ダボス報道に見る、中国のメディア支配力の強さ | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 ダボス会議においての安倍総理の発言が不穏当だったと非難されています。現在の日中関係を第一次世界大戦前夜の英独関係に例えたとされる発言を受けて、例えばBBCの記者は驚きとともに恐怖を感じたのだそうです。では、この発言とはどのようなものだったのでしょうか。時事通信が首相の発言をそのまま掲載してくれていましたので、ご紹介します。

 尖閣諸島は1895年に日本の領土となった。日中両国は互いに最大の貿易相手国であり、日本企業の進出により中国も雇用を創出してきた、切っても切れない関係だ。従って、一つの課題ゆえに門戸を閉ざしてはならず、戦略的互恵関係の原点に戻るべきだ。条件を付けずに首脳会談を行うべきであり、首脳会談を重ねることで両国関係の発展の知恵が生み出されると思う。

(日中が軍事衝突する可能性について記者から質問されたことに対して)

 ちなみに、今年は第1次世界大戦100年を迎える年だ。当時、英独関係は大きな経済関係にあったにもかかわらず、第1次世界大戦に至ったという歴史的経緯があった。ご質問のようなことが起きることは日中双方のみならず、世界にとって大きな損失になる。このようなことにならないようにしなくてはならない。中国の経済発展に伴い、日中の経済関係が拡大している中で、日中間の問題があるときには相互のコミュニケーションを緊密にすることが必要だ。
時事通信の記事

 ごく穏当な、当たり前の発言しかしていないことがわかります。「経済的に強い結びつきがあっても戦争に発展することはあるという歴史の教えるところを忘れないで、軍事衝突を避けるために相互のコミュニケーションを緊密にすることが必要である。戦略的互恵関係の原点に戻って、首脳会談を重ねるべきだ。」としか言っていません。恐らく安倍総理としては、日本側は対話の扉はいつでも開けているのに、中国側が一方的に拒否することで会談ができていないということをほのめかしたつもりもあったのだろうと思います。こんな発言に驚きとともに恐怖を感じることがあるとすれば、明らかに過剰反応(異常反応)でしょう。

 ところが、この安倍総理の発言が不穏当なものだったと主張される方は、日本国内にもたくさんいます。その一例が站谷幸一氏で、氏は「世界にとって「右翼のルーピー」となった安倍首相:ダボス会議の衝撃」というブログを書いています。
站谷幸一氏のブログ

 このブログの中で氏は「「最終的に戦争が回避できない」という政策決定者の確信が戦争を呼び寄せる」と述べ、安倍総理の発言がそのようなものだったというのです。どこまでねじ曲げて解釈しているのでしょうか。安倍総理の実際の発言がどのようなものだったのかの確認すらしていないのか、あるいは初めから悪意を持って安倍総理を見ていたのかはわかりませんが、いずれにせよ事実とは全くかけ離れた理解をしていることがわかります。ここには、マスコミが一斉に問題視して報道したのだから、発言そのものに問題があったに違いないという決めつけはあっても、報道姿勢自体が歪んでいる可能性に対する考慮は全くありません。こういう論に踊らされないようにしたいものです。

 我々が考えるべきは、なぜ海外メディアが安倍総理の発言に対して、明らかに歪曲ともいえるような報道を一斉にするに至ったのかということです。

 これを考える際にヒントとなるのは、ダボス会議の共同議長の一人である中国工商銀行会長の姜建清氏の発言です。姜氏は「中国は平和を愛する国。武力衝突が起こるかどうかはすべて日本にかかっている。」と発言したことが報じられました。これは明らかに「中国は善、日本は悪」という立場から、一方的に日本だけに問題があると捉える思考を明白に開陳したものでしょう。これこそ独善的で危険な発言のはずです。ところがこの発言が不穏当な発言だということで全世界で問題視されたという報道は全くないのです。
朝日新聞の記事

 私たちは日本のメディアが反日に凝り固まっていると考えてきましたが、どうやら反日に凝り固まっているのは日本のメディアだけではないようです。海外のメディアも客観的な日本報道を行っているとは言いがたい状況になっているわけです。そしてこれは中国によるマスメディアへの影響力が圧倒的に大きくなっていることを、まさに裏書きするものだと考えた方がよいわけです。中国が悪意をもって安倍総理の発言を曲解し、その曲解した理解が欧米のメディアにもそのまま載せられるところまで、中国の情報戦の能力は高くなっていると考えるべきではないかということです。

 にこにこして誠実かつ平和的な態度を取り続けさえすれば、最後には日本の立場は理解されるというようなお花畑思考に日本政府が陥っているとまでは思いたくないですが、とはいえ情報戦を戦わなければならないという意識自体がほとんどないと言われても、否定できないでしょう。この意識の欠如こそが戦後レジームをまさに代表するものなのであって、ここでの失地を真剣に取り返さない限り、日本を取り戻すことなどできないという意見にご賛同いただける方は、ブログランキングへの投票をお願いいたします。


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