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豊中市のインクルーシブ教育について、豊中市教育長や、豊中市で育った当事者の上田さん(以前、お話を伺った記事をブログに記載しています)お二人の講演と、
濱元先生(関西学院大学)・堀家先生(仏教大)も交えたご意見を視聴させていただきました。
私はインクルーシブ教育は、子どもが誰かに言われて障がいのある子を支援するものではなく、自ら考え行動する機会となり、すべての子どもに自分らしい社会性や主体性を育む教育として必要だと感じています。
しかし、家庭環境や子どもの性格、特性によって自己表現がしづらい社会ですので、欧米の教育のように主体性を育む教育が就学前の幼少期から導入できれば、共に学ぶことと合わせて生きる力を育むと思います。
また、発達心理学的に自我を形成するためにも社会を信用して発言、行動ができる学校・社会へ発展を願っております。
以外、レポートを掲載致します。
・上田さんの講演
豊中市で友達と過ごした思い出や、日本の分離教育を改善して欲しいと願い国連に直談判したお話しでした。
分けられない環境で自分を解放できて生き生きと過ごされていて「大人になって思い出はつくれない」という言葉が心に残りました。
・豊中市教育長の講演
教育長になり5年経ちます。教育委員会は教員と行政職員で構成されていましが、元は行政職員で豊中市出身の方です。
豊中市教育委員会の特徴3点
・変化を恐れずチャレンジ
・チームプレーの徹底
・市民感覚を大切に
上田さんもですが、共に学ぶ環境で育った子どもの頃の経験が行動力、社会性を育むと感じます。
文科省通知 1/2通知(昨年、特別支援学級に在籍すると最低、半分の時間を特別支援学級で過ごさなくてはならない)を誰よりも早く、新聞記事を持って来庁された上田さんから聞いたそうです。
しかし、インクルーシブ教育という言葉がない頃から取り組む豊中市は、障がいがある子とない子、可能な限り共に学ぶ教育方針を貫いています。
大阪府教育長や文科省担当課長に撤回を直接訴えました。
たくさんの仲間と共に学ぶスタイルは、1/2という縛りは必要なく、いくらでもある。
国連の障害者権利委員会から、勧告、分離教育を撤回するよう通告されているが、国は遺憾と表明。
意味がないのか?そんなことはないと考えています。障害者権利条約に批准しているので重たい。
今後の施策事業と整合性が問われ、中長期的には意味があります。
豊中市の共に学ぶ遍歴
1953年、始まる。 各小学校に障害児学級。
1972年 市内就学を50人ができていない。
1973年 ひろがり学級を開始 50年後の記念イベントで当時の保護者の方が「重度の障がい者がある子が学校に通うなんて考えられなかった」と感謝を述べられました。
1978年 豊中市障害児基本方針 策定
学ぶ機会を完全に保証し、断ることなく受け入れます。画期的かつ先駆的でした。検討議論、試行錯誤の積み重ね、一足飛びに来た訳ではありません。信念を持って取り組んで来ました。
市内在籍児童生徒数(障がい児/全児童生徒)の変化
1976年519人/56000人
2022年2064人/32000人
発達障害という概念ができたことや、保護者の意識が要因と考えています。
また、昨年度、医療的ケア児に全国で初めて、市立病院から看護師派遣を開始しました。
共生社会を形成し、可能性を最大限に引き出すために、きめ細やかな指導は、これからも改善していきます。
40年以上経っても共に学ぶことは普遍的なもので、なんら変わりません。
対象の児童は年々、増えています。適切な支援教育体制を豊中市は自立的に取り組みます。
一緒にいることは、相互理解に基づいて真の共生社会に必要不可欠ですが、教員不足や不登校など問題は多くあります。
不登校など個別に存在するものではなく、学校教育全体を改善し充実させることが課題です。
・次にパネリストの方が加わりました。
濱元先生(関西学院大学)
インクルーシブ教育・共に学ぶ教育は、人権同和問題教育や障害者解放運動と一体となった活動でした。
また、最近は学校内などで、子ども達も共に考える機会も増えました。
堀家先生(仏教大)
豊中市の障がい児教育は兵庫県ではあり得ない。大阪府では、精神障害児を公立高校で受け入れる活動もでてきています。
上田さんの話を聞いて、上田さんはできたが、障がい児の誰でも経験することがにはできないと感じます。
インクルーシブ教育についての話を他の有識者や関係者にオファーをしたが、豊中市教育長以外は、受けられない。国からのプレッシャーを自治体がどう受け止めるかが課題です。
教育長
豊中市だけで進んで来た訳ではない。それぞれの立場で議論して積み上げて来たからこそ、通知には戸惑いがあるが、市民の声を国には、しっかり受け止めて欲しい。
上田さん
感動させる話でなく当たり前の話をしました。特別に感じた方がいれば、障害者と一緒に育ってないから、そう思うのかな。
(教員の負担について)
堀家先生
インクルーシブ教育の現場は、大阪府が進んでいますが、子どもは、ポテンシャルがあるのに大人が発揮する機会を奪っていると感じます。子ども同士でやっている姿を調査では多く見ました。そこでは、いわゆるソーシャルスキルを周りの子がつけてました。
支援学級・学校は介助員が張り付いていて、自分のペースが難しいのではないか。分けられた先で、どういうことが行われているのか、考える必要があります。
濱元先生
共に学ぶ教室は子ども達に制約が少なく、リラックスした授業になっています。また、先生がチームでクラスを見れます。
子どもが育つ環境がどうなのか?善意で行われていることが、機会を奪うことも考えなくてはなりません。主体的な教育につながると考えます。
幼稚園、保育所の時から一緒に育っているので、理屈ではない。子どもの持っている力で乗り越えられる。トラブルを遠ざけると社会経験が減ってしまいます。遊びの中で学んでいき、教育は側面から見て補助する方がいい。
(.障害児問題は不登校問題ともつながり、過ごしやすい教室がインクルーシブ教育の道筋では?)
濱元先生
豊中市は、子どもの居場所づくりをして来た。誰もが包まれる風呂敷きのような学校に、いろんな子が過ごしやすいように細やかな配慮が、まだまだ必要です。
(通級について)
豊中市教育長
不登校は、ここ5年で2.5倍になった。まだまだ増える可能性もあります。子どもが安心できる教室にすると共に、入りにくい子には別室を用意しています。問題はマンパワーの予算や発達傾向の子も多いことが課題です。
10校/17中学校で支援する通級に本年から教員を置く、事業が始まりました。
通級指導教室へ、受け持ちの数校。巡回していたが本年度から全校実施になりました。
(新しい分離別学が進まないか?通級指導の運用は?)
濱元先生
社会モデルに則して、共に学ぶ場を考えなくてはならなず、インクルーシブ教育なら子どもの自己決定が必要では。柔軟なインクルーシブ教育の対応が必要です。
堀家先生
女性専用車両と同じで、労働環境改善や痴漢対策をしないで分けるのと変わらないのではないか。その子がどうしたら学校で過ごしやすくなるかを考えるべき。通級がプチ支援学級にならないように考えなくてはならなりません。
兵庫県は、巡回で学校生活支援員が先生への指導があり、教員にプレッシャーを感じる環境ではないかと感じます。
上田さん
介助員が側にいてくれたら安心だけど、社会の対応は、いる時と、いない時で違う。話すことも気を使う。いなくても過ごせる教室がいい。
豊中市教育長
20人学級を目指すという意見についてですが、インクルーシブ教育単体で見てもつながりません。学級定数の改善め要望し続けています。
通級は一時的には大切だが、使い続けることには注意が必要です。普通学級に戻れるように常に声をかけて充実させて行きます。
同じ場にいるから、多様な学びになる。
ステップルームは緊急避難的には必要と感じています。
以上です。