TPPは国柄をめぐる戦いであることを理解しよう! | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。



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 以下の二人の経営者のうち、どちらの方がまともであると皆さんはお考えになるでしょうか。

 まず一人目です。この経営者は従業員10人を、年収300万円で雇っています。従業員に子供ができたとしても、それによって従業員の働き方に変化が出るとは考えられないため、児童扶養手当の支給は行っていません。今期は売り上げが大きく伸び、それに伴って利益も大幅に増えたのですが、従業員はもともと雇用条件として年収300万円であることを納得して就職しているので、臨時ボーナスの支給は考えていません。増えた利益はすべて会社と経営者の利益として確保することにしています。

 次に二人目です。この経営者も従業員10人を、年収300万円で雇っています。ただ、従業員に子供ができた場合には、今の給料だけでは生活は厳しかろうとということで、児童扶養手当として月額1万円追加することにしています。児童扶養手当のあるなしで従業員の働き方に変化が出るとは考えにくいのですが、それでも児童扶養手当の支給を行っています。今期は売り上げが大きく伸び、それに伴って利益も大幅に増えたので、従業員に臨時ボーナスの支給を行うことにしました。当然従業員に利益を分配することで会社の利益は小さくなりましたが、それなりに会社も利益を増やせたのだから、それでいいかと考えています。

 日本人の常識からいえば、二人目の経営者の方がまともであると考えるのではないかと思います。しかしながら、別のものの見方に従えば、一人目の経営者の方がまともで、二人目の経営者はおかしいということにもなります。そのものの見方とは、市場原理主義的なものの見方です。

 児童扶養手当を付けたか付けないかで労働者の働きぶりに違いが出ないとすれば、こんなものを付けるのは市場原理に反しますね。もともとの雇用条件に納得しているはずなのに、臨時ボーナスで大盤振る舞いをするというのも、会社の利益を不当に減らし、株主利益に反する行為だと言えるはずです。そして実際、二人目のタイプの経営者はこの日本の中でも最近は減ってきているのではないでしょうか。私にはそのことが問題だと感じるのですが、市場原理主義の立場からすれば、二人目のタイプの経営者がまだまだ日本にいること自体が、日本の非効率さと不透明性を象徴しているということになるはずです。

 グローバルな視点から見れば、日本人の給料は圧倒的に高いはずです。そしてこの日本人の高賃金体質が日本の競争力を削ぎ落としていると考える見地からすれば、グローバルな自由競争に日本の労働市場をさらすことは、極めて正しいということになるはずです。

 一方、日本人が日本で暮らしていくのに必要な生活費が大きいことからすれば、発展途上国の人たちと同じ給料にするわけにはいかないという考え方もあるはずです。この見地からすれば、日本の労働市場を安易にグローバルに開放しない方が正しいということになるはずです。

 強者がさらなる強者になっていく自由を邪魔立てする制度や仕組みはけしからんとする立場もあります。もう一方で、強者といえども社会的に害をもたらすような自由や権利の行使は認められるべきではないとする立場もあります。

 TPPを巡る議論の根底にあるのは、こうした価値観の対立です。

 当然ながら、伝統的な日本の価値観は、社会的な害をもたらすような自由は権利はけしからんという立場に立ち、市場原理を超越した、きめ細やかな調整を行ってきました。しかし、こうした調整などは、当然ながら、市場原理主義からすれば不透明で排撃されるべきものだということになります。

 従って、TPPをめぐる問題とは、国柄を決する問題でもあります。TPPに対する態度をどうすべきかは、こういう側面を十分に理解した上でないと決められないものでしょう。

 日本の伝統的な国柄をTPPによって変容させる必要はないと思われる方は、ブログランキングへの投票をお願いいたします。


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