前投稿に、
宮若市の追い出し猫の話を
少し書かせていただいた。
これはあくまでも逸話であり、
いわばフィクションであると言うべきものである。
この話に登場する大ネズミとは、
さもすれば人より大きいもののような表現をなされており、
ゆえに猫たちが数百匹の単位で
死闘を繰り返したというものである。

ここで着目していただきたい点がある。

それは、猫たちが、己の身を犠牲にしても
住職や集落の人々のために戦ったという点である。

それを言い換えれば
自己犠牲と受け止めることもできる。

この自己犠牲という言葉を、
場合によっては、
滅私奉公という言葉に置き換えることもできる。

このような考え方、
もしくはこの日本という国に生まれた命の習性が
本質として具わっていると見ることはできないだろうか。

ここで、少し違いはあるが、
追い出し猫と同様の現象が
、この日本の自然界にも存在している。

それは、ニホンミツバチである。

現在、この国では、
ちみつの生産を大半担っているのは
セイヨウミツバチという種類で、
ニホンミツバチとは異なる種類である。

しかし、現在でも
一部の地域や一部の養蜂家によって
ニホンミツバチのはちみつも生産されている。

この福岡でも、住吉神社の周辺で
ニホンミツバチを育てている人も存在し、
私の知人の話によると
長崎県対馬でもニホンミツバチからとれる
はちみつを生産しているとのことであった。

実際に対馬産のはちみつを少しいただいたが、
大変美味しいもので、
人にとって非常に良いものだとも聞いたが、
生産量が少なくかなり高価なものだと聞き、
手が出ないと思っている。

本題に戻るが、
ニホンミツバチとセイヨウミツバチは、
かなり異なる習性を持っている。

ニホンミツバチは、
セイヨウミツバチに比べて少し小さく、
故に蜜のとれる量も少ないということである。

しかし、
この小さなミツバチたちは非常に勇猛果敢で、
不屈の精神を持っているようだ。

ミツバチたちの天敵は、スズメバチであり、
特にオオスズメバチなどは凶暴で、
ミツバチたちを餌としている。

そのため、
オオスズメバチが、ミツバチの巣を発見すると
巣に攻撃をかけ、強い顎で巣に穴をあけ中に入り、
蜂たちの幼虫などを食い荒らしてしまうそうだ。

この習性は、セイヨウミツバチにとっても、
同じように天敵であり、
セイヨウミツバチたちはなす術を持っていないようで、
一度攻撃されると防御する方法を持たず、
場合によっては全滅となるようだ。

これに対して、
ニホンミツバチたちは、
オオスズメバチであったとしても防衛策を持っており、
場合によってはオオスズメバチですら
殺してしまうほど徹底的な攻撃を加える。

その攻撃は、スズメバチの体温に関係するようで、
体感温度が38度を超えると
スズメバチは生存できないようで、
そのことを理解しているかのように
ニホンミツバチは
大群でオオスズメバチに襲い掛かり、
体に取りつき、多くの蜂たちが羽を動かし、
自らの体温を含めて
オオスズメバチの生存限界を超える
状態をつくりだすということで撃退してしまう。

ただし、その攻撃に参加した蜂たちは、
ほとんど寿命に近くなり、
自らも死を迎えるという
非常に無残な結果であるとも言うことができる。

特に、この攻撃に参加する蜂は、
いわば年老いた蜂たちで、
老い先短いような蜂たちが主体となって
このような攻撃をかけているということで、
まさしく滅私奉公といえるのではないか。

このように撃退して巣を守り、
種の継続をはかるというニホンミツバチ特有の習性は、
この日本に生息する種類のミツバチの持つ習性だとすれば、
この日本という地に生を得るものが
同様の習性を持ち得ていると見ることができないだろうか、
追い出し猫もしかり、
またニホンミツバチもしかりであるように
我々日本人も同様の思考を大切にしてきたと
見ることができるのではないだろうか。
それが滅私奉公という言葉に表れているように思えてならない。

されど、現代人というものを見ると
果たして滅私奉公などという言葉が現存しているか
非常に疑問に思えてならない。

今日、メディアに扱われている
さまざまなニュースを見る限り、
日本人というものはどこへ行ってしまったのだろうか。

ミツバチたちは希少になったとしても、
ニホンミツバチとしての習性を守っているにもかかわらず、
現代日本人は、やはり西洋化してしまったと見るべきか
嘆かわしいばかりである。

日本のアイデンティティは、各所に存在する