なんとなく過ごすうちに、こんな生活もありなのかなと思えてきた。


子供の成長以外の楽しみはないものの、夫からの暴言もないし、たぶん今は好きな人もいなさそう。


このまま何事もなく生涯を終えられたらと思っていた。


そんなある日。

息子が通う保育所の運動会が開催された。


夫は何日も前からとても楽しみにしていた。

クローゼットから取り出したのは長い望遠レンズがついた高そうなカメラ。

こんなの持ってたっけ?


夫からこんな質問を受けた。


夫「オマエ、ママ友はいるの?」


私「会えば挨拶するくらいで仲良い人はいないよ。」


夫「ダメだよ、息子のためにちゃんとコミュニティは必要だよ。」


私「みんな働いてるからね。送迎する時くらいしか会わないから。」


夫「息子のために頑張れ。」


私「うん、分かったよ。」


夫はいつも以上にあちこちで保護者に挨拶していた。

良かったら写真撮りますよとカメラを向けていた。


へぇ、こうやって連絡先を交換するんだ。

でも私は親しくなってから交換したい。

まぁ、夫には夫のやり方があるのだろう。


息子の発表が始まった。

可愛い。思わず涙が出てきた。

いつの間にこんなことができるようになったのだろう。

先生、いつも有難うございます。


夫はどんな顔をしてるのかな?

泣いてたら面白いな。


でも


でもね


夫は年長さんの可愛い女の子にカメラを向けていた。


ふぅ‥‥