強烈な消費税8%の衝撃 | 岐路に立つ日本を考える

岐路に立つ日本を考える

 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。



 7~9月期のGDP速報値が発表になり、7~9月期は年率換算で-1.6%との数値が出されました。名だたるエコノミストたちの予想を大きく下回る数値の発表には、こうしたエコノミストたち自身が最も衝撃を受けているのではないかと思います。





今回の速報値の特に重要ポイントだけここに例示したいと思います。

 まずは全体についてです。4~6月期が年率換算-7.3%で、経済規模はかなり縮小したわけですが、7~9月期はこの水準からさらに年率換算で-1.6%の引き下げとなりました。

 ここで微妙な点ながら確認しておきたいのは、4~6月期の当初発表が年率換算-6.8%であったのが、その後-7.1%に修正され、そして今回の7~9月期の発表に合わせて-7.3%に再修正されたということです。このような対応は実はいつものことなのですが、恐らくは今回の7~9月期の公表数値も、今後2回ほど下方修正される可能性が高いと考えるべきでしょう。

 また、4~6月期の年率換算値を-7.3%まで引き下げたために、7~9月の速報値を年率換算で-1.6%に留めることができたと考えるべきです。仮に4~6月期の年率換算を当初の-6.8%を前提とすると、今回の7~9月の速報値は年率換算で-2.1%程度になるはずです。4~6月期の年率換算が当初の-6.8%から今回改訂の-7.3%まで0.5%分押し下げられた分、7~9月の速報値は甘く出るように操作されることになるからです。

 全体を見て、もう1つ確認しておきたいのは、実質GDPと名目GDPの対応についてです。「名目」が物価変動分を考慮しないものであるのに対して、「実質」は物価変動分を考慮した数値となります。例えば、「名目」では4%の経済成長を示していても、物価上昇分が3%あったとしたら、「実質」は1%の経済成長しかしていないという判断になりますね。ここからわかるように、物価上昇が進んでいる時には「実質」よりも「名目」の方が大きな数値になります。

 今回は実質GDPが年率換算-1.6%の減少であるのに対して、名目GDPが年率換算-3.0%の減少となっています。つまり、「実質」よりも「名目」の方が遥かに小さくなっています。つまり、物価は全体として見れば下落しているということになります。これは明らかにデフレに逆戻りしていることを示しています。輸入品の価格上昇が相次いでいることを実感する中で、全体としてみると実は価格低下が進んでいるというのは、かなり衝撃度の高いところです。

 民間最終消費支出が+0.4%(年率換算1.5%)であることを理由に、個人消費は回復してきているという論者がおりますが、4~6月期が消費税引き上げの反動減で-5.0%(年率換算-20%程度)であったことからすると、むしろこの程度にしかならなかったこと自体が相当に驚異的な話です。つまり、反動減の4~6月期からほとんど回復していないということを示しているからです。むしろ、個人消費は増税後冷え込んだままだと判断した方が適切ではないかと思います。なお、実質的な家計消費支出(持ち家の帰属家賃を除く家計最終消費支出)で見ると、4~6月期が-6.2%(年率換算-25%程度)であるのに対して、7~9月期は+0.4%(年率換算1.6%程度)となり、4~6月期の反動減の大きさのものすごさと、そこからの回復がほとんどない実態がより明確になります。

 自民党の高村副総裁「私たちは先の衆議院選挙、参議院選挙で、『アベノミクスでデフレから脱却する』と言って政権を取らせていただいた。アベノミクス全体が失敗なのか、この道で行くのが正しいのかが最大の争点になる」と述べました。ならば、第二の矢を事実上封印して第三の矢である「構造改革」に邁進し、第一の矢で金融バブルを作り出して進めてきたアベノミクス全体は、明らかに失敗だったということになるでしょう。それが争点だと自民党自身が言われるならば、私は自民党に投票することはできません。

 構造改革からの脱却、積極財政への転換を訴える政党は出てこないものなのでしょうか。無駄をなくせの大合唱の中で、耐用年数である40年を超えた水道管が既に全体の水道管のうちの15%程度となり、水道管の破裂による道路の陥没事故が近年は全く珍しくなくなりました。橋の崩落なんて海外のことでしかないと思っていられたのも数年前までで、最近も北海道洞爺湖町で報告されるなど、この日本で散見されるようになりました。スパコンではアメリカの1/15の予算でさえ事業仕分けで却下され、アメリカはおろか中国にすら勝てなくなりましたあらを探せばどれだけ緊縮財政にしても必ず見つけることはできるでしょうが、そんなことばかりをやってきて、私たちの暮らしと安全を守るのに必要な公共投資を削り、今後の日本の成長のために必要な研究投資を削ってきました。中国の脅威が高まる中で防衛予算の増額も急務なはずですが、これすらままならないという状態からそろそろ我々は脱却すべきではないでしょうか。実際には世界一の債権国=金持ち国である日本がこんな愚かな政策を続けていることが信じられません。切に構造改革からの脱却、積極財政への転換を訴える政党が現れることを期待しています。