「聖域5品目」すら守れないTPPの破壊力を見失うな! | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 ISIL関連の盛り上がりですっかり注目を受けないまま進行しているTPPの交渉ですが、非常に危険な方向に動いていることが懸念されます。農産品重要5品目を「聖域として死守する」ことを前提として交渉に参加したはずのTPPでしたが、この五項目に関してでさえ、どうやらほとんど守られる見通しがないことが次々に明らかになっています。

 豚肉は現在1キロあたり482円の関税を段階的に50円まで引き下げられる見通しとなりました。1キロあたり50円とは、要するに100グラムあたり5円ということになりますから、関税の影響がほとんどない水準まで引き下げられるということとして理解すればよいかと思います。輸入が急増した場合の為の緊急輸入制限(セーフガード)を発動しても、関税は1キロあたり100円、すなわち100gあたり10円にしかならないわけですから、セーフガードの効果はほとんど期待できないでしょう。

 牛肉の関税は現在38.5%ですが、これが段階的に9%にまで引き下げられる見通しとなりました。9%まで引き下がると、輸入牛肉の価格が今よりもさらに2割以上安くなることになり、国産との価格差は極めて大きなものになることが予測できます。乳製品についても、低関税・無関税の特別枠を追加するようです。聖域中の聖域とされてきたコメについても、これまでのミニマムアクセス米に加えて、別途に低関税あるいは無関税の輸入枠を新たに設ける方向だといいます。つまり、漏れ伝わってきているところでは、「聖域」でさえもほとんど守られるものではないということがわかります。

 いうまでもないかもしれませんが、TPPでは農産品というのは交渉対象の21分野の1つである「物品市場アクセス」の中のほんの一部にすぎません。政府調達、知的財産、投資、労働、入国、金融、制度的事項、紛争解決など、日本の国柄を大きく変えてしまう可能性の高い分野が目白押しとなっているわけですが、こうした分野では政府が「聖域」とした農産品重要5品目以上の「構造改革」が求められているであろうことは、容易に想像できます。

 秘密交渉であるはずのTPPにおいて、今回農産物に関してここまで具体的な数字が報道されるに至った背景には、農産品重要5品目における攻防に国民の目をそらさせて、TPPのメインストリームに対して着目されることを防止したいという思惑が働いているのではないかと推察されます。事実、このところ漏れ伝わるTPP関連の情報の中では、農産品重要5品目以外についての情報はほとんど見かけません。

 私たちは農産品重要5品目をめぐる攻防にのみ目を向けるのではなく、重要5品目でさえ守れなくなっている中で、もっと大きな「改革」の波が私たちの生活のあらゆる分野に及んできているであろうことを見落とさないことが重要になると考えます。


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