薬師如来御会式
薬師如来は
「東方浄瑠璃教主薬師瑠璃光如来」が
正しい名称です。
「おん ころころ せんだり
まとうぎ そわか」
薬師如来の御真言です。
「真言」は梵語で「マ ントラ」
薬師如来の特徴は、右手は施無畏(せむい)の印、左手は与願(よがん)の印を結び、その左手に薬壷を持っておられることです。
薬壷の中には、体の病、心の病、社会の病をすべて治してしまう霊妙なる薬が入っております。教えの薬とは、釈尊(お釈迦さま)によって説かれた仏教そのものであり、信仰によっていただくご利益です。薬師如来は釈尊(お釈迦さま)と一体であり、釈尊の衆生救済の働きを表わしたのが薬師如来であると考えられています。(尚、仏教伝来初期の薬師如来像などには薬壺を持っていないお姿もあります)
「薬師経」
薬師如来について説かれた経典が「薬師経」です。正しくは『薬師瑠璃光如来本願功徳経』と言います。これは中国・唐の時代、三藏法師玄奘によって翻訳されております。玄奥が国禁を犯してインドに赴き持ち帰ったたくさんの経典の中の一つであると考えられます。そもそも経典とは、弟子たちによって受け継がれていた悟りの教えを、釈尊の没後、弟子たちの「結集」の場で編纂されたものです。仏の教えは文字面で伝え切れるものではなく、弟子たちは以心伝心によって相承していたのです。また、釈尊在世当時は文字が未発達であったことも一因でした。他の大乗経典と同じく、薬師経も「如是我聞(私はこのように聞きました)」と始まります。
どのように説かれているか
薬師経は次のように始まります。
「私はこのように聞きました。ある時、釈尊は諸国を歩き広厳城(こうごんじょう)に入り、楽音樹の下に住されたのです。修行者八千人と一緒です。菩薩は三万六千、および国王、大臣、バラモン、居士をはじめ大勢が集まりました。その時、曼殊室利(マンジュシュリ)が座より立って、右肩をはだぬき右肘を地につけて合掌し、世尊に向かって懇願しました。『世尊よ。すぐれた真実の教えを説いて下さい。私たちの誤った行いや考えを除き、像法の荒んだ時代になったとき、多くの人々を救いたいと思うがためです』と。」
「その時、世尊は次のようにお話になったのです。『よしよし、曼殊室利よ。汝は慈悲心をもって、私に諸仏の名号と本願の功徳を説くことを請うた。諸々の人々を利益し、安楽させたいと願うための故である。汝は今、よく聞き、極めてよく思惟しなさい。まさに汝のために説こう』と。」
東方(今生きている世界)の仏様
薬師如来は「東方浄瑠璃教主薬師瑠璃光如来」が正しい名称です。直訳すれば「東の方向へ、十劫(ガンジス川の砂の数の十倍)というたくさんの仏国土を通り過ぎたところに浄瑠璃という世界があり、そこの教主が薬師如来である」というのです。「東方」というのは、太陽が東から昇る、つまり私たちが生きている世界のことを表します。今生きている私たちを救い導いてくださる仏様が薬師如来です。(他方「西方」とは、日が沈む、つまり死後の世界を表します)。ガンジス川の砂の数の十倍というのは、教えが深遠であるという意味です。けっして場所が遠方というわけではありません。瑠璃(るり)とは、深い青色の宝石(ラピスラズリ)です。昔は仏の功徳を様々な宝石に譬えました。薬師如来は瑠璃です。ゆえに浄瑠璃世界、瑠璃光如来と表現されているのです。
日光菩薩・月光菩薩・十二神将
十二の大願
薬師如来は、修行時代に「十二の大願」を発して、将来、自 分が悟りを得たときには、すべての人々を迷いや苦しみの闇から救い、真の悟りに導きたいという誓いを立てられました。特に第6、第7の大願は、「衆病を悉く除き、身心を安楽せしめん」という薬師如来の特徴がもっともよく表われております。
( 1)光明普照 … 自らの光で三千世界を照らし、あまねく衆生を悟りに導きたい。
( 2)随意成弁 … 仏教七宝の一つである瑠璃の光を通じて仏性を目覚めさせたい。
( 3)施無尽仏 … 仏性を持つ者たちが悟りを得るために欲する、あらゆる物品を施したい。
( 4)安心大乗 … 世の外道を正し、衆生を仏道へと導きたい。
( 5)具戒清浄 … 戒律を破ってしまった者をも戒律を守れるよう援けたい。
( 6)諸根具足 … 生まれつきの障碍・病気・身体的苦痛を癒やしたい。
( 7)除病安楽 … 困窮や苦悩を除き払えるよう援けたい。
( 8)転女得仏 … 立場の弱い女性が成仏するように援けたい。
( 9)安心正見 … 一切の精神的苦痛や煩悩を浄化できるよう援けたい。
(10)苦悩解脱 … 重圧に苦しむ衆生が解き放たれるべく援けたい。
(11)飲食安楽 … 著しい餓えと渇きに晒された衆生の苦しみを取り除きたい。
(12)美衣満足 … 困窮して寒さや虫刺されに悩まされる衆生に衣類を施したい。
ご真言「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」
一畑薬師如来のご真言です。すべての薬師如来と共通です。「真言」は梵語で「マ ントラ(मन्त्र [mantra])」といい、「いつわりのない真実の言葉」という意味を持ちます。伝統的に言葉の意味を詮索しません。なぜなら、真言は音が重要であり、知識や理屈に執着しないためです。あえて翻訳せず音写を用いるので、 漢訳では咒(明咒)と訳されます。一心に称(とな)え続ける心境がもっとも仏に近く、あらゆる功徳がその称えの中に含まれま す。
【小咒】
オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ (oṃ huru huru caṇḍāli mātaṅgi svāhā)

