ショートショート5話 | minimumanti

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minimum+anti 小劇場発 ハリウッド行

人の多い街は嫌いだ。
この街は人が多くて嫌いだった。
初めてのデートもこの街だった。
何も、こんな人の多い街でデートじゃなくてもいいだろう。そう思った。
みんなも何故わざわざこんな人の多い街にやって来るのだろう?バカかよ。そう思った。
同時に、僕もその内の一人なのだと気付いて溜め息が出た。
お互いの家の中間の街だから。
前に一度だけ聞いた時彼女はそう答えた。
だからこの街に来ることが増えた。
いつの間にかバカの新人から、バカのベテラン。バカの筆頭に変わった。
休みの日にわざわざ人の多い街行くなんて。から
休みの日にあの娘に会う場所がたまたま人の多い街に。へと頭の信号が変わった頃からこの街に来る事への苦痛が無くなった。
この街とは別の人の多い街へ行くと、あの娘の事を思い出して幸せな気持ちになった。
ホンの5分や10分しか会えなくてもこの街にやって来ることが多くなってきた。
人の多い街が好きになった。
人の少ない街も元々好きだ。
実家からこの街まで新幹線で約三時間。
ようやく僕もこの街で生きていけそうだ。
どこにでもある平凡な別れ。
自分にとっては地球誕生からの歴史上最大の悲劇。
お互いに預けてた物を返すための約束。
5分のためにこの街に行く事が億劫で。
この街とは別の人の多い街へ行くと、あの娘の事を思い出して辛い気持ちになった。
元々好きだった人の少ない街も自分の孤独を余計に強調するようで嫌いになった。
でも、この街はあの娘の事を思い出す。
だから、
人の多い街は嫌いだ。