羽生 診断は3週間安静だった「弱いというか、もろいというか、それも羽生結弦」
―苦しみながらやりきった。
「構成落としているんで、体力自体はもっていたけど、最後ふわふわしちゃいました」
―コンビネーションで痛みがでたか?
「痛みというか、感覚のなさが出ちゃった」
―滑り終えた時は。
「“頑張った”って思った。とりあえず3クワド入れたんで良かったかなと」
―痛み止めの薬は?
「そうですね、はい」
―どんな感じだった?
「ちょっと感覚はない」
―構成を変えようと思ったのは。
「転倒した際に“いっちゃったな”とすぐに分かったので、確認作業をちょっとしてここで何をやろうか考えながら、あの時には組み立てていた。ただ、やったことがないものが多々あったので、難しかったなとは思う」
―痛みは?
「まだ痛み止めの錠剤は効いているし、まだいいのかもしれないけど、明日もたぶん厳しいと思うし、ちょっとファイナルについては考えなきゃいけないかなと思う。本当に申し訳ないんですけど、自分でも悔しいなとすごく思うのは、去年のNHK杯以降、より弱かった右足首がさらにゆるくなってしまっている。ほんのちょっとの衝撃でも、すぐ捻挫になってしまうというのは、本当に悔しい。自分の中としては、それも羽生結弦だから、そういうこけかたをするようじゃまだまだ技術不足という悔しさがあるし、もろさも含めて強い演技を積み重ねて、強い演技をできるようにしないといけない」
―転んだ時は?
「回転が足りなくてこけてしまったので。ちょっとでも回転が足りなくて横にパタっと折れちゃうと、靱帯だったり骨だったり。切れる靱帯もないくらいなので、すぐに骨が当たっちゃったり、無理したところの靱帯が切れたりすぐにするので。まあ、弱いというかもろいというか、それも羽生結弦です」
―欠場はよぎらなかったか?
「何を選択しようということを考えた。靱帯の損傷には間違いないので、ドクターの指示を言ってしまえば3週間は安静なんですよ、本当は。そうすると全日本も厳しい。だから、何をしたくて何を削るか考えた上で、今日しかないかなと思ってやった」
―ロシアでの演技だったからか。
「それもあるけど、ここまでトレーニングしてきたことがすごく重いものだった。ここで諦めたくないなというのと、なんとかしてトレーニングの成果を少しでも出したいというのがあった」
―ロシアだから頑張れた部分はあったか?
「ロシアだったからこそ、この試合を選んだのかな」
―ファイナル、全日本については様子を見ながらか。
「それはちょっと。そう思います。今日みたいな構成で勝てると思っていないし、今日も悪化させるような演技をしているので、足首には良くないことをした自覚があるからこそ、考えないといけない」
羽生、右足首負傷もV!日本男子単独最多のGP10勝目/フィギュア
フィギュアスケート・ロシア杯第2日(17日、モスクワ)グランプリ(GP)シリーズ第5戦。男子ショートプログラム(SP)首位の羽生結弦(23)=ANA=が、朝の公式練習で右足首を負傷する中、フリーも1位の167・89点をマークし、合計278・42点で優勝。ファイナル(12月6-8日、バンクーバー)出場を決めたが、医師に3週間の安静が必要と診断されたため、ファイナル、12月21日からの全日本選手権(大阪)を欠場する可能性が出てきた。
古傷の右足首に感覚はなかった。手負いの絶対王者は4分間を耐えしのぐと、氷上で自らに語りかけた。
「頑張った」
苦難の果てに手にした初のシリーズ連勝と日本男子単独最多のGP通算10勝目。演技後、取材エリアで待ち受けたロシア出身のタチアナ・タラソワさん(71)と抱擁を交わす。親交の深い名指導者にねぎらわれ、羽生は涙を拭った。
「足首が痛いのでどうしようもない。でも、これも羽生結弦。ひどいフリーだったな」
朝のリンクが戦慄に満ちた。フリーの曲をかけた練習の冒頭、羽生は4回転ループの着氷に失敗し、右足首を内側にひねった。氷上でうずくまり、動けない。中盤で演技をやめ、練習時間を15分残して切り上げた。
右足首は昨年11月にも痛めた古傷だ。4回転ルッツで転倒し、右足関節外側靱帯(じんたい)を損傷。長期離脱の原因となり、2カ月後の2018年平昌五輪でようやく復帰がかなった。
「もう切れる靱帯もない。(今回も)損傷は間違いない」と羽生。公式練習後、医師には3週間の安静が必要と診断され「滑ると悪化する」と言い渡された。それでも、痛み止めの薬を飲んでフリーへ。4回転ループは回避し、難度の落ちるサルコーとトーループで3本の4回転を跳んだ。構成の変更が混乱を招き、終盤はジャンプが乱れた。
フリー「Origin」は敬愛するエフゲニー・プルシェンコ(36)が名演した「ニジンスキーに捧ぐ」がモチーフ。ロシアの皇帝の演技は今も映像で見返すほどだ。棄権も考えたが「ロシアだからこそ(今後の大会でなく)この試合を選んだ」。フィギュア大国への思い入れの強さが欠場の選択肢を打ち消した。
表彰式後の会見には松葉づえを突いて現れた。ファイナルだけでなく、全日本選手権も欠場する可能性を示唆。「3週間安静となると全日本も厳しい。治ったら終わりではない。自分がしたいスケートができるか、今後を考えないといけない。引退はしませんけど」。全日本欠場となれば3年連続で、来年3月の世界選手権(埼玉)に自力での出場がなくなる。熱演の代償は大きい。(鈴木智紘)
ブライアン・オーサー・コーチ「羽生を誇りに思う。十分やった。(右足首を再び負傷し)こんなことになるとは思わなかった。不運だった。足首がどれだけ悪いかはわからない」










