一昨年まで母が元気だったので、時々、裏庭に顔を出していた野良猫にジャコや残飯を与えて可愛がっていた。

雨の日など『今日は、雨やからけーへんなぁ。』とか、寒い日は、『猫は炬燵で丸くなる言うけど大丈夫かなぁ。』などと気にかけていた。

ゴールデンウィークの真っ最中、丸々と太っていた猫が、げっそり痩せて現れた。何と裏庭の縁の下で出産したのだ。2週間も゙するとヨチヨチ歩きの4匹の赤ん坊が顔を出した。捕まえようとすると親が飛んできて、くわえて縁の下に逃げ込んだ。そして時々、寝床も変えた。

相変わらずエサは、ねだるが警戒心が強く、投げたエサは取って行くが人の手からは食べず、遠目で睨んでいた。にゃーにゃーと乳をせがむ子猫のためにも沢山食べねばならない。

徐々に人との距離を近づけて来たある日、母の手からエサを取ろうとした母猫の爪でざっくり引っ掻かれ、慌てて病院に行く羽目に。それ以来、怖くて母はエサをやらなくなった。私がエサを与えるも当時は、毎日、実家に居るわけではないので、不在の日は、何処かでエサを漁っていたのだろう。

4匹の子猫の内、1匹が見当たらなくなり、3匹が新野良として巣立ち、しばらく顔を出していたが、いつの間にか見なくなった。


翌年の春、巣立った子供の内、1匹の♀が、ひょっこり前庭に現れ、縁の下に住み着いた。

最初、警戒していたが、数週間もエサをやっていると手からエサを取りそうになったが母のニノマエは踏みたくなかったのでトングで与えた。その内、頭やお腹を撫でさせる程、慣れ、人の手に爪を立ててはいけないことも学んだ。

その頃は、ほぼ毎日、実家に帰ったので甘え声でエサをねだる猫と遊ぶのが日課になった。〝チュチュ〟と口を鳴らすと飛んで来るので名前は、チュチュとなった。

彼女が産まれて丁度1年経ったゴールデンウィーク、今度は、この猫が4匹の子を産んだ。こいつの母猫と違い、とても私に懐いていたので子猫をつまみ上げても全く怒らない。子猫たちが歩き回る様になると母猫と共に私の脚にじゃれつくまでになった。丁度可愛い盛りに貰い手を探すのに最適な時期が来た。

1匹は親戚の友人に、残りは家の前に「子猫あげます」と貼り紙をしたら町内の猫好きに貰われて行った。チュチュは、しばらくウォーン、ウォーンと子猫を探して鳴いていた。


『このままだと、直ぐ次の子を産みますよ。』と近所の猫好きに言われ、避妊手術を勧められた。野良猫を地域猫として見守る制度があり、安価で手術を受ける事が出来たが、避妊済の目印として耳に切れ込みを入れられて帰って来た。


可愛そうだが、メスとしてのフェロモンを出さないせいかオス猫に迫られる事もなく、私に追いかけられてはゴロンと腹ばいになり、お腹撫でてと甘えるのが快楽と感じている様だ。

犬派の私の心が少し猫に傾いて来た気がする…。

(2024.02.26)