
(RACTABドーム・旧なみはや)
ナレーション
待っていたのはアイスショーへの出演だ。

羽「おはようございまーす」
ショーで滑る事も、世界選手権を控えた羽生には格好の肩慣らしだった。

練習の成果を試合と変わらない環境で試せるし、世界のトップスケーターが顔を揃える。

先輩・荒川静香も出演者の1人だった。
荒川
「やってないよ。1ヶ月間」
羽「やってなかった?」
荒川「やってないよ」
羽「ホント。何も違和感がなかった」
荒川「なかった?」
羽「当たり前だなあ、みたいな」
荒川「いやいや。毎日やらないと出来なくなっちゃうからさ」
羽「(うなずいて)感覚全然ないですよね。1日やらないと」
荒川「あとトゥーループとサルコウとアクセルくらいしかショーでやらないから…」
羽「あ~そっかそっか」
荒川「ルッツとかやってないとそれらが難しく感じたら嫌だから。
もっと難しい事やっておけば良かった」
羽「ふふ(笑)」
荒川「簡単にやりたいっしょ」


羽生が頭を下げた相手はエフゲニー・プルシェンコ。
かつて世界選手権で3度の優勝に輝いたベテランだ。


(2007年13歳)
天才スケート少年と騒がれ始めた頃からプルシェンコに憧れ


技術だけでなくヘアスタイルまで真似していた。



(2010年15歳)
年齢的には一回り違う二人。だが、ロシアの元王者がただ1人脅威を感じた相手が羽生だった。

時代は移り、今羽生は名実ともに世界の頂点にいる。

(4トゥーループ転倒)

タイミングを外した羽生をプルシェンコは見ていた。
コーチのようにアドバイス。
滅多に人を誉めない王者が、羽生には賛辞を惜しまない。

プル
「羽生はフィギュアスケートの新世代だと思います。
本当に強い選手は1度勝ってからも消えずに勝ち続けることができます。
良いレベルを維持するのは難しいが、これができる羽生は素晴らしい」
開演前。
羽生がさりげなく後輩を気遣う姿を目撃した。

羽「寒くないの?」
宇野昌磨
「大丈夫ですよ」

羽「(上着脱いで渡して)着て。俺オープニング出ないから」
(↑ここかっこいい~)
( 〃▽〃)キャー
リンクを離れれば和やかなスケート仲間。


(小塚くんと佐藤コーチの‘くるくるポン’の真似)
羽「こうやって…なんて(笑)」
織田「仲良しか!」
羽「(笑)」

織田「今日こけたらー、それは謝るわ。それは謝る」
羽「OK期待しとくわ。期待しとく。こける事を」
織田「昨日は昨日は俺のせいじゃない」
羽「そこは、そこはやっぱりでも誇るべきメイドイン大阪だから(笑)」
織田「しっかり降りるわ」
羽「しっかり膝曲げてー」
織田「コツなんでした?」

羽「右手を回す!!」
織田「あ~右手を回す!」

織田「昌磨の、昌磨のランディング(真似する)」
羽「ひゃはははは(笑)」

(体を折って大爆笑)


織田「(昌磨とハイタッチ)よっし」
(後ろで羽生くんはこっそり氷のかけらを拾う)

(眼は獲物(織田くん)をロックオン)
↓
↓

(後ろから氷を背中に入れる)
羽「よしゃしゃしゃ」
織田「あぁぁぁぁ!!オーマイガっ!!」

羽「フフフフ」
(羽生くんめっちゃ嬉しそう(笑))
(^m^)
こんな時、羽生は世の中のどこにでもいる青年と変わらない。
人気は圧倒的だ。
出演が決まった時点でチケットはたちまち完売した。
(ショーに来た人の声)
「羽生くん。かわいい」
「かわいいだけじゃなく凄く誠実やし」
「インタビューなんかの受け答えが素晴らしいでしょう」
「いやもう人間じゃないみたいなところ」
「自分よりも年下なのにしっかりしてて日本を背負って生きてるんだなって」
ショーは華やかに幕を開ける

スケーターたちはみな楽しげだった。
現役のゴールドメダリストはスペシャルゲスト。
出番はこの日のクライマックスに用意されている。

場内アナウンス
「盛り上がってますか大阪!」
羽「(幕をめくって叫ぶ)フー!!」

羽「たぶん一番自分が盛り上がってる自信あるよ」
羽「めっちゃ出たいです。振り付け覚えて出たいです!…仕方ないですね」
ショーの雰囲気に触れると、滑る事がただただ面白かった少年時代を思い出す。

だが今は、計り知れない期待を背負う選手なのだ。
演技の前には必ずイメージトレーニング。

身体の軸を正確に保ち続けるトレーニングは、フィギュアスケーターにとって最も大切な準備だという。

自分の中に完璧なイメージを作り上げて本番を迎える。

一度リンクに立つと表情はもう、王者の貫禄をたたえている。


Q.終わったら何かしたいことは?
羽「いやー、先ずはもう練習したいです。
とりあえずはしっかり体休めて、万全な状態にして練習に臨めたらなと思います」
羽「もう世界選手権だけなのでがんばります」
ショーを終えると、まっすぐホテルへ。


スタッフ
「大丈夫ですか?」
羽「大丈夫です。ちょっと疲れた」
スタッフ
「お疲れ様」
羽「ありがとうございます」

(エレベーターへ)
試合と同じく渾身の力を注ぎ込んでいたのだろう。
生真面目な羽生はすっかり消耗していた。
☆☆☆☆☆☆
織田くんと一緒にいるといつも楽しそうな羽生くん。
織田くんもなんかお父さんみたいな感じで遊んでくれてるような。
この時も足の痛みや不安があったと思います。
心許せる束の間の時間をくれる織田くん、ありがとう。
(*´∀`*)