5/12に肺炎による多臓器不全で、演出家の蜷川幸雄さん(80)が亡くなられました。
シューイチのインタビューの中に印象的な言葉がありました。その部分をご紹介します。
【2016/5/15放送 シューイチ】より

ナレーション
一線級のアイドルを舞台役者として器用して来た蜷川さん。

中山秀行
「アイドルの方、出演されるケース多いじゃないですか。それは何か狙いとかあるんですか?」
蜷川「よく劇評なんかでも『何でアイドル使うんだ』って書かれることあるんですけど」
中山「うんうん」

蜷川「アイドルはただアイドルでいるんじゃなくて、観客の欲望を具現化してるところもあるんだから、使うの当然でしょうって僕は言ってるんですけど」
蜷川「彼らもの凄く努力してるんですね」
中山「なるほど。稽古熱心でもあるってこと?」

蜷川「そりゃあ熱心ですよ。あの人たちは、失敗したら仕事がない事をよく分かってますから」
中山「はー、なるほど」
蜷川「そして行儀もいいですよ」

蜷川「ただ売れる訳ではなくて、何かない限り絶対売れないですね」
では、一体どのように俳優を演出していたのでしょうか。
2013年6月。舞台「盲導犬」稽古。

稽古が始まると、厳しい目で舞台全体を見渡します。
古田新太さんと小出恵介さんのこのシーン、蜷川さんが何度も発した言葉が。

蜷川「一連のその行動がもうちょっとリアルにいかないかな」

蜷川「「動くなよ」って言われたから止まるとか、そういうのはもっとちゃんと細かい方がいい」

蜷川「台本に書かれてるから、やってるみたいでリアルじゃない。もっとリアルな方がいい」
蜷川さんは役者にリアルを求めます。

宮沢りえ
「うつむいていた髪をばさりと上げ…ってあそこも動かない方がいいですか?」

蜷川「いい意味がある動きがあれば動いていいよ」
蜷川「当然人がそばに来たらちょっと下がったりするのに、平気で突っ立ってると相撲の十両部屋の稽古みたいになる」

蜷川「ちょっと通ったら下がるとか、ディテール(細部)をちゃんとやって欲しいんだ」

蜷川「僕はもうちょっとディテールがあった方がいいと思う」
☆☆☆☆☆☆
羽生くんの事を思いながらインタビューを聞きました。
羽生くんもアイドル級の容姿を持つスケーターであり、蜷川さんの言葉を借りると‘観客の欲望を具現化する’スケーターです。
その容姿は人間の男性を表す言葉ではおっつかず、妖精だとか天使だとか言われてしまうほど。
羽生くんには俗世臭さと言うものがなくて、舞台に上がると夢幻の世界を視覚化させる事ができる特筆すべき資質を備えています。
そしてその才能はただある訳ではなくて、血の滲む努力の末の実力があっての事。
蜷川さんはよくテレビをご覧になって、面白い役者になれる人を探していたそうです。
当然、羽生くんの事はご存じだっただろうと思うので、蜷川さんがアイスショーを演出したら、羽生結弦を演出したらどんなだっただろうと思いました。
そしてもう一つ、リアルを求めると言われた部分を聞いて、羽生くんと萬斎さんの対談を思い出しました。
SEIMEIの冒頭の頭上の左手について萬斎さんに聞かれた羽生くんは、
「もう完全に振り付けをされたがままにやってる状態なんで、今は」
と答えています。
それに対して萬斎さんは、型は解釈して意味を持たせて演じるのだと言われました。
これは、蜷川さんの言うリアルにと言う意味のことで、羽生くんの演技が「台本に書かれてるからやってるみたいでリアルじゃない」と感じたから、萬斎さんの指摘を受けたのでしょう。
そしてディテールをもっと出すと言うこと。
どんなものでも表現する仕事はディテールの追及で質が変わります。
羽生くんの場合は、スケートの技術面の精度は極めて高く先鋭化していますから、あとは表現面のリアルさのディテールをどこまで出せるかだと思います。
そのためにも、映画に出演して俳優陣の演技のスキルに触れ、自らも体験した事はとても良い経験になったのではないかと思います。
萬斎さんにも、打てば響くと言われたように実際に沢山の様々な経験をすればするほど、そのエッセンスを吸収し、またスケートに生かされて行く事でしょう。
次はどんな羽生結弦の世界を見せてくれるのか楽しみです。
足も少しずつ良くなってそろそろ練習を始めるそうで、ちょっと安心しました。
(*^_^*)
シューイチのインタビューの中に印象的な言葉がありました。その部分をご紹介します。
【2016/5/15放送 シューイチ】より

ナレーション
一線級のアイドルを舞台役者として器用して来た蜷川さん。

中山秀行
「アイドルの方、出演されるケース多いじゃないですか。それは何か狙いとかあるんですか?」
蜷川「よく劇評なんかでも『何でアイドル使うんだ』って書かれることあるんですけど」
中山「うんうん」

蜷川「アイドルはただアイドルでいるんじゃなくて、観客の欲望を具現化してるところもあるんだから、使うの当然でしょうって僕は言ってるんですけど」
蜷川「彼らもの凄く努力してるんですね」
中山「なるほど。稽古熱心でもあるってこと?」

蜷川「そりゃあ熱心ですよ。あの人たちは、失敗したら仕事がない事をよく分かってますから」
中山「はー、なるほど」
蜷川「そして行儀もいいですよ」

蜷川「ただ売れる訳ではなくて、何かない限り絶対売れないですね」
では、一体どのように俳優を演出していたのでしょうか。
2013年6月。舞台「盲導犬」稽古。

稽古が始まると、厳しい目で舞台全体を見渡します。
古田新太さんと小出恵介さんのこのシーン、蜷川さんが何度も発した言葉が。

蜷川「一連のその行動がもうちょっとリアルにいかないかな」

蜷川「「動くなよ」って言われたから止まるとか、そういうのはもっとちゃんと細かい方がいい」

蜷川「台本に書かれてるから、やってるみたいでリアルじゃない。もっとリアルな方がいい」
蜷川さんは役者にリアルを求めます。

宮沢りえ
「うつむいていた髪をばさりと上げ…ってあそこも動かない方がいいですか?」

蜷川「いい意味がある動きがあれば動いていいよ」
蜷川「当然人がそばに来たらちょっと下がったりするのに、平気で突っ立ってると相撲の十両部屋の稽古みたいになる」

蜷川「ちょっと通ったら下がるとか、ディテール(細部)をちゃんとやって欲しいんだ」

蜷川「僕はもうちょっとディテールがあった方がいいと思う」
☆☆☆☆☆☆
羽生くんの事を思いながらインタビューを聞きました。
羽生くんもアイドル級の容姿を持つスケーターであり、蜷川さんの言葉を借りると‘観客の欲望を具現化する’スケーターです。
その容姿は人間の男性を表す言葉ではおっつかず、妖精だとか天使だとか言われてしまうほど。
羽生くんには俗世臭さと言うものがなくて、舞台に上がると夢幻の世界を視覚化させる事ができる特筆すべき資質を備えています。
そしてその才能はただある訳ではなくて、血の滲む努力の末の実力があっての事。
蜷川さんはよくテレビをご覧になって、面白い役者になれる人を探していたそうです。
当然、羽生くんの事はご存じだっただろうと思うので、蜷川さんがアイスショーを演出したら、羽生結弦を演出したらどんなだっただろうと思いました。
そしてもう一つ、リアルを求めると言われた部分を聞いて、羽生くんと萬斎さんの対談を思い出しました。
SEIMEIの冒頭の頭上の左手について萬斎さんに聞かれた羽生くんは、
「もう完全に振り付けをされたがままにやってる状態なんで、今は」
と答えています。
それに対して萬斎さんは、型は解釈して意味を持たせて演じるのだと言われました。
これは、蜷川さんの言うリアルにと言う意味のことで、羽生くんの演技が「台本に書かれてるからやってるみたいでリアルじゃない」と感じたから、萬斎さんの指摘を受けたのでしょう。
そしてディテールをもっと出すと言うこと。
どんなものでも表現する仕事はディテールの追及で質が変わります。
羽生くんの場合は、スケートの技術面の精度は極めて高く先鋭化していますから、あとは表現面のリアルさのディテールをどこまで出せるかだと思います。
そのためにも、映画に出演して俳優陣の演技のスキルに触れ、自らも体験した事はとても良い経験になったのではないかと思います。
萬斎さんにも、打てば響くと言われたように実際に沢山の様々な経験をすればするほど、そのエッセンスを吸収し、またスケートに生かされて行く事でしょう。
次はどんな羽生結弦の世界を見せてくれるのか楽しみです。
足も少しずつ良くなってそろそろ練習を始めるそうで、ちょっと安心しました。
(*^_^*)