土曜日に奥様がこちらに来ると連絡が来た。
本当に呼んだんだ。
ファミレスで待ち合わせすることになった。
私が店に入ると奥様らしき人がいた。
カチッとしたスーツ姿。
いかにも仕事ができそうな美人だ。
ここでボイレコをONにした。
えっと‥‥謝った方がいいのかな。
私「知らなかったとは言え、ご主人のこと、申し訳ありませんでした。」
奥「いえ。騙したのはうちの主人の方です。こちらこそ申し訳ありませんでした。」
ここで奥様がご自身の気持ちを話してくれた。
ここ何年ずっと口聞かないくらい不仲だった。
年が離れているせいか価値観が合わなかった。
離婚しようと思っていたら単身赴任になり距離を置けたので有耶無耶になっていた。
好きな人ができたから別れて欲しいと言われた。
私もその方がいいと思った。
近日中に離婚届を出す予定。
どうかあの人と幸せになってください。
うーん‥‥なんだろう、この違和感。
本心で語ってるようには思えない。
渡されたシナリオを暗記して言わされてるみたいだ。
もしかしたら、この人は雇われた役者さんなの?
確認してみた。
私「お子さんお2人いますよね?写真はありますか?」
奥「あ、はい。ちょっと待ってください。」
スマホをスクロールし、3人で写ってる写真を見せてくれた。
うん、間違いない。
私が勝手に甥っ子姪っ子だと勘違いしたあの子達だ。
私「離婚してお子さん達は大丈夫なんですか?」
奥「大丈夫です。そんなに懐いてませんから。」
‥‥嘘だ。
私「でも夏休みに会いに来てましたよね?」
奥「それは犬に会いたかったからです。」
私「そうですか。離婚したら会えなくなりますね。」
奥「はい。だから犬を買ってもらう約束をしてました。だから大丈夫です。」
犬以下なのか。
私「分かりました。今日はわざわざお越しいただき有難うございました。」
深々と一礼し、奥様は帰って行った。