平昌オリンピックから帰国した翌日2/27日に
日本記者クラブで行われた会見ですニコニコ

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180227-00010007-houdouk-spo
(羽生選手会見全文)

⬆記事のテキストをお借りして、
書き言葉になっている部分を羽生選手の言葉に戻して、抜けている部分、また誤りを修正しました。





日本記者クラブ会見(1) 最初~20分まで



https://youtu.be/yYVyJH4nkPw

司会 : NHK島田
――66年ぶりの2連覇を達成して、正直な感想を。

羽生
一言で言うと「幸せ」です。
ただ、これはフィギュアスケートの歴史において66年ぶりという事で今からその66年前を振り返ってみると全く違うスポーツだったなあという風にも思っています。
まあ、写真で見ることしかできないですし、古い映像もなかなか入手することができないので、あまり見れることはないんですけれども、自分自身こうやってスケートを18年間やっていて、自分自身も見ていて全く違った競技になってるなあと思いますし。

特にこの4年間、僕自身やっていながら、違う競技をしている気分になるほど進化がめまぐるしかったので。そういった意味では、すごく重いものになったなと思っています。
また、あの日本人選手団としても・・日本人選手団?分かんない・・まあいいか・・冬季オリンピックで2連覇は珍しい事と思うので。そういう事自体で自分自身・・もちろん自分自身が持っているこの金メダルへの価値も物凄く大きいんですけれども、世間の方が思っている価値というものもすごく大きなものになっていて、そういった意味で自分の首から下げているものはとても重く感じています。

 
――「色々な事をとことん考えて分析して、それを感覚とマッチさせる事が自分の一番の強みだ」と仰っていた。相撲の「心技体」のような境地に達したのはいつごろ?

羽生
元々僕はすごく考える事が好きで、考える事が好きと言うよりしゃべることが好きな方が強いんですかね。
自分が考えて何か疑問に思った事について追及し、そして教えてもらって、更にしゃべりながらまた自分が動いていく。そういった事が元から性格上ありました。
なので、その考えている事を口に出す、まあ、所謂考えている事を表現する。まあ、それは先ほど仰っていた「心技体」に近いものがありますし。またそれがスケートで生かされているのも、またそのごく自然と自分の性格上になっていったのかなと自分では思っています。

 
――ソチ五輪の金メダルの時に、そういう自己分析の力は既に備わっていた?

羽生
備わっていたというか、やっていた」という方が近いです。
元々、その疑問に思ったことを突き詰めてはいましたけれども。その集中に対してであったり、プレッシャーに対してであったり、そういった事に突き詰めて考える時間が、僕の場合はそんなに多くなかったです。最初からプレッシャーは好きだったし、メンタルが強いわけではないんですけれども、緊張した舞台、または追い込まれた舞台で力を出すという事が、やっぱり今までスケートをやってきて多かったように感じています。

 
――NHK杯でケガをしたその回復の間、「論文を読んだり過去の映像を見たり、頭の中で次の勝利へのステップを組み立てていた」というのは、どのような歩みだったのか?

羽生
NHKも出れなくてすみません・・。
今できる全力、今できる今の僕自身を貫かなくてはいけないなということが一番でしたね。
やっぱり、人生こうやってまだ23年の自分がいうのもなんですけれども、やっぱりできる時とできない時っていうのは凄くあるんだなあという風に今までスケートやっていて感じるので。
その・・できる時にできる事を精いっぱいやる。できない時はそれなりのできることをやる。それが凄く大事だなあという風に感じたこの3ヶ月でもありました。

 
――仙台がスケーター・羽生結弦を育てたと思います。被災地のみなさんへの報告はいつ頃になりそうですか

羽生
んー、明確にいつとは言い切れないです。ただ、間違いなく仙台で、たくさん応援してくださったことは見ていますし、メッセージも届いていますし、そして被災地の方々も少しでも勇気や笑顔になるきっかけがあったらいいなという風にも思ってたので・・
今回こうやって、幸いにも情報の技術やメディアの技術だとかそういうものが上がっていて、こうやって幸いにも僕はこれだけ注目されながら演技をする事ができているので、みなさんにたくさんの思いが届いているのではないかなという風に思っています。そのお力をもうちょっと頂いて、また復興の力にもして頂けたらいいなという風にも感じています。

 
――日本の選手の方々は、周りへの感謝や思いやりを口にされています。一方で、世界では勝てばいい、競技に集中することが大切だという流れもある。今回は、日本人のすばらしさも世界に発信できたと思いますが、トップアスリートが世界を極めるためには、心の感謝や思い遣りはどれくらい大切ですか?
 
羽生
はい。まず少しだけ情報の整理をさせて下さい。もともと日本人が持っていたスポーツへの概念、トレーニングへの概念というものは、所謂根性論だとかそういう風に叩かれることがあるかもしれませんが、メンタルを鍛えることでは絶対に優れていたとは思っています。

 そして日本人は、その「負けん気」というものを武器にした選手・・僕のような選手もいれば、絶対に「勝ち負けは関係ない自分が納得できるものを」という選手もいます。逆に言えば欧米でもそうですね。マイケル・ジョーダン選手なんかが、自分は特に印象に残ってるんですけれども「誰に対してもリスペクトをする。そのリスペクトの心が自分を強くする」そういう風に仰っていたのが凄く印象に残っています。

もちろん勝ち負けだけを重視する選手もいるかも知れませんが、それはやっぱりその人の性格によるという風に思っています。
心の問題、集中力の問題はそういう事から言えば、僕は先ほども言ったように性格上凄く追い込まれると強いということで、んー・・あまり楽しい気持ちとか、またはリスペクトをしながら感謝をしながら、ニコニコしながら演技をするのは向いてないんじゃないかなと思っています。

そういった意味では、んー・・ちょっと変かもしれないし、特殊なのかも知れないですけれども「絶対に勝ってやる」って思った時の方が力が発揮できたりという事もあります。
でもそれは選手の性格次第なので、ある意味これから僕がもし指導者になって行って、または伝道師というかいろんなことを伝える立場になった時に、経験として伝えられる事の一つではないかなと思います。

そして、日本人の感謝の気持ちという事は、日本人が絶対持たなきゃいけないものだと思いますし、僕自身も凄く大切にしている事です。
それは競技以外でもそして競技が終わった後、えー・・例えば柔道なんかもそうですけど、絶対に自分が競技をしていたフィールドに対してあいさつをする。
そして、終わった後にコーチ、家族、そして回りに・・幸いにもフィギュアスケートは凄く観客の皆さんが応援して下さることを実感できるスポーツなので、そういった方々にも感謝の気持ちを届けなくてはな、という風に日本人の誇りとして思っています。




質問者 : ゴゴスマ 奥平
――羽生選手が楽しいという気持ちで演技をするタイプではないと仰いました。スケート以外で楽しさを感じる瞬間は?



羽生
僕にとって「楽しい」は、そうですね、もちろんゲームも大好きですし、アニメを見る事やマンガを読む事も・・マンガを読む事の方が多いんですかね。そういったリラックスをするタイムは楽しいなとは思います。もちろん自分の趣味として一番有名なのは多分「イヤホン収集だったり(笑)、音楽鑑賞」だと思うんですけれども。

 それもまたたくさんの方々に支えて頂いて、本当になんだろ、普通の人だったら聞けないんだろうなっというような細部の細か~い音まで出るイヤホンを、ヘッドホンをたくさんたくさん頂いているので、そういう時はやっぱり楽しいですね。はい。
それはその楽しい気持ちが競技に繋がっている事は間違いないです。その楽しさがあるから、頑張れているのかなという気もします。はい。ありがとうございます。
提供して下さる方や、下さる方、本当にありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。

 
NHK 刈谷
――ネイサン・チェン選手が、SPで失敗しないで羽生選手と同じくらいか少し上くらいの点数が出ていたら、フリーの構成は違った?
それと、技術に基づいた芸術と言った。今後4回転半や5回転が主になるとジャンプ選手権になってしまうと思うが、フィギュアスケートが今後どのようなものになって欲しいのか?
 


羽生
え、まず「時論公論」ありがとうございました。見てました。えへへ。
じゃあ、最初の質問さらっといきますね。ネイサン・チェン選手がノーミスするとかしないとか関係なく、自分が出来ることをやろうと思っていました。それはもうその時になってみないと分からないですし、ネイサン・チェン選手がもし、もし、「タラレバ」ですけど、僕は好きじゃないですけれども。「タラレバ」で僕より上になっていた場合は、もしかしたら自分のリミットをさらに超えたものをやれた、かもしれません。それは分かりません。

えっと、これからのフィギュアの未来について話します。勿論5回転になる、5回転が主流になることは、4回転半が今のトリプルアクセルのように主流になるという事は、まずこの50年間に置いてはないだろうと僕は予測します。それが主流になってしまったら刈谷さんも仰っていたようにジャンプ選手権、それこそ僕は今回平野歩夢選手とずっとお話をさせて頂いて、参考にさせて頂いた部分もあったんですが、ハーフパイプみたくなってしまう。それはちょっと思います。



ただ、じゃあもし、「羽生結弦」が4回転半、もしくは5回転を挑む。試合に絶対に入れると決めた場合は、それは確実に表現の一部にします。それは言えます。その選手が、それぞれの選手がそういう風に思えるかわかりませんが、僕のスタイルはそこですし。何より僕がフィギュアスケートをやっている理由はそういう所にほれ込んだからであって。そういった演技にほれ込んで来たから、こうやってオリンピックでこの種目で金メダルを目指したいと思った訳であって。
だから難易度と芸術のバランスっていうのは僕は本当は無いんじゃないかと。芸術は絶対的な技術力に基づいたものであると、僕は思っています。

 

日刊スポーツ
ーー以前、学んだことをスケートに生かせることが自分の強みだと仰いました。今後誰かに学んでみたいことはありますか?

羽生
まず今回、けがをした後に、自分の憧れであるエフゲニー・プルシェンコさんをはじめ、みんなが「信じているよ」という気持ちを持ちながらメッセージを下さいました。そのことにまずは感謝したいなあと思っています。
もちろん、影響を受けた選手っていうのはたくさんいますし、僕は、壮大な話になってしまいますけれども、自分が生きていく中で一つとして影響を受けなかったものは無いなと思っています。
例えば、今自分がこうやって喋っている時に考えていることだってそういう風な事を聞いたから、そういう風な思考になっているのかもしれないですし。



僕は幸いにも、10歳になるギリギリですかね、それくらいからこうやってメディアの方にインタビューをしてもらって、自分の思考を整理させて頂く時間だとか、あとはインタビューをして貰う事によって覚える言葉だったりとか、ふふふ(笑)そういうものもあったし。やっぱりそうやって自分を作ってきたなと思うし。そうやって自分は作られてきたんだなと思っているので。誰か特筆して言う事はないかなと。

ただ、いま凄く思うのは、こうやって、まあ今言葉を発しているのは自分ですし、このあとメディアの方々が何十、何万本当に何十万、何百万、もしかしたら何千万、億かもしれないし。そうやって一人の人間からいろいろな情報が伝わっていく、それって凄くなんだろ、自分が色々な方から影響を受けているからこそ、すごく光栄な事だと思うし。もし僕なんかがきっかけでちょっとでも人生や考え方が良い方向に向いたらとても幸せだなと思っています。







    ☆☆☆☆☆☆


一言目に「幸せ」と言ってくれたのがファンとしては非常に嬉しいです。

そして、いつでも全力で一生懸命で出し惜しみしない事を貫いていた羽生選手が、「できる時にできる事を精いっぱいやる。できない時はそれなりのできることをやる。それが大事だなと思う3ヶ月だった」と答えたのが、私としてはホッとしたような気持ちでした。



「絶対に勝ってやる」と思う方が力が出せるし、追い込まれた方が強い。それは「強いライバル」がいてこそ、それが出来るんですね。
ファンとしては、少しヤキモキして試合を見なければならないかも知れませんが、「楽しんでニコニコしてやるのは自分に向いてない」と言ったのは印象的でした。



そして、羽生くんが一番ビビビビーーっと反応していたのは、NHKの刈屋解説員の質問の時でした。



ネイサンが自分の点数を越えたとしたら・・という「タラレバ」は、羽生選手が完璧だったらないと検証されています。以下のサイトで。




イタリア解説EuroSport版
「平昌2018:STUDIO~惑星ハニューとジャンプ検証」
http://pianetahanyu.altervista.org/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2%E8%A7%A3%E8%AA%ACeurosport%






検証記事中で、なぜ羽生はそこまで難しいプログラムをやっているのかとその凄さに感嘆されています。

この会見では、刈屋さんへの回答が丁度その事の答えになっています。それがこの競技をやる理由だと、羽生結弦の矜持が語られてる部分がこのパートで一番ぐぐっと来たところでした。



2に続きます。






◆お写真は動画からのスクショです。ありがとうございました。