或る日、職場で働く女性が結婚したことを風の噂で知った。

おめでたいことなのに、本人が内密にして欲しいと言うことで上司だけが知っていて、職場の仲間には、事前に伝わらなかった。

本人は休暇も取っていないので、きっとゴールデンウィークあたりに挙式を済ませたのだろうか。職場で結婚、特に女性の結婚は、とても久しぶりだ。

隣に座る同年代の人と話していたら、『おめでたいことだから皆でお祝いすべきだよね。』と私と同意見。だからと言って、皆からお祝儀を集め、お祝いの品を買いに行くほどの世話を焼く関係でもない。誰かが幹事をしてくれれば、喜んで応じるのだが。

 

隠す事でもないと思うので別の若い女性に意見を求め、ついでに幹事をしてくれないかなと期待を込めて聞いてみた。すると『きっと、あまり人に祝われたくないんじゃないですか。お祝い返しも面倒だし。』とのこと。

今どきの若い人は、そうなのかな。そこで言ってやった。『お祝いごとだから隠す事ないのに。俺が今度、結婚する時は、皆に言うからお祝い頂戴や。』…ちょっと座がしらけた。

 

結婚した人は有期雇用として働いているので所謂、定年まで働ける職員とは違う。とは言え、現在、働いている職場の上司ぐらいは披露宴に呼ばないのかなと思う。

その昔、何人かの部下や後輩から結婚式や披露宴に呼ばれたが、いずれのカップルもずっと良い思い出として記憶に残っている。

そう言えば、私が結婚する時、当時、人間的にとても尊敬していた職場の先輩に仲人をお願いし、わざわざご夫婦で東京から大阪までお越しいただき式をした。

その二人は理想的な夫婦だと周囲から見られていて、当時住んでいた市川から家が近かったこともあり、結婚してからたびたび、ご自宅を訪問し、夕食などご馳走になったものだった。

ところが、その先輩は約2年後、急に転職してしまった。組合幹部として待遇改善目指して尽力してくれていたが結局、組織に幻滅したと言うのが理由の一つらしい。人望が厚かっただけに多くの人に惜しまれて去った。

会社は違っても時々、夕食に呼ばれたが、どう歯車が狂ったか、子供さんもいたのに、奥様との仲が冷え切ってしまい、結局、別の女性と深い中になってしまった。奥様とは離婚し、子供は奥様が育てることになった。新しい奥さんとの間に子供も出来たが当時、先輩は50歳ぐらいだった。全く人生なんて何が起きるが分らない。

当然、それからは、先輩の家を訪れることは無くなった。

別れる夫婦の傾向を見ると結婚式を盛大に挙げたカップルとそうでないカップルでは離婚率に明らかに違いが出るらしい。勿論、経済的な要因もあるだろうが、親戚や会社の同僚など多くの人の前で夫婦の契りを交わした人は簡単に別れられないという意識が大きく、逆に式も挙げず同棲生活の延長の様な形で結婚した夫婦は、社会の注目度も少なく、別れることに抵抗が少なくなるという。

やはり、結婚は人生の大きな節目。職場の仲間を含め、なるべく多くの人に祝福されるのが良いのではないだろうか。

私は、お祝いの品を買う代わりに≪祝い鯛≫を贈ろうと思い、良型の真鯛が釣れた時、尾頭付きを贈った。

『昨日は二人で大奮闘して刺身にしました。きれいには出来なかったけど彼もとても喜んでました。』との報告を受け、私も喜んだ。