尖閣問題をこじらせて困るのは中国だ | 岐路に立つ日本を考える

岐路に立つ日本を考える

 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。

 「1000隻の漁船が尖閣諸島沖に向けて出航した」との報道がありましたが、私はこの漁船団が実際に日本の領海を侵犯しに来る可能性は低いのではないかと思っておりました。実際、報道を見る限り、漁船が尖閣沖に実際に向かった形跡はありません。

 理由の詳細については前回のブログを参照して頂きたいのですが、簡潔にまとめれば、中国は現在体制崩壊の危機に差しかかっており、尖閣諸島の問題に関わっている余裕など実際にはないからです。

 今回の反日暴動も、中国共産党内部の権力抗争が原因で引き起こされたものでしかありません。日本政府の尖閣諸島国有化の方針に中国の一般国民が激情したというものではないのです。権力闘争の火遊びに反日暴動を利用するのはあまりにおろかであり、これにより中国共産党体制の崩壊はより早まったように思います。

 実際、中国側も、この火遊びの危険には気付いているようです。その証拠の第1として、新唐人テレビが漁船1000隻の件について作成した興味深い動画をご覧ください。漁船は全く尖閣諸島沖に向かっていないことがわかります。



 尖閣問題で日本に圧力をかけるための漁民の動員は行っておらず、今、日本に対して本気で対峙する気は中国にはないわけです。また、仮に漁民の動員を行おうとしても、一般の漁民はそんな危険な海では操業したくないため、動員に乗る漁民もさほど多くなりそうもないのが実情のようです。

 火遊びの危険に気付いている証拠の第2は、江蘇省蘇州市の対応です。蘇州市は今回の暴動でパナソニックの工場やスーパーイズミヤの店舗が襲撃されたりした場所ですが、ここで市政府側から日系企業に対して従来通りの企業活動を行ってほしいとの要請が寄せられたとの報道がありました。(東京新聞)
  リンク先は東京新聞のニュース

 証拠の第3は中国の陳徳銘商務相の発言です。陳徳銘商務相は「加工貿易は外資導入の重要な要素で、経済発展に大きく貢献している」とした上で、「今後も中国が国際分業に参加する重要なモデルだ」と強調したそうです。(時事通信) 直接的に日本のことについて論及したコメントではありませんが、日本の投資をつなぎ止めたい意図でなされたものだと考えるべきだと思います。

 実は、欧米はリーマンショックの頃から中国からの撤退をかなり進めてきました。唯一対中投資を増やしていたのが日本だったわけです。この日本が撤退することになれば、中国に新たに投資してくれる外資がなくなってしまうことになります。そして、今回の事態を目の当たりにして、日本以外の国であっても、中国で操業することの恐怖を強く感じたことと思います。つまり、日本以外の国も含めて、今後は外資の撤退速度が速まることにつながるのは確実でしょう。

 世界的な不景気もあって、中国のGDPに占める輸出依存度は、2006年には35%を越えていたのに、現在では25%程度にまで減ってきています。この落ち込みを過度な不動産・公共投資によって埋め合わせしているのが中国経済です。

 ちなみに日本の総固定資本形成はバブル期でもGDPの30%を少し越えるほどでしたが、中国の総固定資本形成はJETROの統計でも45%ほどとなっており、大変いびつな経済となっていることがわかります。(実情はGDPの7割を占めるという噂もあります。)そして、ご存知のように中国はバブルの崩壊過程に入っており、この歪んだ不動産・公共投資のツケが経済に重くのしかかり始めているわけです。個人消費支出が非常に小さく、輸出と不動産・公共投資の2つの牽引で経済を成り立たせてきた中国において、このどちらもが厳しい環境になってきました。国内で頻発する暴動は、もちろん中国共産党政権の腐敗ぶりに対する怒りから来るものでもあるのですが、こうした経済の変化によって庶民の生活が成り立たなくなってきていることが根底にあるだけに、事態は深刻なのです。日本の経済力がないと中国はやっていけないのが実情なのに、とんでもない火遊びをやってしまったというわけです。

 こうした中国の状況を踏まえて、今日本が行うべきことを、以下にまとめてみました。

 1)尖閣諸島の領有権がまちがいなく日本にあることを、過去の中国の地図や人民日報の記事を明示してアピールすること。できればよくわかる動画を作成して、アップすること。(なお、1958年3月26日付の人民日報には、「中国は琉球諸島への主権を絶対に放棄しないというデマ情報をアメリカが広げているが、これは日本への領土返還を求める沖縄人民の強い感情に水を差すためのものだ」という趣旨のことが書かれています。そして同じ記事の中で、1951年8月15日に周恩来首相が琉球諸島と小笠原諸島の管轄権を主張するアメリカを非難し、「これらの島々は過去のいかなる国際協定においても、日本からの離脱を定められていない」と述べたことを引用しています。また、1958年1月8日付の人民日報には、「琉球諸島は台湾の東北から九州の西南の間に点在し、尖閣諸島や先島諸島、大東諸島、沖縄諸島など7組の島からなっている」と述べています。要するに、両方の記事をまとめれば、「琉球諸島は日本のものであるのは間違いなく、琉球諸島には尖閣諸島も入る」という主張になります。)

 2)今回の反日暴動の主導者が中国共産党の一部勢力であり、責任の所在が中国の一般国民にあるわけではなく、中国共産党と中国政府にあることを明確にすること。それゆえ、中国政府に全損害の賠償の責任があることを明確にすること。

 3)日本人と日系企業の財産と生命の安全が守られない状態であることがはっきりした以上、日系企業の撤退もやむをえないとの判断を示した上で、邦人に対して帰国を促すとともに、日本国民の中国への渡航の自粛を求めること。

 4)中国側がすぐに賠償を支払わない場合には、いったん日本政府が日系企業の受けた物的な実損のみならず、操業停止と撤退に関わる費用まで、全額肩代わりすることを発表すること。

 5)中国国債の購入停止と売却、スワップ取引の中止、元の国際化への協力の停止(円元直接取引の停止)を行うこと。

 6)中国がたびたび持ち出してくる歴史問題についても、争いを避ける態度を改め、真実はどうであったかについて、正々堂々と道理に基づいて争う姿勢を示すこと。

 以上を世界に向けて、よくわかるようにアピールしさえすればよいでしょう。そしてその上で、国内向けとして、あと3つ加えておきたいと思います。

 7)「窮鼠猫を噛む」という事態に備え、国土防衛には最善を尽くし、自衛隊法を抜本的に改定するなど、必要な法整備を着々と実行すること。

 8)灯台を建造する、電波塔を建てる、船の待避施設を作るなど、尖閣諸島の実効支配を着々と進めること。

 9)防衛力の整備を進めること。

 中国を過剰に怖がる必要はありません。問題を大きくして本当に困るのは、中国共産党体制の側であることを、私たちは正しく理解しておきたいところです。