・主体的・対話的な教育の推進(尼崎市就学前教育ビジョンについて)

①幼保小連携とは、規律を守り、みんなと同じことができるように早くから指導or主体的・対話的な学びを深める連携?(心理療法の交流分析から見た幼児期の抑圧体験が人生に悪影響)

②子どもと、小学校教諭の主体的・対話的な学びを実施した実績の評価

③市立幼稚園における幼児教育を多くの方が期待する主体的・対話的な学びを深める教育の実践

 

幼児教育については、2006年の教育基本法の改正の際、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることが規定され、重要性の認識の高まりと、それに伴う幼児教育の質の向上を求める声の高まりに対し、国、地方公共団体はもとより、幼児教育に携わる者の全てが協力し、取り組んでいくことが必要とあります。

 

先日、0歳から人格を尊重することを主眼とした、ハンガリー発祥のコダーイ保育を実践されている尼崎市内の法人保育園を2日間、視察させていただき、他の園児や先生の意見に左右されず、人の顔色を伺うことなく意思表示している子どもの達の姿を見せていただきました。

こちらとは別の主体的・対話的な教育方針の法人保育園の職員の方にもお話をお伺いすると「小学校に上がると戸惑う子どもが多い(意見しづらい)」とのご意見をいただきました。

 

私は医大の心療内科で専攻生の時に、幼少期の体験が無意識に心に刻まれ、大人になってから症状に悩まされる患者が多いと感じました。1つの見方としてアメリカの精神科医、エリック・バーンが創始した交流分析という心理療法があります。
 

非言語のやり取りによって形成される禁止令と、言語のやり取りによって形成される拮抗禁止令は、共に養育者から子どもに与えられる命令です。ただ、養育者は、明確な意図をもってその命令を下したわけではありませんし、子どもも、自分が命令されたと意識しているわけではありません。どちらも無意識のうちに、命令を出し、受け取っています。
そして、どちらもそのかかり方が一定値以上にきついと、人生に悪影響を与えます。
 

形成時期は、禁止令が、0~3歳で大本がつくられ、8歳ごろに完成するのに対し、拮抗禁止令は、4~6歳で大本がつくられ、12歳ごろに完成します。禁止令が先にでき、それの影響を強く受けながら、後から拮抗禁止令がつくられます。
特に、5つの拮抗禁止令のことを、その人を駆り立てるもの、という意味のドライバーといい、


1  『完全、完璧であれ。』繰り返し、しっかりするように教えたり、「ちゃんとしていないと認めない」という態度から伝わり、自分にも他人にも厳しくなり、他人の欠点が目についてしまう。自分が完全でないことに不安や焦燥感を持つ。
2  『他人を喜ばせ、満足させよ。』つらいときや悲しいときも、笑顔を求めることで、他人に親切にして喜んでもらわなければ自分には価値がないと感じ、自分の気持ちよりも他人を優先しがちになる。
3 『努力せよ。』「一生懸命やりなさい」と繰り返し教えたり、つねに努力することを求めることで、つねに努力をしていないと認められないと感じ、楽をしたりリラックスしたりすることが苦手になる。
4  『強くなれ。』「泣くな」「我慢しなさい」「そのくらいなんでもない」「痛くない」と言い続けることで、喜怒哀楽をあまり出さず、強さを示そうとし、人に弱さを見せることができず、すぐに泣いたり、人を頼ったりするような人を軽蔑してしまう。
5  『急げ。』「早くしなさい」「もっと急ぎなさい」と繰り返し言うことで、じっとしていることができず、いつもせかせかと動き回り、時間をむだにすることが許せず、スケジュールが埋まっていないと不安になる。

もしかすると皆様も思い当たることがあるのではないでしょうか。乳幼児の経験は、将来、自身の可能性を高められるのか、苦しむ要因となるのか、発達心理学的視点を持って保育・教育が担う重責を感じていかなければ、自己肯定感が低いだけでなく大人になっても、心身症(心的ストレスから起こる身体症状)やうつ病など病に至ることもあります。

子どもの自己肯定感は、幼少期の体験が重要です。主体的・対話的な学びを深める観点はもとより、幼少期に自身の意見を言うことができない環境にすることは、行き過ぎると意思発言権・決定権を奪い虐待と言われる可能性もあります。

 

尼崎市就学前教育ビジョンの素案の取り組みに幼保小連携とありますが、小学校では、まだまだ、子どもと教員の評価は、規律を守る、学力重視と感じます。主体的・対話的な学びを深める教育は、幼保園所の方が進んでいるのではないでしょうか。

幼保小連携が悪いとは思いません。主体的・対話的な学びは、自分らしく生きることと、これからの社会を支えるために最も重要な課題の1つだと私は思います。お金のあるご家庭の子どもだけが、主体性を育む幼児教育を受けられるのではなく公教育が担うべきだと考えます。また、尼崎市が主体性を育む教育を推進していくためには取り組む教員の実績に対し評価することも重要です。市独自の評価規準を要望します。

 

私は、共に学ぶインクルーシブ教育も主体的・対話的な学びを深めることを推進するものと考えます。

また、幼稚園を3園廃止される案の根拠の1つとして、市立幼稚園における就学前教育の充実とあります。ぜひ、市立幼稚園において主体的・対話的な学びをより推進し、市立幼稚園の価値をさらに高めていただけるよう要望します。

 

廃園の案が出されている竹谷幼稚園の地域の子ども達が、離れた園に通うアクセス確保に送迎バスの運行や、竹谷小学校内に、全ての園児、特に配慮が必要な園児につながりの場をつくり、幼保小連携の形を示す等、「子育てのまち」を掲げる本市ですから、市立幼稚園がなくなる地域の子育て中の方が、納得できるような対策を要望します。

 

質問

尼崎市就学前教育ビジョンの素案にある幼保小連携とは、規律を守り、みんなと同じことができるように早くから指導するということでしょうか。それとも主体的・対話的な学びを深める連携なのでしょうか?

 

教育委員会答弁

就学前教育においては、皆と同じことをするのではなく、やりたい遊びを自分で選ぶことや自分なりに表現することを尊重する等、幼児一人一人の思いを大事にすることが大切であると考えております。
一方で例えば、友達と必要なルールを決めて遊びを進めていくことや腹番を守ること舗と遊びや生の中で、社会性を育むことが大切であり、小学校以降の主体的、対話的で深い学びの基礎にもつながっていくものと考えております。
幼保小連携推進事業については、小1プロブレムを解消するために幼保小が連携しながら、幼児期の終わりと小学校入学当初のカリキュラムを考え実践することや、小学校の行事に幼児が参加する等の交流連携を行うことで、小学校への円滑な接続を目指しております。

 

質問

子ども達の主体的・対話的に学ぶ環境をつくっていくにあたり、まず、小学校教諭の主体的・対話的な学びを実施した実績を評価に反映されるべきだと思いますが、どのように評価されているのでしょうか。

 

教育委員会答弁

幼児期における一人ひとりの生活や経験を重視し、そこで育まれた感性や表現力等を基礎として、小学校では教科の体系の中で、子どもの発達段階に応じた教育を行うことが重要であると考えております。
幼保小連携事業は、就学前教育において育まれた資質・能力を踏まえ、子どもたちにとって円滑な接続ができるよう、教師間での意見交換や合同の研究の機会などを設け、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を共有するなど連携を図り、一人ひとりに応じた丁寧な指導につなげております。
例えば、1年生の生活科の「学校探検」において、学校の写真を見ながら学校生活への意欲を高め、友達と一緒に探検し、発見したことや、わかったこと、楽しかったことを伝えたり、さらに調べたりする活動を通して、主体的に学ぶとともに、友だちとの対話により学びを深め、様々な力を身につけることができるよう指導するなど、適切な教育課程を編成しております。
児童の評価については、学習活動の様子の観察、ペーパーテストや児童が書いた記録や作文、児童自身の学習の振り返り、児童同士の相互評価など、多面的・多角的に評価するとともに、一人ひとりの児童のよい点や可能性、進歩の状況等を日々の教育活動を通して伝えることも大切にしております。

教員については、県の評価規準に従っています。

 

質問

尼崎市就学前教育ビジョンに市立幼稚園における就学前教育の充実とありますが、幼児教育に多くの方が期待する主体的・対話的な学びを深める教育を実践していただけるのでしょうか。

 

教育委員会答弁

市立幼稚園においては、子ども達が、遊びを自分で選択したり、友達に一緒にやりたい気持ちを伝えたりすることが、しっかり身につくよう、様々な種類の遊びを用意する等、教師が意図的な援助を行うことで、幼児の主体的・対話的で深い学びにつながるよう実践に努めているところでございます。
今後、就学前教育ビジョンにおいて、平成26年度に策定した「就学前の子どもの教育・保育についての基本的な考え方」の改訂を行い、尼崎市の就学前教育のスタンダードを作成する予定にしており、この中で改めて就学前教育の中で大切にしていくことを、お示しさせていただきたいと考えております。