じわじわと
カザフの英雄、デニス・テン選手のまさかの訃報。
テレビでニュースを見たとき、思わず、「嘘!」と声が出ました。
すぐにネットで情報を探し、誤報かと思いましたが、どうやら誤報ではなく…。
事件の経緯が分かるにつれ、理不尽としかいいようがなく…。
ジュニアとシニアを掛け持ちしてた頃からずっと見てきた選手。
ベテランになるにつれ、怪我には苦しんでいたけど、ぐっと引き込んでくれる、オーラのあるノーブルなスケーターに。
いいときのテンくんは、まるで皇子か殿下のような気品のあるスケートに、惹き込まれるステップに魅了されました。
絵や音楽、芸術性に優れた才能ある、コメントからも知性を感じる紳士な選手。
カザフのために尽力し、数年前からカザフでショーも開催していたし、今年もショーを行って、25歳になったばかり。
そこでまさかの事件。
ミラーのために、しかもスケーターの大切な足を刺されて。
日がたつにつれ、いろんな選手やスケート関係者のコメントが溢れていて、カザフでの様子が伝わってくる中、とても人から愛された人なんだなとその人柄がしのばれると共に、少しずつ、少しずつ、本当の事なんだなとじわじわ感じ始めました。
でも実感はないのですけどね。
認識はし始めたというか。
本人と面識のないフィギュアファンですらすごい衝撃なのに、ましてや直接親交のあるスケーターや関係者、ご家族や友人はどんなにショックだったのか…。
テンくんが、以前、子供の頃の事を語っていたなかに、「母に何枚も何枚も服を重ねて着させられ、僕はキャベツみたいになってリンクで滑っていた」みたいなコメントがあったのですが、それが自分には印象に残っていて。
ちっちゃいテンくんが風邪を引かないように、いっぱい着せてリンクに送り出すお母様の温かい愛情と、小さいテンくんの微笑ましい姿が思い浮かんで、このエピソードが素敵で好きだったんです。
それをふと思い出して、小さな頃から大切に育ててきた息子を理不尽に奪われたお母様やご家族のことを思うと、胸がつまりました。
こんなに母国のために頑張っている人が、母国の人間によって命を落とすなんて。
選手としてはもちろん、引退後も素晴らしい可能性を秘めた人。
フィギュア界にとっても、カザフにとっても大きすぎる損失。
カザフの英雄だとは知っていたけど、母国では喪に服して白黒テレビになったり、お葬式の様子などが伝わるにつれ、想像以上に母国で大きな存在だったんだなと知りました。
犯人はすでに捕まっていて、あとはどう裁かれるか。
カザフの法律がどうなのか分からないのでどんな罰が与えられるのかは分からないけど、刑法上の償いがすんだととしても、仮に命をもってしても、償いきれるものではない。
テンくんは一人しかいないから。
悔しいですが、悲しいですが、心よりご冥福をお祈りいたします。