ワインのグローバリゼーションを扱った映画MONDOVINOを久しぶりに観た。
パリにいる当時、映画館で観て結構面白かったので、キンシャサに来る直前にDVDを買っておいたものだ。
ワイン関係者のインタビュー映像の切り貼りで構成されているドキュメンタリー映画。
ハンディカムで撮影したらしく映像は終始揺れているので、映画館で観ていて目が疲れた記憶があるが、うちのテレビで観るとそんなには苦にならない。
DVDパッケージ
観てない人のために(・・・というかほとんどの人はこんなマニアックな映画は観ていないと思うし、関心もないと思うけど、気が向いたら読んで下さい。)、主なポイントを説明すると次のような話。
1.カリフォルニアのモンダヴィという有名なワインメーカーが、世界中のブドウ畑を購入してワインビジネスを成功させている。
ここが、南仏ラングドックの小さな村のMas de Daumas Gassac(ラングドックワインが高く評価されるようになったパイオニア的ワイン)を買収して更に畑を拡大しようとしたが、その土地に合ったワインを造り続けたい造り手と、森林伐採とグローバリゼーションに反対する村長(当時フランス国内で唯一の共産党出身の村長)らが団結してこの買収に”Non”と言った。
モンダヴィ親子は、「我々は世界中でワイン造りに成功しており、南フランスへの進出が失敗したのは、偏屈なフランス人が我々の成功に嫉妬したせいだ、我々が投資すれば地域も潤ったはずなのに全く馬鹿げている、我々はどこに行ってもワイン造りを成功させる自信がある、将来、月でさえワイン造りを成功させてみせる。」なんてことを口にする。
(経済的な利益以外のことを大切にする人々と、自己の野心的な願望にしか関心のない人々との滑稽なまでに噛み合わない議論。)
2.ワインに100点満点で点数を付ける評価方法で一世を風靡したアメリカのワイン評論家ロバート・パーカー。
彼が、あまり評価してこなかったワインがある時一気に90点以上の高得点を取り、「シンデレラ・ワイン」ともてはやされ、値段が2倍3倍につり上がる。
その裏には、ミッシェル・ロランという仏人ワインアドバイザー(世界11カ国に100以上の顧客あり)が、パーカーから高得点が得られるように、その土地の特徴を無視して、色が濃く力強いワインを造るようにアドバイスしているという事実。
しかも、パーカーとロランは、なんと“お友達”!
3.ブルゴーニュの造り手ユベール・モンティーユ氏と息子のエチエンヌ氏の話。
親が作るワインは厳格(rigoureux)で現代の消費性向に合わないと言って、今すぐ飲んで美味しいワインを志向していく息子達。
その息子達の姿を見て、ユベール親父が、「自分のワインは15年後に飲むために造っている、お前たちはCompetent(ワインを売るという意味で有能)だが、pas serieux(ワインを造るという意味で真面目でない)」と苦言を呈す。
(個人的にはこの場面が最も切なかった。)
4.アルゼンチンの貧しい農村で、ロランの教えを請い、いきなりパーカーから91点を得て貧困から脱却した造り手と、そのすぐ近所の造り手で土着の葡萄で美味しいワインを作っているが貧困に喘いでいる農民とを対照的に描いた場面もある。
ここでは、そこまですべてインタビューに答える登場人物だけにコメントさせていたが、さすがに感情移入したのか、監督自らが貧困農民が造る土着ワインを飲んで「すごく美味い」とコメントしている。
視点が一方的で偏っていると批判されそうな映画だが、ワインの世界で起こった現実の一面をうまく捉えていて興味深い。
“ワインのグローバリゼーションは是か非か?”
言い換えると、グローバリゼーションの結果、ワインの味が皆が美味しいと思う最大公約数的な味に世界的に均一化していくのは良いことか?
各国、各地域のそれぞれの文化ともいえるワイン造りを、ビジネスの理論で画一化してしまっていいのか?
この映画が扱っているテーマは、ワイン愛好家にとって興味の尽きない主題である。
この映画が実際にワインを造る人々にどれくらいの影響を与えたかを私は知らない。
でも、フランスでその土地の特徴を出すために伝統的な造り方をしていると強調する造り手が増えているような気がするし、昨今の流行であるビオワインも、健康に害のある物質を極力使用せず、土地の特徴を出すことを志向しているという意味でこの流れに沿うものといえるだろう。
そして、ワインを飲むときにパーカーの点数がどうのこうのという議論をあまり聞かなくなったのは、私が最果ての地キンシャサにいるという理由だけではおそらくないだろう。(M)
パリにいる当時、映画館で観て結構面白かったので、キンシャサに来る直前にDVDを買っておいたものだ。
ワイン関係者のインタビュー映像の切り貼りで構成されているドキュメンタリー映画。
ハンディカムで撮影したらしく映像は終始揺れているので、映画館で観ていて目が疲れた記憶があるが、うちのテレビで観るとそんなには苦にならない。
DVDパッケージ観てない人のために(・・・というかほとんどの人はこんなマニアックな映画は観ていないと思うし、関心もないと思うけど、気が向いたら読んで下さい。)、主なポイントを説明すると次のような話。
1.カリフォルニアのモンダヴィという有名なワインメーカーが、世界中のブドウ畑を購入してワインビジネスを成功させている。
ここが、南仏ラングドックの小さな村のMas de Daumas Gassac(ラングドックワインが高く評価されるようになったパイオニア的ワイン)を買収して更に畑を拡大しようとしたが、その土地に合ったワインを造り続けたい造り手と、森林伐採とグローバリゼーションに反対する村長(当時フランス国内で唯一の共産党出身の村長)らが団結してこの買収に”Non”と言った。
モンダヴィ親子は、「我々は世界中でワイン造りに成功しており、南フランスへの進出が失敗したのは、偏屈なフランス人が我々の成功に嫉妬したせいだ、我々が投資すれば地域も潤ったはずなのに全く馬鹿げている、我々はどこに行ってもワイン造りを成功させる自信がある、将来、月でさえワイン造りを成功させてみせる。」なんてことを口にする。
(経済的な利益以外のことを大切にする人々と、自己の野心的な願望にしか関心のない人々との滑稽なまでに噛み合わない議論。)
2.ワインに100点満点で点数を付ける評価方法で一世を風靡したアメリカのワイン評論家ロバート・パーカー。
彼が、あまり評価してこなかったワインがある時一気に90点以上の高得点を取り、「シンデレラ・ワイン」ともてはやされ、値段が2倍3倍につり上がる。
その裏には、ミッシェル・ロランという仏人ワインアドバイザー(世界11カ国に100以上の顧客あり)が、パーカーから高得点が得られるように、その土地の特徴を無視して、色が濃く力強いワインを造るようにアドバイスしているという事実。
しかも、パーカーとロランは、なんと“お友達”!
3.ブルゴーニュの造り手ユベール・モンティーユ氏と息子のエチエンヌ氏の話。
親が作るワインは厳格(rigoureux)で現代の消費性向に合わないと言って、今すぐ飲んで美味しいワインを志向していく息子達。
その息子達の姿を見て、ユベール親父が、「自分のワインは15年後に飲むために造っている、お前たちはCompetent(ワインを売るという意味で有能)だが、pas serieux(ワインを造るという意味で真面目でない)」と苦言を呈す。
(個人的にはこの場面が最も切なかった。)
4.アルゼンチンの貧しい農村で、ロランの教えを請い、いきなりパーカーから91点を得て貧困から脱却した造り手と、そのすぐ近所の造り手で土着の葡萄で美味しいワインを作っているが貧困に喘いでいる農民とを対照的に描いた場面もある。
ここでは、そこまですべてインタビューに答える登場人物だけにコメントさせていたが、さすがに感情移入したのか、監督自らが貧困農民が造る土着ワインを飲んで「すごく美味い」とコメントしている。
視点が一方的で偏っていると批判されそうな映画だが、ワインの世界で起こった現実の一面をうまく捉えていて興味深い。
“ワインのグローバリゼーションは是か非か?”
言い換えると、グローバリゼーションの結果、ワインの味が皆が美味しいと思う最大公約数的な味に世界的に均一化していくのは良いことか?
各国、各地域のそれぞれの文化ともいえるワイン造りを、ビジネスの理論で画一化してしまっていいのか?
この映画が扱っているテーマは、ワイン愛好家にとって興味の尽きない主題である。
この映画が実際にワインを造る人々にどれくらいの影響を与えたかを私は知らない。
でも、フランスでその土地の特徴を出すために伝統的な造り方をしていると強調する造り手が増えているような気がするし、昨今の流行であるビオワインも、健康に害のある物質を極力使用せず、土地の特徴を出すことを志向しているという意味でこの流れに沿うものといえるだろう。
そして、ワインを飲むときにパーカーの点数がどうのこうのという議論をあまり聞かなくなったのは、私が最果ての地キンシャサにいるという理由だけではおそらくないだろう。(M)