまけ

清涼院流水「コズミック・ジョーカー通読」

人物(中二病度)★★★★★

アナグラムのこじつけ★★★★★

壮大すぎて置いてけぼり★★★★★

文章のしつこさ★★★★★

長さ★★★★★(併せて1800P超。京極かよ)