ソチオリンピック間際に届いた旗がある。


羽「これは湊中学校っていう、石巻の被災した中学校のほうから」

羽「応援のバナー(旗)です」
寄せ書きのメッセージに改めて奮起した。

羽「金メダルって文字がすごい多いんですよね」

羽「すごい期待されてるなって感じもありましたし」


(2月 ソチ五輪)
期待の言葉はもう重荷にはならなかった。


ショートプログラム1位で迎えたフリーの演技。


(4回転トゥーループ)


4回転成功のあと…

(3回転フリップ)



簡単なはずのジャンプでミス。


もうこれ以上失敗は出来ない…



追い詰められたその時、羽生を支えたもの。


羽「金メダルという目標に向かっているのは僕だけじゃなくって」

羽「たくさんの方々が同じ金メダルってものを目指して、応援してくれてたなあっていう風に思いますし」







後半は完璧に近かった。

羽「僕1人では金メダルを取ることは出来なかった」





全力を出し尽くし、直ぐには立ち上がれなかった。



手に入れたのは、日本男子初の金メダル。

だが、羽生は直後の会見で記者の質問に戸惑った。

外国の記者
「今回の勝利が被災地の人々にどういう意味を持つと思うか?」

羽「あの、実際こうやってオリンピックのゴールドメダリストになれたかも知れないですけれども」

羽「それでもやっぱり、僕1人が頑張ったって復興に直接手助けになる訳ではないので」

羽「あの、すごい…すごい無力感というか、そういうものもすごく感じますし」

「なんか」

羽「何も出来てないんだなっていう感じもちょっとします」

甦る後ろめたさ。

(2月 成田空港)

帰国した羽生は、笑顔の下に葛藤を隠していた。

自分のメダルなど被災地の復興には役立たない。

☆☆☆☆☆☆
羽生結弦の『ロミオとジュリエット』はなんて美しいんでしょう。
肉体そのものが、詩であり、音楽であり絵画のようであり。
フィギュアスケートの中では知らぬ者のない美が、ソチオリンピックによって一気に世界に向けて開かれた時、それは衝撃的な驚きだっただろうと思います。
彼の夢が叶い、嬉しさいっぱいだった翌日。
聞いた「無力感」という言葉と、成し遂げた偉業との解離には驚くしかありませんでした。
(;д; )