スタンダードチャータードの現物株撤退の意味を考える。 | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 今年の日経平均株価の予想については大変楽観的なものばかりがマスコミには溢れていました。米国の株式についても楽観論が強く、ウォールストリートジャーナルは「調査対象のストラテジストが全員、今年の株価続伸を予想」という記事を掲載しているほどでした。しかし、本当にそんなに楽観的な方向に株価は推移していくと考えてよいのでしょうか。

 昨日、イギリスの大手金融機関であるスタンダードチャータード銀行「現物株の取引のほか、株式調査や引き受けなどの業務から世界的に撤退する」との報道がありました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM08H7Q_Y5A100C1FF2000/

 スタンダードチャータード銀行の「チャータード(Chartered)」というのは、「(イギリス王室から)特許状を交付された」という意味で、この銀行は歴史的に英国の植民地支配と密接なつながりを担ってきました。ですので、イギリスの銀行でありながら、イギリスではほとんど業務を展開しておらず、今でも業務の65%はアジアにあり、香港ドルの発券銀行の1つともなっています。銀行の規模としては世界第5位とされ、そのプレゼンスは極めて大きい銀行です。つまり、アジアに経営の軸足を置いた名門の巨大銀行だと理解すればよいかと思います。

 このスタンダードチャータード銀行がこのタイミングで現物株の取引から撤退するというのは何を意味するのでしょうか。普通に考えれば株価の上昇はこれからはないと見ているということになるかと思います。実際、現物株からは撤退するものの、株式デリバティブ事業は継続するとしています。つまり、暴落が生じても利益が出せるデリバティブ事業は残すと言っているように、私には感じられるのです。

 一般にこれからの世界の成長セクターとして最も有望とみられてきたのが東南アジア地域だと言ってよいかと思いますが、スタンダードチャータード銀行の方針転換は、こうした見通しを完全に覆すものだともいえるでしょう。これは私にはもはや中国のバブルを維持するのは不可能になったということを、スタンダードチャータード銀行が察知しているということではないかと感じられます。先にも述べましたように、スタンダードチャータード銀行は香港ドルの発券銀行でもありますから、中国と関わる金融の流れの変化を敏感に察知できるポジションにいます。そして中国のバブル崩壊が本格的に始まった場合には、日本の株式はもちろん、欧米の株式にしてもかなりのダメージが発生することは当然予測できるでしょう。こうして、株式へのダメージが全世界的に広がることが予測できるために、全世界からの現物株の取引からの撤退をスタンダードチャータード銀行が選んだように感じられるのです。

 金融関係者であるならば、スタンダードチャータード銀行の方針転換が持つ意味を理解できる方はかなりいらっしゃるのではないかと思います。スタンダードチャータード銀行の流れに同調する金融機関が増えていく可能性は高いと考えます。この連鎖的な流れがさらに中国のバブル崩壊を確実なものとしていくのかもしれません。

 深読みし過ぎなのかもしれませんが、こんな見方もあるということが皆さんのご参考になれば幸いです。


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