前々記事の写真に、織田くんと町田くんがいますね。

少し前までこんな風に当たり前に試合風景の中にいた選手が今はもう、いません。

フィギュアスケートの選手時代は本当に短いんだなと思います。


織田くんが引退した時は、舞台袖で羽生くんが号泣していたそうです。


町田くんの時は、ちょうど羽生くんが緊急入院した時に突然引退してしまい、見送ることすら出来ませんでした。


羽生くんは病院で泣いていたんじゃないかな、と思います。


去年のGPファイナルのEXのフィナーレで町田くんのEX曲‘Don't Stop Me Now’が掛かった途端に踊り出した羽生くん。


町田くんの真似をしてエアギターでザザーって。


町田くんが恋しいよね、羽生くん。小さい頃から一緒にスケートやって来て、たった1年前に同じバルセロナで闘ったのにね。



引退する選手には各々事情があり、その意思を尊重して見送りたいと思います。

でも、辞めて欲しくない、寂しいと言う気持ちは出来る形で声に出しても良いと思うのです。


辞めないで!と惜しむ声の中で辞めて行く方が選手にとっては幸福だと思うからです。


私には、その声を最も強く届けたい選手がいます。


羽生くんの引退の事は、こうして触れる事も辛いし、その時が来るのが怖い。


でも、もしあと2年しかないのなら、考えない訳には行きません。


今年はまだ、いいんです。2016年シーズンはいつも通りに応援出来るでしょう。

でも2017年シーズンはそうも行かない。

GPを見ても、全日本を見ても、来年ここに羽生結弦選手はいないのだと考えてしまう。


それは、とても悲痛な事です。


過去を見ても、未来を見ても逃げ場がなく、ただ一つ一つの試合に集中して前だけを見詰めていなくては、とても自分を保てそうにありません。


今まで引退する選手を見送って来たファン達は、どうやってその時期を乗り越えたのでしょう。



私が、こんな慣れないブログを書き始めたのは、あと2年の間に何か出来る事はないかなと、羽生くんの現役時代の魅力の万分の1でも記して置けたらなあと思ったからです。



でも、その一方で、私は羽生くんは2年後に引退しないのではないか、とも思っています。


2014年11月20日に発行された‘チーム・ブライアン’の中で羽生くんは、「でも僕はやりたくはないです。8年後までは(笑)。この4年に集中して、そして終わらせると思います」と、語っています。


この部分を読んで私はかなり落ち込みました。


翌年(2015年)の夏に平昌後に引退してプロに転向との報道が流れた時も、やっぱりそのつもりなんだよね…と残念に思いました。


でも、その報道は即座に羽生くん自身によって否定されました。


あれは小学生の時の将来の計画を話したものであって、引退すると報道されて驚いた、と。


あれ、と思いました。
既定事実なら報道はそのまま流されただろうし、一旦ここで否定して、後から違ったらファンには反って酷になります。


では、羽生くんの気持ちは本が出た14年11月当時から変化したと言う事でしょうか。


だとすれば、それは本の発行とほぼ同時期に行われた、14年の中国杯がきっかけになったのでは、と思われます。


ハン・ヤン選手との衝突で負傷した羽生くんは、自分が辞めるどうこうではなく、こうして物理的に終わる事もあると言う事を学んだでしょう。


そして、GPファイナルでフィギュアスケートが出来る喜びを思い出した。


あの時の羽生くんは、2011年のGPファイナルの羽生くんの表情と似ていてオーバーラップして見えました。

ああ、昔の羽生くんが帰って来た、と思いました。


数年、重い物を背負って闘っていたのが、本来の羽生結弦のスケートをする喜びに立ち戻ったのでしょう。

また、浅田選手の復帰も影響したかも知れません。


それから、引退否定の後の出来事ですが、2015年のフランス杯がテロと言う外因によって、試合そのものが消失してしまったと言う事にも思う所があったかも知れません。


と、言うような事を考えていた頃、NHK杯後の記者会見で何よりも羽生くん自身の発言がありました。


322.40点の新記録に沸く記者達を前に、

「まだこれが平昌オリンピックでもないし、その次のオリンピックでもないし、引退の試合でもないです」
と発言したのです。


はっきりと言葉を区切ってしっかりとそう言っていました。


私は、ええっと前のめりになるほど驚きました。


今、平昌のその次のオリンピックと言った…。


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写真は【2015/11/29放送 シューイチ】より




夏の引退報道を重ねて否定している様に感じられました。


わざわざ言葉に出してその次のオリンピックに触れた事が、意味がない事とは思えないのです。


記者は直ぐに次の質問に移ったため(なぜそこを掘り下げないの)、それ以上は分かりません。


でも羽生くんの考えは14年当時から変化したように感じます。


続々と新記録を出し、新しいジャンプや表現にも挑戦し、やりたい事があと2年では全部出し尽くせないのかも知れません。


また、もしかしたらチーム・ブライアンの本の中で話していた時の言い回しは実際には少し軽く言ってみただけだったのかも知れません。


現時点では引退は、彼自身にもその時が来ないと分からない事でしょう。


早合点して期待したくはありません。


しかしながら、本を読んだ時の退路を絶たれたような絶望からは脱し、今は随分と希望が持てる状況にあるのではないかと思っている、今の自分の気持ちをここに書いて置きます。




今日は一番重く、心配している件に触れました。

最後までお読み頂いてありがとうございました。


なお、記事中の羽生くんの記者会見の内容は、全文が書き起こされ、ベースボール・マガジン社の『フィギュアスケートマガジン 2015-2016グランプリスペシャル』に掲載されております。
興味のある方はご確認ください。