アイムファイン6 | Fragment

Fragment

ホミンを色んな仕事させながら恋愛させてます。
食べてるホミンちゃん書いてるのが趣味です。
未成年者のお客様の閲覧はご遠慮ください。

ーside Siー

さあ帰ろう、なんて思ってMy sweetに連絡をしようと思っていたところだった。
スマホを手にとって、待受画面に設定したあいつの顔をつい眺めてしまったりなんかして。
そしたら着信があったんだ。
お家の事情的な番号から。
結局は家のための一肌脱ぐことになったわけで、結果当初の予定はキャンセルすることになってしまい、既読になったまま、返信はなかった。

タクシーで指定された場所に移動をして家の事情で代理で来たなりの務めを果たす。
サイドビジネスではないのだ。
実質的には自分に利益なんてない。
まさにお家の事情。

いつもより、愛想笑いが逆に激しかったかもしれない。
笑えやしない気持ちでしかないのに、いつもよりもさらに、笑っている自分だった気がした。
返信が着ているかもしてれないとか、怒ってるかもしれないとか、器用に頷いている反対側で焦っていた。

また、俺への距離と溝が遠くて深くなってしまった気がして。

酒はやんわり断って、食べるものもなんとなく喉が通らなくて。
それでも待っていてくれているんじゃないかって、バカみたいに期待してしまっている自分もいたりして。

はやくこの場から抜け出したくて焦っていた。

最後まで付き合う余裕もなくて、話をまとめられた時点で退席させてもらった。
代理で来たことが幸いした会席だった。

タクシーを呼んで、とりあえずあいつの部屋の駐車場に向かおうとした。
置きっぱなしの車をどうにかしなければならない。

何度か電話をしても、出てくれなかった。
寝不足だうろから、眠ってしまっているかもしれなた。
それだけならいいのだが。

ああ、チャンミンの家に行ったのかもしれない。
そうだとしたら、安心するような、自分で勧めておきながら残念なような。

他の男の部屋よりはいい。

俺だって嫉妬のひとつやふたつはするもんだ。


タクシーが停まり、降りると見慣れた部屋の明かりはついてはいなかった。
車もないことを確認すると、やはり出たのか。

もう一度、電話をする。

やはり、出てくれなかった。

ひんやりとした空気が閉じ込められていた自分の車の中に入ると、またしばらく待受画面のなかで笑っているあの顔を眺めていた。

足りていない睡眠を一気に体が欲しがり始めた。

こんな状態ではまともに運転はできない。

仕方なく、目を閉じた。
閉じた瞬間に、もう、意識はなかった。

キュヒョン、起きたら拗ねてもいいし怒ってもいいから、お前に会いたい。

すこしだけ、この腕に収まってほしいんだ。







ーside CMー


やってきた親友は明らかに普通ではなくて、
拗ねているというか、
やさぐれているというか、
せっかくの可愛い頬っぺたが膨れっ面になっていた。

あの彼にドタキャンされて怒っているようだった。
キュヒョンが着いたそのすぐ後に、僕の彼も帰ってくる。
今夜は車だから飲まないというと、全員で炭酸飲料でジャンクに過ごした。
僕の彼も体重管理がわりと必要なタイプだけれど、今夜の親友のやさぐれ具合はカロリーを控えるという言葉はあまり相応しくないかもしれない。
与えるだけ与えて、鎮静化させないとすぐに電池も切れてしまいそうだ。

電池。
エネルギー。

それって、食べ物でも、アルコールでもないんだよね。
わかってる。

一緒に摂取したい相手そのものが、エネルギーなんだ。
心の電池にエネルギーを溜めておくんだ。

親友の怒りもわからなくもないから、今夜は好きにさせておいた。

『忙しいんだな、シウォン、』
バカ、空気読んでよ。
『何で忙しいかなんてわからないけどさ、』
もう、目が座っている。
『忙しい男は、ダメだな、』
バカ、バカ、バカ。
『でしょう、もう、いい、』
ったく…。







『でも、僕はそんな忙しいダメな男しか結局は、ダメだったけど、』
タバスコを振った手を止めると、二人の視線を浴びた。
顔を伏せる彼と、さらに膨れる親友。
『シウォナはボクじゃなくてもへいきだ。うわ、ムカつく。』
ああ、もう、飲んでないのに酔っぱらいだ。
『ダメな男からしてみれば、もう、願ってるばっかりな毎日だヨ』
へえ、初耳だ。
『ユノ氏、どういうこと?』
そうそう。
『うん、邪魔入るなよ、とか、ケータイ他からなるなよ、とか、…あとは、嫌いにならないでくれヨ、とか、』
へえ。

嫌いにならないでほしい。
今となっては、遠い悩み。
幸せだよね。

無言になった親友は、残りのピザを口に押し込んで、顔をパンパンにさせていた。

ねえシウォニヒョン、

キュヒョン、待ってるよ。





ーside Kyー

家庭、と言ったらアレだけど、
そんなお宅に長いことお邪魔していられるほどボクだってアレじゃない。
お腹が満たされると、気持ちも落ち着いた。

二人に気遣われて、ボクは一人の夜を過ごすためにおとなしくおいとまをした。

車の中に忘れてきたスマホに気づくと、着信ランプが光っていた。

【シウォン】

これが、五件ぐらい。

ひんやりとした車のなか、電話をくれていた時間帯をぼんやり眺めてみる。
比較的早い時間だった。
どこでどんなドタキャンしちゃうくらいの予定をこなしていたのかは知らない。

なんとなく、かけ直すためのタップが出来なかった。

【…あとは、嫌いにならないでくれヨ、とか、】

ついさっき、ユノ氏が言っていた言葉を思い出す。

シウォン、キミもそんなふうに、思ったりする?


タップは出来ないまま、ボクは自宅へと戻った。



『ん、』

駐車場に入ったところで、彼の車があることに気がついた。
人影もある。
まさか。
信じられない。

いつもならちゃんとバックで停めるのに、今日は前進で停めてしまった。
降りて彼の車の窓を叩いた。

彼は、眠っていた。

『シウォン、起きて、シウォナ!』

いつからここに居たの。
防音性がいい車とかだったりするわけ?
もうっ。

ボクはここでようやく、着信履歴にタップをした。


ワンコール

起きて、シウォナ。

ツーコール

もう、怒ってないから。

スリーコール

たぶんね。





るるるる。





ぷつ。



『やっと出た、』

【ごめん、】

『五回と一回じゃ、怒れないでしょ、』

【もう、遅い?】

『お腹空いてるなら、同席だけしてあげる、』

【嫌いになった?】

『なってたら同席もしないでしょ、』

【寝るだけでも、来てくれる?】

『なんか、やらしい。』



ちょっとだけ、沈黙。



『ねえ、開けてよ、』



開いたら、出てきた。



『朝、送ってくれる?』

まだ、通話中。

【キュヒョナ、】

抱き締められてから、やっと通話を終わりにしたんだ。


よかった、って、彼の声を聞いたとき、
また、ユノ氏の言葉を思い出した。

待たせるほうは待たせるほうで、悩みもあるらしい。

『シウォナ、』
『なに?』

今、ボクはまた、うかんできてるところ。
今日のうちに、キミに会えたから。

『よかった、』
『なにが?』

聞き返しながら、頬を指で撫でてくれる。
きっと今、ボクは笑えてる。

『会えたことが、嬉しいと思えたんだ。』

キミがいないと、ダメみたいだ。

ぐんぐん、うかんできている。

うかんできたついでに、顎を少し、浮かせてみた。



そしたらキミに届いたんだ。

シウォナ、キミの唇に。




拗ねたボクが、バカみたいに思えるくらい、

自分勝手だってわかってるけど、

今、嬉しくてしかたがないかもしれない。




『もう少し、してもいい?』

頬っぺたでもなくて、
重ねるだけでもなくて、

『俺が断れると思ってる?』

肩に、手を乗せてみる。
彼が、優しく目を覗きこんでくれる。

『待たせて、ごめん、シウォナ、』

色んな意味で。
でも、意味で、もう少しだけ待って。

もう一度、唇を重ねる。
油でテカテカしてたら、ごめん。




好きなのに、遠回り。

ボクの充電は不安定みたいだ。

ねえ、キミがボクにずっと接続していて、

ずっとずっと充電し続けてくれたらいいのに。

そしたらボクは、ぐずってキミを困らせなくて済むかもしれない。


そんなふうに、言えたらいいのに。

キミからのキスで、今はいっぱいいっぱい。

ボクたち、繋がってるのに電波がちょっと不安定。




カスタマーセンターは、どこかな。

























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