新たな年を迎え、また一つ歳を重ねる事となる。
ここ三年、お正月は実家で母の介護をしながら過ごしている。有り難いことに毎年、義姉が母にお重に詰めたおせち料理を作ってくれる。
趣味の船釣りにも旅行にも行けないし、自分自身が寝込むと母と共倒れになるので風邪一つひけない。
いつまでこんな生活が続くのかと思うと不安が募る反面、母には、この先も長生きしてほしいと願っている。
これまで放ったらかしで大丈夫と信じて実家から遠く離れた海外や東京や沖縄、名古屋、仙台などに転勤したが、やっと五十半ばで関西に戻って来た。それから十年、定年を迎え、これまでサラリーマン時代に出来なかった事もやれると思った矢先に母の介護が始まった。
気付けば母の足腰は、随分弱り、耳も遠くなりテレビの音は玄関先まで聞こえるほど。
昨日など外から帰ると助けを求める異様な声がする。慌てて飛んで行くと椅子から滑り落ちた母が畳の上で仰向きで悶えている。自分では寝返りもうてず僅か数十センチの椅子にも上れないのだ。
人は、いや生き物は必ず“老い”を迎える。
私も六十歳ぐらいまでジョギングもジャンプも出来たが、ある日、膝に激痛が走り、以来、痛みの強い日とそうでもない日が来るようになり、日を追うごとに痛む日が多くなった。
昔、外国人の茶道体験で正座が出来ない人が多くいて不思議だったが、今は私自身も膝が痛み、正座が難しくなった。
長年美しさを誇っていた女優さんが白髪染めの宣伝に出ていたり、憧れていた女優さんが入れ歯洗浄剤の宣伝に出ていたりして愕然としてしまう。
そして鏡でしみじみ自分を見ると顔にはシミやシワ、髪は同年代の人と比べ、まだある方だが白髪ばかり。
あと一年数カ月で七十のおじいさんになるかと思うとおぞましくなる。
男は寿命が短いので健康寿命と言われる期間は、あと十年あるか無いかだろう。
今は、少しでも健康寿命を長く続けられるよう願うばかり。
あ、あ老いは怖い。