永井紗耶子(2023年、新潮社)本体1700円
まず、菊之助が父を殺した使用人の作之助を見事討ち取った行(くだり)で始まる。大勢の目の前で起きた木挽町の仇討ち、これは周知の事実である。
もう忘れられつつある2年後に、江戸番の武士が、目撃者を訪ねてきた。菊之助の関係者だという。
ときは田沼意次から松平定信に代わった頃、
場所は芝居小屋「森田座」
訪ねた先は、
木戸芸者の一八(いっぱち)
立師(たてし)の与三郎
衣装部屋の二代目芳澤ほたる
小道具の久蔵と妻のおよね
戯作者篠田金治
それぞれが仇討ちの様子や菊之助との関わりを述べ、自分自身の凄絶ともいえる過去を語る。
そして、そこには伏線が有るのである。バトンが渡される度に、成程と唸ってしまう伏線。
芝居の演目も上手く差し込んでくる。
もちろん語る者の生業(なりわい)についても細かく述べられている。
戯作者のところでは核心に近づき、父の死にまつわる真相も。
ストーリー自体はよくある家老の着服、
真面目な饗応役である父は悪事を突き止め、協力する手代は始末され、父は罠に…
しかし、それだけではない何かがあります。
詳しく書くと営業妨害、或いはこれから読む人にはお節介になります。
父と竹馬の友、その息子菊之助と総一郎も竹馬の友。
総一郎の妹は菊之助と将来を約束しているが、総一郎に疑問を抱いていた。
菊之助は本当にあの忠実な使用人作之助を?
そして、総一郎が江戸から帰って、菊之助は語るのである。そして、次の江戸番のとき、芝居を見ようと約束する。
伏線は回収されます!
いい作品です。映画化されてもいいと思います。感心してしまいました。読み返して目頭が熱くなるのを感じました。