igaさまからお借りしていたオペラDVD,
最後の最後にとっておいたのは、私の大好きなボロディンの「イーゴリ公」
今日、3時間16分をかけて、この作品を観た。
素晴らしい作品。
これをボロディン作詞による歌詞ということにも驚いた。
ロシア侵略をもくろむポーロヴェツを「カラス」と表現し、イーゴリが「鷹」。日本語訳されたにしろ、文学的要素もふんだんで、予想していたはるかに素晴らしい作品だった。
出ていた出演者も素晴らしく、美術もバレエもそれはそれは申し分のないもので、私の大好きなボロディンのオペラに、ようやく出会えての感激だった。
何より、私が素晴らしいと思えたのは、「劇を全て音楽によって構成する」という、オペラ生誕の時の理念を貫いていたこと。
それ以前に見たベートーヴェンのオペラが、「芝居+音楽」みたいな構成で、それはそれでとてもストーリーがわかりやすいのだけれど、やっぱりオペラならではのこのむずかしい構成を、見事に構築していることに驚いた。
特に第一幕などは、合唱、歌はまさにオケと一体で、
歌い手とオケという区別なく、完全一体してると思った。すごい・・。
プッチーニのツゥーランドットも、このボロディンのイーゴリ公も、ともに作曲者が制作途中で他界した作品だけれど、作曲者への悼みと厚い友情から、完成させた作曲家もすばらしいと思った。
18年の歳月をかけて書いていたボロディン。
その死後、リムスキー‐コルサコフとグラズノフが補筆。
こうして素晴らしいオーケストレーションも含め、作品が完成した。
たとえ、ラストが、物語が途中で「続く」的な終わり方でも、
もう、私には充分。
ロシアの壮大な重く寒い土壌のなかで、そこで生きていたロシアの人達の信仰に根付く力強い生き方みたいなものを想像させてくれるこの作品は、モーツアルトやドニゼッティなどのオペラにみられる軽い恋愛劇とは違う、もっと深い思考をかきたててくれる。
何より、女性が女王様気取りで恋愛を楽しむものとは違う、私の理想の「夫婦像」というのが描かれてる。
私は「若さ」や「美」や「恋愛ごっこ」をテーマにしてる作品は、
自分の気性からして、芯から好きになれない。
私は、きっと、こういうドラマが大好きなんだろうなと思う。
気高くて、力強くて、揺ぎ無い信仰を抱く人間って、すばらしい。
声楽のSM子教授が言っていた「音楽をやっていれば、音楽を愛していれば、戦争なんておこらない。」
この言葉のなかの「音楽」っていうのは、こういう作品じゃないかな・・
今日、DVDを鑑賞しながら、そう思えた。
この数ヶ月、数々の有名どころのオペラを鑑賞させてもらい、
今の私には、一番大好きな音楽ジャンルになってる。
多くの作品、その作品を生んだ作曲家と台本家。
そしてそれを生み出した国々の背景。
一つの作品に、多大な尽力を結集させて舞台にするオペラ。
そんな名作を数々鑑賞できた時間は、幸せな時間だったと思う。
igaさま、今週、DVDを整理して、
お手元にお返し致します。本当に私には、すばらしい時間を与えてくれたDVDでした。
igaさま、本当にありがとうございました。
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イーゴリ公:セルゲイ・レイフェルクス
ヤロスラヴナ:アンナ・ドモア・シントウ
ウラディミール:アレクセイ・ステブリアンコ
ブランゲーネ :ローズマリー・ラング
エローシュカ:フランシス・エガートン
指揮:ベルナンド・ハイティンク
管弦楽:コヴェント・ガーデン管弦楽団
演出:アンドレイ・セルバン
1990-2 ロイヤル・オペラ公演