インドネシアは優れた伝統文化を有する古い文化の国である。 しかし『インドネシア文化』が国家としてのインドネシアの成立によって初めて存在しうるようになったという意味では文化の歴史は始まったばかりである。


インドネシア文化の基盤となるインドネシア人の価値観は①伝統文化、②イスラム教、③西洋文化の3つの文化要素に分解しうるであろう。


【1.伝統文化】各民族の伝統の文化は「多様性の中の統一として尊重されている。ゴトン・ロヨン のような伝統価値の近代政治システムヘの折り込みさえ行われている。 インドネシア人となってもジャワ人はジャワの伝統文化に拘束されるように、各民族は古来から引き継いできた文化を誇り高く維持するであろう。


【2.イスラム教】宗教はナショナルアイデンティティにとって微妙な存在であった。これまでのインドネシア文化の成立においてイスラム教の影は薄い。 どちらかというと伝統派と西欧派の連合勢力に押されて、あるいは両者の競合関係の中で宗教はアウトサイダー的立場に置かれた感がある。 しかし宗教はぺ一スとして潜在
しているので表面的に目立たないだけであろう。


【3.西洋文化】インドネシアという民族国家の概念自身が西洋文化の産物である。 植民地時代から西洋文化がインテリに与えた影響は大きい。 植民地という不幸な歴史も西洋文化を吸収する一つの手段であったという評価もありうる。 最もアクティプな要素として別項によることとしたい。


この3つの文化価値観は対立するものではない。 多かれ、少なかれインドネシア人はこの3要素のバランスの上にある。 


例えばスカルノ前大統領 のように一人で3要素を均等に兼ね備える人もいる。 現代のインドネシアを指導する勢力の価値観をどの要素が顕著であるかという程度の問題であるにしてもあえて大別すると以下のようになろうか。


①の伝統文化を代表するのは国軍

②を代表するのは宗教勢力

③の西洋文化を代表するのは大学を卒業したインテリ、テクノクラートのエリート層になろう。


つい先日の27日に死去したスハルト大統領 は特に①の国軍を中核とした現代インドネシア文化を創設したインドネシア人と言えるかも知れない。 その意義や真価は今後の評価を待たねばなるまい。


ワールド悠遊クラブ