全日本選手権男子フリー終了後の上位3選手の会見を書き起こしました

夜22時からフジのYouTubeのサイトで配信されたものです。
途中、ずっと一人で練習していた羽生くんが抱えていた苦しさを赤裸々に明かしてくれていています。
◆メダリストとなった率直な気持ちは?
羽生「えー、率直にまずは、今回ひとり、まあコーチ不在ということで長い間練習して来て、練習の間にまあ足痛くなったりとか、精神的に悩んで苦しい日々だったりとか、そういった物ももちろんありました。ただ、コーチ不在とは言え、たくさんの方々に支えられて、そして練習の時から色んな方々に支えて頂きました。もちろん実際には練習のメニューとかプログラムの構成もそうですけども、一人で考えてっていうことが物凄く多くて大変だったことは大変だったとは思います。ただ、それがあったからこその今だと思うので。もちろん今の結果は素直に嬉しいですけど。何よりもこうやって自分のことを信じてくれたコーチたち、そして遠くからでも支えてくれてた色んな方々に感謝を申し上げたいです。本当にありがとうございました」
◆2020年は羽生選手にとってどんな年でしたか?
羽生「えー、大変でした。でも僕が大変だって思う気持ちは、医療従事者、そして関係者の方々、または職を失ったり、そもそもお金が入らなかったり、生活自体が苦しくなってる方々に比べてみたら本当にちっぽけなことで。言ってみれば僕はスケートっていうことをやれてる自体本当に恵まれているんだなって思うんです。だから、僕自身は苦しかったかも知れないけれども、あの、少しでも自分の演技が、なんか、明日まで持たなくていいんで、んー、その時だけでもいいですし、そっから僕の演技が終わって1秒だけでもいいんで、少しでも生きる活力になったらいいなっていう風に思う1年間でした」
◆苦しかった時期から良くなった瞬間、前を向いた瞬間はいつ?
羽生「まあ、どん底まで落ちきって、本当に、あの、そうですね、まあ一言で表したいんですけど説明が難しくて上手く言えないかも知れないですけど、んー、なんか、自分がやってることが凄く無駄に思える時期が凄くあって。まあ、色んなトレーニングとか、または練習の方法とか、もちろん自分自身で振り付けを考えなきゃいけないっていうプレッシャーだったりとか、自分自身で自分をプロデュースしなくてはいけないというプレッシャーとか、それが皆さんの期待に応えられるのか、そもそも4回転アクセルって跳べるのか、とか。でも、僕の中に入ってくる情報はやっぱみんな凄い上手で。みんな上手くなってて。なんかひとりだけ取り残されてるっていうか、なんかひとりだけただただなんか暗闇の底に落ちていくような感覚があった時期があって。でも、なんかもう一人でやだって思ったんですよ。一人でやるのもうやだって、疲れたなあって思って、もうやめようって思ったんですけど。やっぱ『春よ来い』と『ロシアより愛を込めて』っていうプログラムと両方ともやった時に、「あー、なんか、やっぱスケート好きだな」って思ったんですよ。スケートじゃないと自分は感情出せないなって。全ての感情を出しきることが出来ないなって。だったらもうちょっと自分のためにわがままになって、皆さんのためだけじゃなくて自分のためにも競技続けてもいいのかなっていう気持ちになった時がちょっと前に踏み出せた時ですかね。まあ、ちょうどよくどん底に落ちきって、本当にアクセルすら、トリプルアクセルすら跳べなくなった時期があったので。まあそっから比べたら今はだいぶ成長出来たのかなとかって思ったりはしています」
◆どん底に落ちきってた時期とかアクセル跳べなくなった時期的にいうと?
羽生「いや、結構長くてその期間は。あの、本当10月11月くらいまで・・10月終わりくらいまでありました。ただ、そこから少しずつコーチたちにその、まあ、メールしてビデオ送って「こんな風になってるんだけどどう思いますか」とか、いろいろアドバイスを貰ったりとか頼ることが出来始めて。で、その上でなんか、もちろんライブでそんな会話なんか出来るわけではないですし、まあ結局自分の感覚と自分の今までの経験で練習を構築していくしかないんですけど、でもそういう意味ではやっとなんか、本当にやっと自分がここまでスケートをやって来て、ね、なんか、鍵山選手も宇野選手もやっぱどんどんどんどん技術的に上手くなってってて、なんていうんすかね、なんか年寄りみたいな感覚が自分の中であって、固定概念みたいなのがあって、で、どんどん技術的に落ちるんだろうなみたいな。で、4回転アクセル練習すればどんどん他のジャンプも崩れていくし、ダメになっていくし、足も痛くなるし。だからなんかそういった悪いスパイラルに入っている中でやっと自分が長年経験してきたこと、ケガした事とか、平昌の事とか、あとは自分が上手く出来た時の事とかそういったものを消化して、ベテランらしく、うん、ちょっとはいい演技がいい練習が出来るようになったんじゃないかなと思います」
◆昨年の表彰台と同じ顔ぶれですが、羽生選手から見た宇野選手・鍵山選手とはどのような存在?
羽生「まず、宇野選手。まあ、本当なんて言うんですかね、お二方とも両方ともそうなんですけど、なんか、すごい「憧れて下さって本当にありがとうございます」っていう気持ちが凄くあって。ちっちゃい頃から本当に昌磨に関しては一緒に試合に出て、思い返せばノービスの頃も、えへへ(笑)。だってあんなに、なんて言うんですかね、あんなちっちゃかった頃が懐かしいなあって思ったりとか。そもそもこの子に持ってる表現の仕方とか所作の綺麗さとか、そういったものは本当に努力して、本当に心から辛くなる時期もあったと思うし、彼自身が持ってる辛さみたいなものももちろんあると思うんですけど、それを圧し殺してまでここまでやってこれたっていうのが物凄く尊敬してるし僕自身が。何より本当に心の強いファイターだなって思ってます」
羽生「で、鍵山選手に関しては、やっぱあんだけ勢いを生かして何事にもステップもそうですしスピンもそうだし、ジャンプもあれだけ勢いを使ってジャンプ跳べるっていうのは本当に凄い事だし。あれだけの衝撃をずっと体で耐え続けてるわけでもあって、その中でちゃんとケガせずに自分をコントロール出来てるっていうのは若いながらもやっぱり自分自身も勉強させて貰ってるし尊敬してる点です」
◆宇野選手から見た羽生選手は・鍵山選手は?
宇野「まあ、僕にとってずっと目標。本当に最終目標。最終です。僕にとっての最終です。最終目標ってずっと言い続けて。ただ、試合が1年くらいなく、僕もなんか自分が今やってる練習っていうのがどうしても、目標、この練習がどうなっていくんだろう、どうなるんだろうっていう、思いながら練習をする時期がかなりありました。その中でやっぱりステファンコーチっていうコーチに恵まれていたので。その、スケートを楽しむ、それは僕がここまでスケートを頑張って来たご褒美だと思って、スケートを楽しむ事も必要だなって練習していたんですけども、この大会に出て、本当に僕はこの大会自分にとっていい演技でした、ただ、ゆづくんの演技を生で見た時に、あ、僕はこんなにもゆづくんと差があったんだって思いましたし、あと、失礼な発言になってしまうかも知れませんけど凄くその、嬉しかったです。改めて僕の本当に目標っていうのがゆづくん。もうこれはどの大会ではなく、多分目標がゆづくんなんだなって思いましたし、凄い、「いやマジですげーな」って思いながら今日見させて頂いてましたし、もう本当に嬉しかったです」
「鍵山くん、鍵山選手についてなんですけど、もう、僕がもう、なんて言うんですかね、結構年が、僕ずーっとなんか下っぱだと思いながらスケートをやって来たのに、気づけばもう下から年の離れた年下の子がここまで成長していて。僕が大層なことは言えないんですけど、すごいなんかスケート界というか、不思議だなって、その絶対に途切れないように凄い実力のある上手い選手が何かしらの形でこうして現れる。そして、鍵山選手の演技とかを見て、あ、僕もこういう時期あったなあとか思ったり。あとは、単純に僕より上手いなって思うところがたっくさんありすぎて、その、僕は全日本の前に挑戦される立場じゃないなって正直思いながら試合に挑んでいたので、あの、ショート3位っていう順位も、なんか、悔しいというよりも、なんか自分がミスした結果であり、順当だなって心の底から受け入れる事ができていましたし、なんか、僕がね、こんなに大層なこと言えるわけではないですけど、その、時の流れを感じました。はははは(笑)」
◆鍵山選手から見た羽生選手は?
鍵山「僕はこの全日本選手権を通してやっぱり羽生選手や宇野選手の存在は
まだまだ遠いなっていうのを凄い実感して。これは多分、自分がフリーノーミスしてもこれは勝てなかったなって思ってるので、まあそこは自分にまだまだ足りないものがあるという事なので、もっともっと練習が必要だなって思いましたし、まあ自分自身も羽生選手・宇野選手はその最終目標っていうか、凄い目標にしているので、んーと、来年、次、闘う時までにどれくらい近づけている、近づけていけるかってっていうのをまた、もっと練習して確認できればいいかなって思っています。この全日本選手権で色んな人たちと一緒に滑る事が出来て凄く楽しかったと思いますし、まあ自分にとっても凄くいい刺激になったので、この試合を練習でも生かしていきたいなと思っています」
◆コロナ禍の状況で大切なものの優先順位や価値観に変化はありましたか?
羽生「僕は、まあちょっと震災と絡んでしまうかも知れないんですけど、あの、また改めてスケート出来ることが当たり前じゃないっていう事を痛感しました。あの、先ほどの言った事とちょっと被ってしまうかも知れないんですが、やはり僕らよりも絶対苦しんでる方はいらっしゃいますし、うん。最後に会えない方々だっていらっしゃいますし、そういう方々だったり、今本当に先が見えない労働を強いられて本当に目の前が真っ暗になるような方々もいらっしゃると思います。そういう方々にとっては僕が、僕らがこうやってスケートをしてるっていうのもある意味、まあその人たちからしたらこれも仕事って言われるのかも知れないんですけど、僕にとっては震災を経験した僕にとってはやっぱりスケートは自分のが「好きなこと」にしかなってないので。やっぱそれをさせて貰ってこうやって競技の場として設けてもらって、それを最後まで闘い抜かせて頂いて、まあ申し訳ないっていうか罪悪感もちょっと、ちょっとあると言えばあるんですけど。ただ、まあ自分が出場した事で先ほど言ったようにちょっとでも何かの活力になれば、何かの気持ちの変わるきっかけになればというように思いました」
⭐⭐⭐⭐⭐⭐
羽生くんは完璧なようで、やっぱり人間なんですね。
羽生くんは、こういう事はないのかな、って思うような事は
これを読むとやっぱりもれなく悩んでいたんだなって分かりました。
ずっと試合がなくて、それでも体は鍛えていないといけないという状態だと、
こんな苦し思いしても無駄なんじゃないかってやっぱり思いますよね。
他の人もどんどん上手くなっていくし、唯一のモチベーションの4回転半アクセルは、本当に実現するのか誰にも分からない。
なんか、一人だけでやってたらどん底に落ちちゃうってよく分かる。
いつも通りカナダでクリケットでコーチやみんなと練習していたらそんな事ないんだろうけど。
でも、そんな思いを圧し殺して作ってくれたプログラムのなんていう完成度!
羽生くんの思いをぎゅうぎゅうに詰め込んで磨きあげた宝石のよう。
羽生くんに言って上げたいのは、あなたはそのままで素晴らしいってこと。
ファンの期待に応える事を過度に気にしなくていいですよってこと。
あなたは、本当にたっくさん愛されてるってこと。
無理をせず、これからも健康に気をつけて
大好きなスケート、頑張って下さい

そして、私、昌磨くん、話が面白いと思うんです。
しゃべる事が分かりやすくて面白いなと。
ゆづくんと昌磨、私は好きです。
◆写真は動画の画面のスクショです。