春かずら
澤田瞳子著(新聞連載小説に加筆修正)
幻冬舎 2026年1月30日
父多賀織部の仇を討つ旅にでていた清史郎は
母百合の訃報で急ぎ故郷安良藩に帰った
そこで道場仲間や許婚同然の娘早苗らと話していく中で、敵討ちに疑問を感じ始めた。
元々仲の良かった父と敵である渡辺幸太夫は何故父を斬って逃げていったのか?
仇相手の娘と息子の現在の暮らしぶりの酷さを見るにつけ、清史郎の心が揺れる。
道場を巡るくだりも横道のようだが、やはり伏線回収される。
菩提寺の変更のはなしが点在し、これが関わっているのか…
早苗が奉行佐々木の後添いとなったことも、理由が分かる気がする。早苗は何も言わずに仇討ちにでた清史郎に怒りを覚えていたのだ。女が男より低い立場であった時代(今もそうであるが)、早苗は強い女であった。
父のほうが悪かったのではないのか?
ネタバレしない程度に書いておきましょう…
12年の歳月は心の隔たりを生む、昔の道場仲間も藩のしがらみの中にいる。仇討ちしか考えてこなかった清史郎とは違っていて当たり前だ。厄介になっている先の叔父夫婦も宮仕えである。
もう藩には居場所はない、江戸へ戻り生きていこう。早苗に「良き人に嫁いだ」と告げ、早苗も「江戸には清史郎様の相手が見つかるでしょう」と返す。
この12年が恨めしい2人であったが、早苗はいわゆる良妻賢母にはならなかったであろう、これには同感。
先ごろ読んだ「かたばみ」は一途な女性の奮闘ぶりと戦争の悲惨さを、本作は複雑な武家社会を知ることになりました。両作とも長編ですが面白いです。