オーランチオキトリウムに過剰期待はできない | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 新エネルギーとして着目されているものの中に、「オーランチオキトリウム」という名前の藻があるのをご存知でしょうか。この藻は油分を作り出す藻ですが、繁殖能力が非常に高いので、効率的に繁殖させれば大量の石油を生み出すことも可能だとされているものです。この藻の繁殖に成功すれば、日本は石油の輸出も可能になるんじゃないかとの期待さえ、一部ではささやかれています。

 しかしながら、私はこのオーランチオキトリウムを高く評価する動きに対しては、かなり冷ややかに見てきました。その理由を以下に記します。

 オーランチオキトリウムは光合成によって増殖する藻ではありません。水中に含まれる有機物を栄養源とする藻です。

 「光が存在しないところでも合成できるのだから、応用性がむしろ高いんじゃないか」と、前向きに考える方もいらっしゃるようです。確かに下水に含まれる余計な有機物をこの藻に処理させながら油を取り出すというは、将来的には可能になるかもしれません。こうなれば、まさに一石二鳥ですね。しかしながら、光合成によらないというところは、逆にこの藻の持つ大きな限界を示しているともいえます。それはなぜか。私たちはエネルギー保存則を乗り越えることができないからです。

 オーランチオキトリウムに石油を作らせるとします。この時、オーランチオキトリウムにどれだけの「エサ」を与えなければならないでしょうか。オーランチオキトリウムは生きているわけですから、その生存に必要なエネルギーがまず必要です。その上に生み出す石油のエネルギー量も必要となります。この二つを合わせたエネルギー量は最低でも投入しなければならないということです。端的に言えば、石油というエネルギー源を取り出すのに、石油が持つ以上のエネルギー量を投入しなければならないということになるのです。これは大きな限界だとはいえないでしょうか。

 では、光合成を必要とする藻の場合には、どうでしょうか。光の持つエネルギーを「エサ」にしてくれるため、私たちが外部からエネルギーを与える必要はなくなります。この点ではオーランチオキトリウムよりは有望だと考えることができます。

 さらに、光合成を行う藻の中でオーランチオキトリウムの40倍の繁殖能力を持つ藻も見つかっています。発見した研究者の名を取って「榎本藻」と呼ばれている藻がその藻です。

 では榎本藻であれば、日本は石油の輸出国になれるのかといえば、それにもやはり無理があるかと思います。それはなぜか。光が届く層にしか藻が繁殖しないために、榎本藻の場合には、どれだけ効率的に増殖させたとしても、面積の割には生産量は少ないということにならざるをえないからです。そして生み出せるエネルギー量も太陽光の持つエネルギー量に規定されます。日本の国土面積に匹敵するくらいの広大な場所が確保できれば、日本が石油の輸出国になることも可能かもしれませんが、この想定がいかに現実離れしているかは、わざわざ説明せずとも明らかでしょう。

 夢のない話で申し訳ないのですが、私たちは現実の制約を飛び越えることはできないという事実を、あらかじめ受け入れておく必要があるのだろうと思います。生の現実はイライラすることばかりですが、それを受け入れてその中で最善を考えるしか方法はないということを確認するのは、案外大切ではないでしょうか。そんなことを思っています。


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