minima-ausのブログ

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キャンディ・キャンディ2次小説にハマっています。

Mary33086941 作、キャンディ・キャンディ海外2次小説「Hoy tengo ganas de ti (Today I want you)」を読み終えました。

 

[Albert fic] He longed for her and at the same time was unable to dare to conquer her, when at last he takes a risk it is too late and he will have to see her married to ....

 

Hoy tengo ganas de ti - Capitulo 1 - Wattpad

 

 現在進行中で、42章まで上がっているアルバートさん側のお話です。去年から上がってきた割と最近のお話らしいです。

オリジナル言語はスペイン語。日本語、英語訳でも読めました。ぜひ、ご本人のサイトから読んで下さいね。

誤字、脱字、意味の分からない文章があるかもしれませんが、見逃して下さい。

「ですます」「だ・である」調が混ざっています。

 

 毎回の様に、スペイン語からの訳は、「彼」と「彼女」が反対に訳されています。否定されている部分が肯定の文になっていたり、誰の言っているセリフなのか、どちら(誰)がその心情を言っている文章なのかが分かりにくく、読み手を惑わせますが(私の読解能力がないのか?)、全体の流れから判断をする、私の脳の訓練になります。

 

 このお話では、アルバートさんは双子です。テリィの双子、キャンディの双子の設定のお話は、読んだ事がありますが、アルバートさんが双子の設定の話は初めてなので興味深かったです。

 キャンディを見守り、助けている温厚な、旅行好きなアルバートさんキャラの兄アルバートと、アードレー家総長としてビジネスマンとして持つであろう冷徹なキャラ、弟ウィリアム(総長ではありませんが)と、キャンディを巡るお話でした。訳の中で、「兄」と「弟」が良く逆になっていたので、読む時に注意が必要です。

 

 ローズマリーが姉として生きており、アルバートは、臆病のため、未来をまだ約束できないためにキャンディを置いて身を隠した(旅に出る)。その彼女の心の空洞に入り込むウィリアムは、彼女と結婚して兄に大きなダメージを与えて彼が苦しむ事を楽しむ。キャンディの結婚で、苦悩するアルバートにパティが近寄り、忍耐強く何年も傍にいて結婚するが、彼は彼女の思いに応える事が出来ない。アニーは暗い野心家で、友人二人に言葉の毒を盛り翻弄させる。

 キャンディは、本来のキャラとは違って、弱さを感じさせるキャラ。私がこの話の前に読んだ2次小説の話の、テリィのセリフで、上流社会の女性に求められる「美しく、でも黙れ。」的なキャラだと思いました。

 このお話の中では、テリィは、ある章の1・2行しか出てきませんでした。今の所…今後は分かりませんが。

各章で、夫々の登場人物の視点から、語られています。

 

9章のコメント欄にあった読者Fleckle-Candyさんのコメントを紹介。

I have read this story up until this chapter and to be honestly all these people are rising my blood pressure. 
I like your writing. And the idea of Albert having twin brother with opposite character. I also find that changing of the Narrators in every chapters is also very interesting. 

But honestly, this Albert-Candy-William thing makes me frustrated. 
They simply caused their own messy situation. 
William is evil, a cruel manipulator, a man with extreme childhood trauma ( bcos apparently their parents and family obviously treated the twin differently), but this painful situation wouldn’t have happened if younger Albert had been more serious about his life. How could he been lost in contact with Candy for a year in this phone and internet era? 
And Candy, she was weak here. If she loved Albert that much she would wait for a year. She lived in present time, a lot of things and distractions can be done to pass the time. How could she be so swayed by William’s promises. 
Like it or not, the torment in William is part of Candy’s fault. 
She accepted him but refused his right. I was amazed that william still had a heart not to force her to be intimate with him after all this time. Candy did nothing but fueling more hatred for William toward Albert with her rejection.

 

 

第1章 キャンディと弟・ウィリアムの結婚式のシーンが始まり、彼女が「誓います」と言った時点でアルバートの心を二つに裂いた。一年前に、アルバートはすべてを放棄して旅に出るとウィリアムに言った。「キャンディは?」と問うウィリアムに、アルバートは、「戻ってきたら彼女に僕の妻になって欲しいと申し込むよ。思惑も、駆け引きもなく、プレッシャーもなく、頭をクリアにしてきてから。」「なら行ったらいい。戻って来た時の君の顔を見るのが待ち遠しいよ」といたずらっぽい笑みを浮かべて言うウィリアム。アルバートが戻って来たら、キャンディの結婚式に出席していた。

 数年後…アルバートは病室で目を覚ました。聞き覚えのある声、匂い、その人の手の感触で夢だと思っていたが、現実に彼の前にいたキャンディ。その後ろに義兄ジョルジュと姉のローズマリーがいた。ローズマリーは冷たくキャンディに当たるが、アルバートがそれを制す。ジョルジュに医者を呼びに行って欲しいと言い。アルバートの意図を汲み、彼は妻を病室から連れ出した。廊下でローズマリーは「あの子にあそこにいるのを許すなんて理解できない。彼女が彼のうつと孤独の原因なのに。」と怒りを口にするが、ジョルジュは、「彼女だけのせいではないだろう?ウィリアムの、そして意志を明確にしなかったアルバートのせいでもあるよ。」と妻を諭す。

 

第2章、パティが病院の廊下でローズマリーとジョルジュを見掛けて、何が起こったのかを聞く。ローズマリーが彼女に説明し、アルバートには休養が必要だと彼女を諭す。安心したパティは、今晩彼と一緒に居ると言った。ローズマリーはキャンディの事を言うべきかどうか迷った挙句言わずにいた。パティが角を曲がって病室へ向かうと、そこから出てきたキャンディと出くわす。二人は一瞬沈黙になり、キャンディから挨拶をする。パティは彼女がアルバートにしてくれた事に感謝の言葉を述べ、彼女に「ウィリアムにも何が起こったのか言うべきだと思わない?」と忠告する。

 パティが病室に入ると、アルバートは眠っていなかった。パティが心配した旨を伝えるが、アルバートは彼女に(別れ)を伝えたはずだと冷たく、鋭利な声で言って、彼女は眉をひそめた。心が傷付けられた…「いつ?あなたはここ数週間私とまともに話していないわ。まるで私を、あなたの人生を邪魔するモノの様に扱った。」と言った。アルバートは「すまない。」と言うが、それは別れを言っている様だ。パティは彼にキスをするが、彼は動かない。何も言わない。微笑まない。彼はまだ考えに耽っていて、静かな渦に巻き込まれていた。パティは、常に親切で、控えめな存在だった。キャンディの結婚式の後、彼が静かな深淵に落ち込んでいた時に、そこに居た人。最初は友達で、時々アードレーの行事にコンパニオンとして同行し、軽く話し、重要な話はしない人だった。突然、彼の気が付かない内に、彼の空虚を満たした。キャンディが去り、彼は意気地なしの様に、戦わなかった。彼女を探す事も、機会も試さなかった。パティは常にそこに居た。彼女は彼にプロポーズをし、彼はそれを受け入れた。彼はそれを惰性で、喜びもなく、先へ進もうという考えもなく受け入れたのだ。でも、深い所で「これを利用しよう」と思っていたと知っている。だが、彼女の目を見ると、緑ではなく、彼女が触ると、別の誰かを思い出す。キャンディ。その傷は癒える事が無い。

パティは「彼はキャンディの事を考えている。」と思った。嫉妬の感情が胸を突き刺した。これは初めてではなかった。最後でもないと分かっている。数年前…ステアを失くして泣いていた頃、アニーが「ステアはいつもあなたと一緒に居たわけではないわ。彼は一時期キャンディととても近かった。志願した後彼女にだけ別れを告げたのよ。」とパティに言った。「キャンディは、誰の心も掴む術を知っているわ。アンソニー、ウィル、そしてアルバートも?ステアは本当にあなたと一緒だったの?」それ以来彼女はキャンディを違った目で見る様になった。疑いの目で。疑いの目で、まるで金髪の自然な優しさの裏に、すべての男性が避けられない致命的な磁石が隠されているかの様に。それ以来、彼女はキャンディと距離を置く様になった。キャンディの結婚式までは。そしてアルバートは壊れた男だった。食べず、眠らず、ずっとオフィスに閉じ籠っていて、影の様だった。

 ローズマリーがパティに一緒に過ごす様に招待してくれた。パティは受け入れ、ドアが開くと思われた。彼女はそれを超え、少しづつ、理解し、傍にいて耳を傾け、彼女の心がもはや同情と愛を区別しなくなるまで。「もう誰にも奪わせないわ。」と彼女は自分に誓った。

 彼女の指がアルバートに触れると、彼は現実に引き戻された。「休んで。」と彼女が言い、彼は何も言わなかった。時には沈黙が快適な嘘であり、そして最も残酷だと知っていた。

 

第3章 キャンディは病院から離れて歩いていた。彼女の頭はグルグルと回って居た。小さな部屋でアルバートと話していた時は、平穏の様なものを感じた。彼らは昔の様に軽い会話を交わした。しかし、その温かさは、病室を出てパティに出くわした瞬間に突然消えた。かつての友人が微笑んだ表情が、彼女の警戒心を解いた。直接的な恨みも、厳しい言葉もなかった。しかし、彼女の冷たく感謝する口調には何かがあり、見えない境界線を越えてしまった様な気分になった。「私は何をしているのだろう?」と重い気持ちになった。ウィリアムは彼女に何も尋ねなかった。

 タクシーに乗り込み家に戻ると、家は暗闇に包まれていた。リビングルームの明かりがウィリアムの顔を照らしていた。彼はお気に入りのアームチェアにもたれ、新聞を読んでいた。時刻は11時15分を示していた。

 キャンディはそっと靴を脱いで、リビングルームに入り、勇気を絞ろうとしていた。アルバートの事を話さなければならなかった。敬意を持って。でも、彼の方が早いかった。「遅いよ。」とウィリアムが言い、「病院にいたの。アルバートが発作を起こしたから。今は大丈夫ですが、深刻な事がありました。」とキャンディ。彼は言葉など気にしていない様だった。「知っているよ。ローズマリーから数時間前にメッセージが来た。」彼女は彼を見つめ、「行くつもりは無かったの?」と信じられないという表情を隠さなかった。ウィリアムはいら立ちを隠せなかった。「もう何時間も経っていた。それに何のために?彼は既に危険を脱している。」「君の兄だよ、ウィリアム。」彼は突然新聞を置き、「キャンディ、大げさにしないで。それともまた看護婦ごっこを始めるつもり?」と言った。彼女は凍り付いた。その言葉は皮肉に偽装された一撃だった。「君は会いに行っていいのよ。それで彼を元気づけるかもしれない。」とキャンディ。彼は苦笑を浮かべ、肌が凍り付くような笑みを浮かべた。「何を言いているんだ?そんなに行きたければ、君が行け。慣れているだろう?」とウィリアム。キャンディはつばを飲み込んで、「それは習慣じゃないわ。ウィリアム。共感よ。」と言った。「それはそうだ。」

 彼は立ち上がり、階段の方に歩いて行った。キャンディの横を通ると、「服を着替えろ。君の匂いが気に入らない。消毒薬の匂いで吐き気がする。」と眉をひそめた。彼は彼女を部屋に残して二階へ上がった。キャンディの服は病院の匂いとアルバートの記憶がまだしみ込んでいた。彼女は何も言わず、しばらく自分の体を抱き締め、無意識にお腹に手をやった。空っぽのお腹。その記憶は目に見えない針で刺した。あれから数か月が経った。延滞、疑念、かすかな希望…残ったのは、痛み、出血、沈黙。何も残らなかった。ウィリアムは初日以降、その事について二度と口にしなかった。まるで鼓動できなかった小さな心臓が存在しなかった様に。キャンディは覚えていた。あの虚無感を感じるたびに…

 ウィリアムは違っていた。魅力的で、意志が強い。アルバートが何の理由も告げずに彼女の人生から姿を消した時から、彼は彼女の傍にいてくれた。ウィリアムはその心の空白を甘い言葉と、穏やかで、確かな愛の約束で埋めてくれる人だった。彼女がまだアルバートを待つかどうか迷っている時に、「キャンディ。君の心を必ず射止めるよ。君を幸せにするから。約束する。」という彼の言葉を最初は信じたかった。

 だが時が経つにつれて、ウィリアムは変わっていった。ロマンスは消え、笑顔は機械的になった。花は届かなくなり、優しい視線は無関心になった。「いつから彼は以前の様に私を見なくなったのだろう。そして、いつから私は彼がそうしてくれる事を期待しなくなったの?」とキャンディは思った。

 彼女はベッドの端に腰掛け、ランプを付けた。静寂がシーツの様に彼女にまとわりついていた。彼女はアルバートの事を考えていた。彼女が食事を勧めた時の、疲れているけれど、温かい瞳の輝きを。そして、久し振りに…彼女は別の場所にいたいと願った。他の腕の中。

 家の中は重苦しい静寂に包まれ、ほとんど耐え難い状態だった。わずかに残された暖かさを奪い去ろうとしているかの様だった。ウィリアムは明かりもつけずに階段を上がっている所だった。家は彼の精神を映り出す鏡の様だった。完璧に整然としている…そして冷たい。

 彼は書斎に入り、ドアを閉めて、デスクランプを付けた。彼が長年に渡って丹念に並べて来たもの…卒業証書、トロフィー、完璧に整列した本。彼はキャンディを見た。写真。若者の肖像。大学卒業式の彼とアルバート。二人ともトーガ姿で、満面の笑みを浮かべ、まるで永遠の忠誠を誓う兄弟の様だった。アルバートは本当に笑っていた。本物の笑顔で無邪気。一方、彼はもっと緊張していた。彼の笑顔は落ち着いていて、目はカメラの向こう側の何かを探している様だ。

 突然、毒の花の様に、彼の心にささやきが現れた。「よくもそんな事を?」アルバート。彼の完璧な兄。皆のお気に入り。理想主義。動物を助け、従業員とも友達の様に話す夢見るもの…一方で、ウィリアムは、勉強し、準備し、計画し、自分がふさわしい事を証明しようとしていた。「残ったのは僕で、すべて正しくやったんだ。君が自由に遊んで世界を旅している間に、責任を背負ったのは僕だ。」顎が引き締まった。「それでも、キャンディは彼を最初に愛していた。」彼は苦笑を漏らし、額縁をどさっとテーブルに置いた。

 彼が嫌いだった。物心がついた時からずっと彼を憎んでいた。子供の頃から、アルバートは笑い声、やさしさ、動物や木々への馬鹿げた情熱で、すべてを覆い隠す金髪の旋風だった。

 一方で、彼は模範的な息子だった。12歳の頃から、ビジネスの本を読み、夕食の時に背筋を伸ばして、どのクラブに行くべきか、どの人を喜ばせるべきかを知っている子だった。それでも、決して十分ではなかった。「アルバートは本当に高潔だ。」「彼にはカリスマがある。」と大人たちは口にしていた。ウィリアムはいつも黙って聞いていた。いつも彼の背景にいた。いつも日陰に。彼は子供の頃の光景を残酷なほど鮮明に思い出した。「私の人生は彼を中心に回って居た。今度は彼の分も欲しい。」と彼は思った。「彼の好きな物は全部手に入れるよ。もうあなたの名字も、会社での地位も把握している。そしてあなたの奥さん…たとえ彼女が私を、あなたを見る様に見なくても、問題じゃなかった。私のだ。それで、お前は正気を失った。一番気になる事は、努力すらしていない事。旅から帰って来て、病気になっても、それでも、彼女はあなたを見つめている。」彼の笑みが消えた。悲しみか苛立ちの影が彼の顔をよぎった。「今回は、アルバート、きみは勝てないよ。」

 

第4章 アルバートの視点

 無理をするべきではない、医者達は冷静に色々言ったが、こんなに無防備な自分を見るのに耐えられない。映る姿は疲れ切った男で、普段より青白く、目の下のクマは高級なスーツでも隠せなかった。それでも、ここに立って、何でもできるアルバートのフリをしようと思う。

 私の心の中で、同じ考えが回って居た。パティはいつ来てもいい。彼女はあの柔らかな笑顔、時には私を重くする無限の忍耐を持ってくれる。それがどれだけ彼女に借りがあるかを思い出させる。

 彼女は私が崩れ落ちる時、キャンディが不可能になり、胸が癒えない傷で焼かれた時にも傍にいた。パティは私を抱き締めてくれた。それでも、私が彼女に何を与えられるというのか?礼儀、優しい扱い、彼女が受けるべきもの決してはない。親密さ、情熱、献身。私はそれを誰かの為に取って置いて、今は自分の弱さから生まれた愛情をどう返せばいいのか分からない。

 突然知っている声がすぐに私の思考を遮った。「こんなに早く回復したとは知らなかったよ。」皮肉な口調に、振り向く前に血が凍りつく。ドア枠には、完璧な立ち振る舞いと、愛情よりも毒を隠した偽りの笑顔を浮かべているウィリアムがいる。

 予想していなかった。ある意味では。私は横目で彼を見、唇を固く結んだ。「君は僕の葬式の時だけ来ると思っていたよ。」とアルバート。彼は低く笑う。あの嘲笑は、私が良く知っている。「僕の事は知っているだろう?兄弟。ちょっと気になって。今どれだけ惨めなのか、自分の目で確かめたかったんだ。」拳をぎゅっと握る。彼について思っている事をすぐに吐き出せと告げているが、彼は自制していた。歯を食いしばる。「遠回しは止めろ。何が欲しい。」「私は好きではありません。私の妻がわざわざあなたに会いに来るのは好きではない。妻は家にいて、彼女の義理の兄を追いかけるべきではありません。」アルバートの息が止まった。キャンディ。いつも、キャンディ…

 アルバートは、今度は強く彼を見据えて「キャンディはただの女性じゃない。彼女は心から思いやりを送ります。もしそんなに気になるなら、私の気持ちを尊重しなかったのはあなただって事を思い出して。」と言った。ウィリアムは微笑み、吐き出した毒を楽しんでいるかの様に顔を傾ける。「私の事を自己中心的だというの?」彼は静かに笑い、「私のせいじゃない。彼女を疑いのままにし、一人で待たせた。チャンスはあったんだ。それを無駄にしたね。」彼は私の肩に手を置いた。「教えてくれ、自分のものになりえたものを失った気分はどうだ?」一瞬、彼を突き飛ばしたい、胸に溜まっていた怒りを吐き出したかった。

 それが起こる瞬間、第三者の声がした。「アルバート、あなたの荷物を持ってきたわよ。」パティの声。ドアの所で、小さなスーツケースを手に、その光景を察知した瞬間に凍り付くあの甘い表情をしていた。私の心臓は、彼女の為ではなく、ウィリアムの毒を誰かが突然切り落とした安堵感で高鳴った。

 ウィリアムの表情は一瞬で変わり、嘲笑から紳士へと変わる。「親愛なる義姉さん。アルバートを安心して手に委ねられると知って安堵したよ。」彼は彼女の手を取って、指にキスをしながら言った。彼は最後にもう一度アルバートを見て、勝利の光を目に宿し、身を引いた。

 パティはウィリアムが私に刺した短剣に気が付かず、優しく、スーツケースをベッドに置くために近づいた。私はかすかに微笑み、深呼吸をして普通を装う。しかし、内側は、嵐の海で、傷つき、怒りに満ちている。「自分のものになりえたものを失った気分はどう?」この質問が胸の中で燃えている。そして最悪なのは、答える必要がない事。分かっている。それが毎日辛い。

 

パティの視点

 ウィリアムが去ると、部屋の中には奇妙な空気が淀んだ。私は居心地が悪かった。私は彼をベッドに寝かせ、音を立てない様に気を付けたが、アルバートと私の間の沈黙は重すぎて無視できなかった。私は彼のほとんど閉ざされた表情を見ていた。しかめっ面の原因はウィリアムだろうか。聞いて良いのか分からない。私は唇を噛み、不安だったが、やっと勇気を出して聞いた。「アルバート、気分はどう?顔色が良くないわ。」彼は少しだけ顔を向け、その疲れた表情は、私を無防備にさせ、彼を抱き締めたかったが、同時に見えない壁を築いていた。「仕事を途中で止めるわけにはいかないって知っているだろう?」と彼はきっぱり言った。「ジョルジュは私の役割をカバーしようと最善を尽くしていますが、いつもそうとは限りません。仕事に戻らなくちゃ。」私は悲しそうに彼を見た。

 私は彼の苛立った顔を見た原因がウィリアムだったのかと彼に聞いたが、彼は黙っていた。彼の沈黙はどんな言葉より私を傷つけた。ついに彼は首をゆっくり横に振り、「服を持ってきてくれてありがとう。」と言い、私の額にキスをした。その行為は私に優しさと不安をもたらした。なぜ彼が本当の気持ちを避けている様に見えるのか?私は勇気を出して、「それで、一緒に帰ってくれる?」と一瞬希望を込めて聞いた。しかしアルバートが居心地悪そうに私を見て、「いや、違うよ。パティ。今の所、私は会社の近くのペントハウスに滞在しなければなりません。」「何?」「聞いて、パティ、スケジュールで迷惑を掛けたくないんだ。今は回復中で、チームが私に整理を頼みます。パートナー達は答えを待っている。これらをすべて解決すれば、必ず、報われる。」

 私は彼の目を見つめ、私が彼の最優先事項である事を確かめるやさしさの火花を探した。しかし、見つけたのは疲労だった。そしてもう一つ、傷つくもの。距離感。

 疲れていても、傍にいたい。私を傷つけたのは、あの絶え間ない仕事の言い訳で、彼は私との時間を共有しない言い訳を何でも探している様に見える事。でも私は自制した。「分かったわ。」と私はついに囁き、下を見た。しぶしぶ同意したが、内心は無力感で煮えたぎっていた。怖かったんだ。私の疑いは、彼の心の奥底でまだキャンディを忘れられないのではないのかと恐れていた。

 その時ジョルジュがいつもの通り完璧に、彼特有の落ち着きを持ってドアに現れた。「アルバートさん、準備は良いですか?」彼は丁寧に聞いた。アルバートは頷き、私の方を見た。「パティを屋敷に送るよ。それから僕とジョルジュは会社に戻る。」と彼は告げた。私は抵抗せずに受け入れたが、心の中では圧迫されていた。彼に連れて行って欲しかった。邪魔者の様に突き放して欲しくなかった。でも、何も言わなかった。

 一緒に部屋を出た時に、私は自分の中に何かが変わりつつある事に気が付いた。その不安の種、否定しようとした嫉妬の痛みが、少しづつ大きくなっていった。認めたくなかったが、その考えがずっと心に残った…もしアルバートがキャンディを愛し続けたら?

 

第5章 ローズマリーの視点

 アルバートが彼女の視線に気が付く数秒前に、私は彼女を目撃した。キャンディは廊下で立っていて、ウィリアムを待っていた。あの不安そうな表情を浮かべていた。私は直ぐに彼女の目に宿る輝きに気が付いた。彼女は私の弟に気が付き、近づきたい衝動と、今彼女が保たなければならない対面の葛藤に苦しんでいる様だ。私はそれを許す事が出来なかった。アルバートが経験した事を考えれば、そうは思わない。

 私は決然と一歩を踏み出し、彼女の進路にそっと身を置き、礼儀正しく、彼女に微笑んだ。「キャンディ、一緒にカフェに行かない?」親しげな声で彼女を誘った。本当の目的は、アルバートが彼女に気が付く前に、彼女を彼の視線から隠したかった。キャンディはためらった。彼女は「いいえ」と言おうとするかの様な唇をわずかに動かす様子から、それが分かった。しかし結局、失礼な印象を与えない様に、頷いた。

 私達は一緒に従業員の為に用意された食堂へ向かった。引き立てのコーヒーの香りが漂っていたが、私は楽しむ気にはなれなかった。私は答えが欲しかった。誤解を解きたかったのです。私達は窓際の席に着くと、私は時間を無駄にしなかった。「キャンディ、はっきり言うけれど、アルバートにもう二度と話しかけないで。」彼女の目を見て言った。彼女は驚き、辛うじて、カップを拾い上げた。まるで私の言葉が予想外だったように、信じられないという表情で「え?どうしてそんな事を言うの?」と戸惑いながら尋ねた。

 一瞬、あの頃の友情の記憶が私の心を重く圧した。彼女を大切に思っていた頃、彼女が誠実で優しさに満ちていた頃の事を思い出した。しかし、そのイメージは、弟の記憶によって打ち砕かれた。キャンディが弟と話す事も無く、理解する機会さえ与えずに、ウィリアムとの結婚に同意した事を知った弟の顔に浮かんだ苦痛の表情が。「もう十分損害を与えたからよ。ウィリアムと結婚した事を覚えている?その過程で、私の弟の心を傷つけたのよ。しかも、それを彼に言う勇気さえなかったなんて。」

 彼女は下を向き、一瞬答えようとしたかに見えた。しかし、しなかった。彼女は無理やり作った笑顔で、「そんなつもりじゃなかったんだ。」と呟いた。「意図的かどうかは別として、事実として、アルバートは今、妻がいるわ。パティは彼の世話をしている女性で、彼の傍にいる権利と義務を持っているの。キャンディ、あなたはただの義理の妹に過ぎないわ。それに、義理の妹が自分のものではない地位を奪おうとするのは、決して良い事ではないのよ。」私は彼女に理解させるために、きつい言い方をした。

 彼女は弱々しく、居心地悪そうに、頷いた。彼女の顔に浮かぶ緊張感、そして私に反論しない様に必死に努める様子が見て取れた。しかし、彼女の沈黙は私には不審に思えた。彼女はまだ彼を愛しているのだろうか?その誘惑に抗えなかったのだろうか?

 私はもっと明確に、もっと鋭く表現する事にした。「キャンディ、ウィリアムは今辛い時期を過ごしているのよ。」私は同情する様にトーンを落とした。「赤ちゃんを亡くしたのよ。そういう悲しみは一夜にして消えるものではないわ。あなたが傍にいて、支えて、心の平安を取り戻せる様に、手助けしてあげなくちゃ。気持ちの整理が出来れば、きっと以前の彼の戻るわ。」

 私は手を差し出して、彼女の指に私の指を重ねた。「彼にはあなたが必要なの。」キャンディは何か言いたげの様子で、唇をきゅっと引き締めた。彼女の瞳には、私には言葉で表せない何かが輝いていた。それは悲しみだろうか?罪悪感だろうか…それとも反抗心?結局彼女は静かに頷いて、「分かったわ。アルバートには会わないって約束するわ。」と言った。

 ほろ苦い勝利が私を包んだ。彼女を傷付けるのは決して喜ばしい事ではなかったが、アルバートが安らぎを得られる様に、そして、彼の人生が揺るがせられない様にする必要があった。私は静かにコーヒーを飲み干した。私の心の奥底では炎が燃え上がっていた。キャンディはアルバートから離れていなければならない。私の為でも、パティの為でもなく、アルバートは癒されるべきであり、影のない人生を送るのに値するからだ。

 

キャンディの視点

 私はカフェの椅子にしばらく座っていて、すでに冷めたコーヒーカップをぼんやり眺めていた。ローズマリーの言葉の残響が、まだ私の耳に響いていた。彼女にアルバートに二度と会わないと約束した。彼女はあまりに威厳を持って言ったので、私はちっぽけな人間に思え、罪悪館を感じた。彼女は正しかったことが一つあった。私のせいでアルバートがこれ以上苦しむのは嫌だという事。しかし私の心の中には、決して口に出せない声が響いていた。彼が先に去って行ったという事だ。何か月も音沙汰無しで、手紙もなく、何の釈明も無かった。彼の不在は私を途方に暮れさせ、空虚な気持ちにさせた。その孤独こそが、ウィリアムとの出会いになったのだ。彼は確固たる約束で、私の心を必ず射止めると断言した。

 彼女が前に進もうとしたのは、そんなに悪い事なのだろうか?表に出せない秘めた感情を抱え続けていたのは、彼女のわがままだったのだろうか?私は深呼吸をして、無理やり立ち上がった。

 ウィリアムは待っているに違いない。これ以上の口論を避けるためには、冷静を装うのが最善だった。建物に戻ると、予想通り、彼は柱にもたれて、優雅に電話をしていた。仕事の会話以外何も気にしていない様だった。 彼の立ち振る舞いは相変わらず堂々としていて、自身に満ち溢れていた。彼の外見には私は驚かない。彼の事を知っていたので、その下に、気まぐれな気分の変動を抱えた男がいる事を知っているからだ。私はそこに立ち、彼が気が付くのを待った。そして、彼が気が付くと、冷徹な手つきで電話を切った。「ちょうどあなたを探すために、誰かを送ろうとしていた所だったんだ。」と丁寧に彼は言った。「待っている間に、コーヒーを買いに行ったんです。」と言い訳を探した。ローズマリーと一緒だった事は言いたくなかった。兄弟間のいざこざの火種を作りたくなかった。もうこれ以上嵐が来て欲しくなかった。

 ウィリアムは私の言い訳を受け入れた様だ。または単に興味がなかっただけかもしれない。「イタリアンレストランを予約したよ。」と彼が親しみを込めた口調で言った。「昨日の事は大変だっただろう?素敵な夜を過ごす権利があると思うよ。」胸に圧迫感を感じた。それは彼の謝罪のやり方であり、私は決して必要としていない豪華なディナーや流行のバッグで、自分の感情的な爆発を償おうとしているのだと分かっていた。彼の怒りに向き合うより、彼の態度を受け入れた方がずっと楽だった。「準備は良いか?」と計算された手つきで彼女の頬を触る彼。私は頷いたが、内心では静かな不安に苛まれていた。

 彼は彼女の肩に腕を回し、独占欲に満ちた強い腕で私の腰を抱き、私を引き寄せた。私の耳元に掛かる息で「今日の午後、君はとても綺麗だよ。」と言った。私は身震いした。興奮からではなく、矛盾による震えだった。

 その親密さは、その緊張感は、私を感動させるはずだった。しかし、それは、ただウィリアムとアルバートが同じ顔をしているにも拘らず、まるで昼と夜の様に、正反対の人物だという事を私に思い出させたからだ。そして、その時、彼を見た。アルバート。遠くの方で、秘書達に付き添われて、書類を見せられながら、廊下を歩いていた。回復途中の彼の真剣な表情からは、抑制された静けさが漂い、私は深く心を打たれた。こんなに早く彼に会うとは思っていなかったし、こんなに真剣な表情の彼を見るなんて想像していなかった。

 彼の名を呼びたくなったが、ローズマリーとの約束を思い出した。彼女の言葉が棘で刺された様に、私の良心を突き刺した。だから私は目を逸らし、彼を無視する様に努めた。まるで、彼を裏切っただけでなく、自分自身を裏切った様に感じた。なぜなら、アルバートも、私に気が付いたからだ。彼は何も言わなかったが、遠くから彼の顔に何かがよぎった。それは、私には拒絶の様にしか見えない影だった。ウィリアムは何も気が付かなかった。あるいは、無関心を装っていたのかもしれない。彼は私の腰を強く抱きしめ、満面の笑みで、勝ち誇った様な表情をしていた。

 心の中では、頭を向けて、アルバートに目を見つめ、今まで口に出来なかった事を彼に伝えたいと、叫びが響いていた。しかし、彼の平和を守るという約束と義務にしがみ付く一方で、自分が私を沈黙の中に縛り付けていた。

 それを無視しなければならなかったのは、辛かったし、心が引き裂かれる様だった。私が背を向けたのは、アルバートだけでなく、私が今も感じている真実だった。

 

第6章 アルバートの視点

 私は奨励よりは早く会社に戻る事を主張していた。ジョルジュは私がまだ退院したばかりだと叱った。私はただ頷いた。なぜなら彼に私の本当の心を説明できなかったからだ。閉じ込められている事が肉体的な苦痛よりも、私を窒息させるという事だ。私は自分の気持ちを紛らわせ、彼女の事を逸らす必要があった。目を閉じるたびに彼女の顔が浮かんできたからだ。キャンディ。

 建物の中に入ると、廊下はいつもより騒がしく聞こえた。秘書達、出入りしているパートナー達。私は普通のフリをしていたが、内心はまだ疲労が重く残っていた。私はジョルジュの横を歩きながら、予定されている会議の要約を半分しか聞いていなかった。その時、彼女を見た。キャンディ。廊下の真ん中に立ち、まるで世界が止まった様だった。一瞬私はそれを疲れから来る幻覚かと思った。無意識の反射で一歩踏み出そうとした。その瞬間、彼女は視線を落とした。その単純な行動が、どんな言葉よりも、私に響いた。彼女は私を見ていたはずだが、私だと気が付かなかったのか。彼女が目を逸らす様子には何かがあった。それは無関心ではなく、意図的な拒絶だった。まさか彼女が私を避けるとは思わなかった。

 近づく前に、ウィリアムが来た。「兄さん」彼の腕はキャンディの腰に回され、まるで何かを所有しているかの様な自然の動きだった。彼が彼女の頬を撫で、まるで彼女が自分のものだと宣言している様なしぐさだった。ただ怒りが抑え込まれた炎の様に沸き上がるのを感じた。キャンディに対してじゃない。決して。ウィリアムに対して、彼が私に戦いに勝った事を証明したいという欲求に対して。彼を知っているから…その行為は優しさではない。それは憑依だった。それは私にとって直接的な挑戦だった。

 一方、キャンディは私の隣に居た頃の彼女とは違い、予想外の優しさで、私を驚かせてくれた女性ではなかった。ウィリアムが誇らし気に彼女を携え、私にしか読み取れない笑みを浮かべるのを見た。

 ジョルジュが私の沈黙に気が付き、「大丈夫か?」と聞いた。私は頷き、震える手をフォルダーで隠した。でも心の中では呪っていた。私は何年も前の臆病さを呪った。彼女を一人にして、果たせなかった未来の約束の決断を残した事を。

 その空間の中に、ウィリアムは甘い言葉と安定の約束で入り込んだ。そして今私はただの見物人に貶められた。キャンディが私の傍を通る時に、彼女の香りを感じた。繊細で、間違いのない匂い。彼女は顔を上げず、私に一瞥もくれなかった。

 理解しました。何かを満たしている。誰かと…誰かとはきっとローズマリーだろう。彼女は私を守りたい時は厳しくなる。そのやり方は、時に私の心を刺す様な痛みを感じました。

 私はオフィスへ歩き続けた。ただ一人で静かに、誰も私の内に抱えている傷を見られない様にしたかった。オフィスに鍵をかけ、目を閉じて机に持たれかかった。彼女の笑い声が突然蘇ってきた。私が彼女の患者だった時の、彼女の手の記憶。その隣には、満足そうに微笑みながら、それを彼女に押し付けているウィリアムの姿があった。私は唇を噛み、怒りと痛みを押さえた。なぜなら彼は知っていたから。ウィリアムは愛の為にキャンディを求めたわけではないと。彼女を探していたんだ。それは彼の勝ち方であり、私が全身全霊で愛した唯一のものを奪う方法だった。

 でも、例え、彼女が私から離れて行くのを見ても、私を見なくても、すべてが失われている様に見えても、私の中には確信が残っていた。私のキャンディへの愛は消えない。そして、帰って来て初めて、この残酷な沈黙と約束のゲームが永遠に続かないと理解した。

 オフィスは静まり返り、壁の時計の音だけが聞こえた。誰かがドアをノックしたが、私は答えなかった。数秒後、ドアが開く音がした。それをしたのはローズマリーだった。「アルバート」と彼女は愛情と非難が混じった口調で言った。「ここにいるのを知っていたわ。顔色が良くないわ。いつまで避け続けるつもり?」「何を避けているって?」とアルバートが聞きた。「パティ。」その名前はまるで衝撃の様に降りかかった。「アルバート。彼女は誰よりもあなたに辛抱強く接してくれました。彼女はあなたを待ち、世話をし、決してあなたを主張しません。でもやり過ぎない様に。愛は無尽蔵じゃないのよ。」彼女の言葉は鋭かった。間違っているからではなく、何年もその真実と戦っていたからだ。「頑張ってはいる…信じてくれ、努力をしているんだ。ただ‥‥私には難しい…」「難しい?パティを慰めの肩以上の存在として見るのがそんなに不可能なの?」彼女は少し声を荒げて、私の言葉を遮った。「あなたを待つ事に疲れて、彼女にあなたを失わせる気なの?」

 喉に塊が出来た。ローズマリーと口論したくなかった。彼女は家族の未来、正しい事、パティの忍耐について考えていた。でも私は過去の事を考えていた。私を苦しめる顏の事。「あなたは分かっていない。それは意思の欠如ではなくて…ただ…」私は自分を縛っているものに付いて言えなかった。キャンディ、いつもキャンディだ。私は机を握り締め、必然的に記憶が何年も前のあの旅へと引き戻された。

 スコットランドの、山と湖に囲まれた人里離れた別荘。ローズマリーは彼らの新婚旅行の完璧な休暇を計画した。新しい環境が「氷を破る」助けになると言い、良いスタートを切る助けになると言った。

 タオルを腰に巻いて浴室から出てきた時、そこにパティがいた。私を待っている。緊張して立っていた。彼女は白いレースのガウンを着ていて、ローズマリーからの贈り物だと分かった。「あなたは気に入った?」と彼女が聞き、私は頷いた。笑顔を作ろうとしたが、自分の心臓は、奇妙な重さで高鳴っていた。「パティ、あなたは美しいよ。」彼女を不快にさせたくなかった。雰囲気を和らげるためにワインを何杯も飲んだ。

 首にキスをしようと身を屈めた時、唇の下で彼女の肌が焼ける様に感じた。彼女は目を閉じて、赤面し、恥ずかしそうに、しかし自分を差し出す事に積極的だった。

 一瞬、できると思った。でもベッドに横になろうとした時に、避けられない事が起こった。イメージ。笑顔。キャンディ。それはあまりに強く心に現れ、他のすべてが消えた。パティへの裏切りの感情、罪悪感がすぐに襲い掛かってきた。私は息を荒くしながら、続ける事が出来なかった。「許してくれ。」「どうしたの?」彼女は混乱して聞いた。「気分が悪いんだ。」と嘘を言った。

 私は真実を彼女に告げる勇気がなく、その親密な瞬間でさえ、他の女性が私の心を占めている事を言えなかった。私は急いで服を着て、その夜は別の部屋で寝た。パティはそれ以上何も言わなかったが、彼女の目には拒絶された事を知っている人の静かな痛みが見えた。

 記憶は薄れて行ったが、重みは私の肩にのしかかってきた。私はローズマリーを見た。彼女はまだそこに居て、返事を待っていた。「パティにふさわしい男になろうとしているんだ。」と、ついに低い声で言った。彼女はため息をつき、いら立ちを隠せなかった。「アルバート、感情だけじゃないんだ。時には決意の問題だ。」私は黙っていました。なぜなら、私は一度既に決めていたからだし、それでもキャンディは私の中で生き続けている。

 

第7章 キャンディの視点

  キャンディはウィリアムの予約したレストランへ向かった。レストランでは、すべて完璧な準備が整っている様だ。少なくとも見た目は…私はウィリアムの前に座り、目に届かない笑顔を無理に保った。まるでロマンティックな雰囲気が私達の亀裂を隠してくれるかの様に。私は周囲に集中しようとした。部屋の後ろで演奏する音楽家のピアノの音に。しかし、どうしても心は裏切った。何度も何度も、何度も避けようとした視線…アルバートに戻った。私は軽く首を振った。いや、彼の事を考えちゃいけない。ローズマリーと約束したし、これ以上彼に苦しみを与えたくなかった。

 一方、ウィリアムはビジネスや会社のプロジェクトについて、ヨーロッパでのオフィス拡大を望むパートナーについて話していた。彼の口調は自信に満ちていて、練習したみたいだったが、ほとんど聞こえてこなかった。私の心は二人の兄妹を比べているのに忙しかった。突然、ウィリアムは声を潜め、私に身を乗り出してきた。「キャンディ」彼は私の手を取り、触れ方は、独占的だった。「昨日はぶっきらぼうだったのは分かっています。今日はやり直したい。」と言った。私は彼の目を見て、彼の目には奇妙な確信があり、決意と誇りが交じり合っていた。私は静かに頷いて、言葉で返せなかった。彼は私のしぐさに満足して微笑み、さらに身を乗り出して唇に触れようとした。私は本能的に顔をそ向け、彼のキスが頬にかすかに触れた。一瞬で空気が変わった。ウィリアムはしばらく立ち止まり、「遅いかもな。そろそろ家に帰った方が良い。」と抑えた声で言い、ワインを一口飲んだ。「家」という言葉は、招待というより命令に私には響いた。食欲は全くなかった。胸の中は罪悪感と悲しみが絡み合っていた。

 彼を傷つけたくないし、彼の性格爆発に直面したくなかった。私は従おうと努力し、笑顔を浮かべ、あの夕食や贈り物がその空白を埋めているフリをした。しかし、現実は耐え難いものだった。ウィリアムはアルバートではなかった。同じ青い目を共有しているが、まるで昼と夜の様だった。唇を噛み、震える手をグラスを持つ事で隠した。私は再びアルバート事を思い出した。彼の存在だけで私を落ち着かせ、彼の沈黙がウィリアムの華やかな言葉よりも誠実である事を。

 私達はテーブルの間を出口へと歩き、彼の指は愛情というより、警告の様に私の腰を強く握った。外では、私は深呼吸をし、少しでも慰めを求めて、新鮮な空気を探した。しかしウィリアムの腕がまだ私に回って居て、私の自由はただの幻想にすぎない事を思い出させた。

 記憶の片隅に、悲しみと失望が入り混じった表情で、私を見つめるアルバートの姿を見るのが怖かった。ウィリアムの傍を歩き続けなければならなかった。一歩一歩が前よりも痛みを増していた。「感じない事を学ばなければならない。」と私は心の中で繰り返した。

 でもそれは不可能な事だと分かっていた。なぜなら、私の傷はまだ開いており、ウィリアムの所有欲に満ちた仕草は、私が失ったものを思い出させるだけだったから。

 

ウィリアムの視点

 車を降りると、冷たい夜風が私達を撫でた。キャンディは私の隣を歩き、あの無表情で私を必死にさせた。私は彼女に豪華の夕食を用意し、穏やかな雰囲気を作ろうとし、口調を和らげようとした。しかし、私たちの間には、まだ見えない壁があった。名前と顔が刻み込まれた壁、アルバート。

 私達は邸宅に入り、彼女は私に数言だけ言って、シャワーを浴びると言った。彼女のドレスの絹が無意識に揺れるのを思いがけない挑戦の様に動いた。私は深呼吸し、ゆっくりネクタイを外した。

 今夜もいつもと同じ終わりにはならなかった。彼女は自分の世界に閉じ籠り、私は無関心に耐えている。私は彼女の夫だった。彼女を手に入れなければならなかった。一時的な気まぐれではなく、自分のものである事の肯定として。

 閉ざされた扉の向こうから流れる水は、まるで挑戦の様だった。「今度はどんな言い訳をするのだろう?」と皮肉を込めて靴を脇に置きながら思った。予告なしにその中へ入った。蒸気が鏡を曇らせ、すべてを温かい霧に包み込んだ。そこに彼女は背をむけていて、水で真珠の様に肌が濡れ、髪が濡れていた。その光景は直ぐに私の血に火をつけた。

 私は彼女の後ろに滑り込み、彼女に身を隠す隙を与えず、手を彼女の曲線に置き、腰に沿って、お腹へ触れた。顔を下げて、彼女の肩にキスをした。いつも私を狂わすあの香りを吸い込んだ。「キャンディ」と私は彼女に呟き、隣で水に浸された。君は私のものだ。

 最初は動かなかった。一瞬彼女が折れて以前の様に唇を開いてくれるのかと思った。しかし、突然それが硬直し、私の手の下で震え、手探りでタオルを探そうと彼女の手が動いた。「何故抵抗する?」私は低く、欲望といら立ちを込めて質問した。「あなたは私の妻です。それが君の務めだ。愛させてほしい。」彼女は答えなかった。彼女はただ恐怖と震えで私を見ていた。その表情は私に短剣の様に私を刺した。なぜ彼女は私を望まないのだ?「ウィリアム、お願い。」と彼女はついに囁いた。その口調は拒絶というより懇願に近かった。彼女の目に輝きも頬の赤みも無かった。私は彼女の手首を急に離し、目を逸らした。誇りが砕け散った。「出て行け。」と私は命じた。彼女はためらわず、一瞬のうちにタオルを掴んでほとんど逃げ出そうとし、私は独りぼっちで水が体を流れた。両手を壁に置き、冷たいタイルに額を押し付けた。

 水が肌を滑り落ちたが、私を燃やしたのは屈辱だった。妻は私を恐れていた。妻は私を拒否した。そして最悪…心の底では、彼女はまだ彼に縛られていたのでそうしたのだ。キャンディのすべてはアルバートよって刻印されていました。彼の思い出、彼の笑顔、更には彼の沈黙。私は無力な状態で、拳で壁をバタンと叩いた。彼は私が持っていないものを持っていましたか?水は落ち、私の怒りと混ざり合いました。

 私は代わりであり、残りであり、空いた場所を占めていた。そして彼は彼女の姓や親密さやベッドを奪い取ったが、決して彼女の心を奪う事は出来なかった。アルバートに、彼女が幸せそうにしているのを見せつけて、彼にさらなる痛みを与える計画は、さらなる苦しみのはず…。私は無気力に壁を叩いていた。彼にあって私にないものは何だったのか?なぜ彼の忌まわしい愛が、私の前でさえ、彼女を所有するという試みの中で、欲望ではなく冷たさで震えたのか?彼女の表情を思い出し、それが彼を追い詰めた。あれは他者に心を捧げた者の表情だった。

 そしてそれはいつもアルバートです。私は歯を食いしばり、諦めないと自分に誓った。例え忍耐強く、あるいは厳しく彼女を壊さなくてはならなくても、いつかキャンディは完全に私のものになり、アルバートにさらなる苦しみを与えるであろう。私は彼女にも、彼の影でい続ける事にも耐えられませんでした。

 今は、肌に流れる水が残り、もう一度敗北を洗い流していた。

 

第8章 キャンディの視点

 私はタオルを胸に押し当てて、盾の様にして浴槽から逃げ出した。肌を走る冷たさは水からではなく、ウィリアムの手が私の体に触れた感触から来ていた。彼の視線の重み、彼の声の硬さ「私の義務」と呼ぶのを感じていた。廊下を歩きながら、足が震えていた。私はほとんど思考をまとめる事が出来なかった。ただ素早く服を着て、どんな形でも身を隠し、脆さの感覚を取り除きたかっただけだ。私はぎこちなくクローゼットを開け、ナイトガウンを取り出して着た。髪を乾かしたり、他にする力もなく、ただ布団の中に潜り込むしかなかった。まるで暗闇に怯える少女の様に。私は横向きに寝て、眠ったふりをした。記憶はまだ鮮明だった。ウィリアムは欲望と怒りが入り混じった声で主張した。

 彼の青い目はアルバートとそっくりだが、そこには温かみも優しさもなく、ただ血の気が引くような憤りがあった。どうして体がこんな反応をするのか?アルバートといた時の様な、欲望も、全身の繊維に火花を灯す様な炎も無かった。代わりに、本能的な恐怖が、屈してはいけない、逃げろと叫んでいた。もしかしたら臆病だったのかもしれない。あるいはそれが生き残る唯一のものだったのかもしれない。そして私は従がった。

 ドアが開く音が聞こえた時、心臓が激しく鼓動した。私は布団の中で緊張し、息を止めた。彼の足音はゆっくりと、確実に、家全体の静けさを乱す力を持っているかの様に近づいて来た。彼は何も言わずにベッドに腰を下ろし、ベッドは彼の重みで軋み、マットレスは沈み、私の体は、彼の方に転がった。体が硬直したが、彼は私に背を向けた。部屋には静寂が訪れ、叱咤も怒りの言葉もなかったが、その存在が叫びよりも強く語っていた。

 私は彼の事をよく知っているので、傷ついたプライドは肉体的な傷よりも痛みを伴い、遅かれ早かれその痛みは出口を求めるだろうと分かっていた。

 私はゆっくり体を反対側へ向け、暗闇を見つめた。彼が強く求めなかったことに安堵し、その後に来るであろう嵐への恐怖と同じくらい大きかった。この拒絶後、どうやって彼と向き合えばいいのだろうか?

 最悪だったのは、その真実すら説明できなかった事だ。私の体も、心も魂も、彼を欲する様に学ばなかった。全力を尽くして努力しても、私の愛はアルバートによって燃え上がった様には、ウィリアムとは燃え上がらなかった。自分に、ウィリアムにも残酷だった。幸せを約束してくれた男が、その歪んだやり方で夕食や贈り物、表面的な関心でそれを叶え様としていた。でも私は、彼の望む報酬を返すことが出来なかった。薄暗がりの中で、ウィリアムの呼吸を背後で聞いていた。

 「何故なの、アルバート?なぜ一番あなたを必要としていた時に私を一人にしたの?なぜ時間と状況に引き込まれる前に私のために戦わなかったの?」と私は思った。

 しかし、アルバートはもういないし、その代わりに野心と恨み、そして厳しい愛し方を持つウィリアムがいた。その夜、冷たいシーツの下で、私は体が反抗する事を理解した。なぜなら、もう一つの愛の記憶を深く心の奥底に抱えているからです。約束や義務でそれを隠そうとしても消えないものだった。私は涙がバレる前に眠れたらと思った。

 

アルバートの視点

 時計の音がもう会議の時間は終わりだと告げ、私の忍耐も限界だと告げた。私は1時間以上も投資家達の意味のない数字や契約、予測について話し合っているのを聞き続け、心は遠くへ彷徨い、認めたくない程だった。

 「今日はこれで十分だ。後は書面で送ってください。」と私は言い、皆が帰った後で、私は部屋に一人残されました。沈黙は私の思考と同じくらい強く襲って来た。その時、一番会いたくない人が部屋に入って来るのに時間は掛からなかった。ローズマリーだった。彼女は会議の成功を喜び、あの落ち着いた優雅さで近づいてきた。

 彼女の立ち振る舞いには、エルロイ叔母さんを思い出させる何かがあり、その類似性が認めたくない程私を苛立たせた。「アルバート、どうして最近そんなにぶっきらぼうなの?」と彼女が聞いた。私は黙って彼女を見つめ、数日間心に止めていた言葉を言った。「どうしてキャンディに話したの?」彼女の顔は一瞬歪んだが、それだけで、彼女がそれを予期していなかった事が私には推測で来た。「どうして…どうしてそれが分かるの?」「調べる必要はない。私はあなたをよく知っている。誰かが家族の糸を操ろうとすると、あなたはいつも最初に糸を引きます。」彼女は眉をひそめた。「私は操ったりしないわ、アルバート。彼女と話しただけ。彼女の様子を知りたかっただけよ。」「彼女はどうだったの?笑わせないでくれ。」と喉から込み上げてくる皮肉を押さえた。「それで私に何をして欲しかったの?無視する?彼女はウィリアムの妻だよ。」とローズマリーが聞いた。「まさにその理由だ。彼女はウィリアムの妻だから、彼女に近づくな。」とテーブルを叩いて言った。彼女は私を解読する様に見ながら、「アルバート…どうしてそんなに影響を受けるの?」と聞いた。私は黙った。答えたくない質問だった。「さっきはね、あなたがエルロイ叔母さんの、すべてをコントロールするやり方に息苦しさを感じていると言った事を思い出した。今のあなたを見てごらん。彼女にそっくりだ。」「そんな事はないわ。」彼女は傷ついた口調で言ったが、的を得た事は分かっていた。「もちろん、そうだよ。」ローズマリーが答えようと口を開いた時、ドアがノックされ、若い従業員がウィリアムの到着を告げた。私の胃のあたりがチクチクしてきて、「完璧だ。今日欠けているものが来た。」と言った。少年に、応接室で待つ様にと伝え、私は姉の方を向いた。「この話は後で終わらせよう。」と言って、ドアに向かって歩いた。「アルバート。ウィリアムを敵視しないで…」と懇願する様な声で言うローズマリー。彼は答えなかった。彼女を部屋に残し、彼女のプライドは傷つき、視線は緊張していた。

 アルバートは廊下を歩きながら、ネクタイの結び目をきつくし、「さて、ウィリアム‥‥今度は何を探しているのか見てみよう。」と呟いた。私はまるでもう一戦交えるかの様に、自分のオフィスの中に入って行った。

 

第9章 オフィスの中の空気はいつもより重く感じられた。コーヒーを注文し、必要からではなく、香りが落ち着く助けをしてくれるからだ。ウィリアムが単に挨拶をしに来たわけではない事は分かっている。彼の様な者が親密な握手をする時は、隠された目的があった。

 部屋に入ると、彼は私に向かって「アルバート」と親しみで歩み寄ってきた。「君が私の仕事の事に、そんなに興味があるとは知らなかったよ。」と私は落ち着いた口調で言った。「おい、おい…私は兄の事を気にしているんだ。家族は一緒に居るべきだよね。」私はただ彼を見ていた。「それが来た理由なら、その行為は達成されたと考えてよい。でも、何か他にあると思います。」ウィリアムの顔が変わった。その下にある焦りが露わになった。「いつも率直だね。分かりました。否定しません。金銭的な問題だ。」「金銭的?エルロイ叔母さんの遺産の話じゃないの?」「その通りだ。私の分をくれ。」「そんなに早く?あなたには叔母からいくつかの会社の株が割り当てられているはずですが。」ウィリアムは肩をすくめた。ウィリアムは「これらの投資は既にサイクルを完了しています。」と言った。「それらのサイクルを完了したのか?それとも君が疲弊させたのか?」私は苛立ちながらも冷静に尋ねた。彼は無理に笑顔を見せ、「すべてが思い通りになるわけじゃないんだ。商売は時には予測不能だ。」「良いよ。特に、未完成のプロジェクトが放棄される時は尚更です。」彼の表情が鋭くなった。「知っているかい、アルバート。皆が君みたいに、すべてを完璧に見せる才能を持っているじゃないんだ。私達の中には…合併…」「複雑さは人生の一部だ。」と私は身を乗り出して言った。「違いは、それを直視するか、言い訳として使うかにあります。」

 ウィリアムは皮肉を込めて小さく笑った。「まるで完璧な模範の様に話すね。教えてくれ。パティとの結婚生活はどうだ?聞いたところによると、あまり模範的には見えないですが。」彼の言葉は胸に刺さったが、「個人的な問題と混同しないで、ウィリアム。私生活の話をしに来たんじゃない。」「ああ、もちろんだ。どの話題を話す価値があるか、そうでないかは君が決めるんだ。いつもこんなに…そうだね。」「もし他に役に立つ話が無いなら願いを取り下げてもらえるとありがたい。遺産を前倒しするつもりはありません。」

 ウィリアムは黙り、そして微笑んだ。目が輝いていた。それは挑発だ。「数日休むかもしれない。キャンディと私は家族を拡大しようかと考えています。」その言葉は私の胸にドスンと落ちた。私はすぐに返事をしなかった。「もしそうなったら、私の祝福を貰えるよ。」ウィリアムは私をじっと見つめ、まるで仮面の日々を探しているかの様だった。「覚えておくよ。」と彼は言い、部屋を出て行った。毒された言葉の残響を残した。否定しても、彼の言葉は私を傷つけてしまった。

 ウィリアムが子供を持ちたいという願望のせいではなく、私を襲った無意識のイメージがあったからだ。赤ん坊を抱えて笑うキャンディの姿…でも彼の子ではなく、私の息子になりえた子の。「キャンディ、君と子供が欲しいな。」抑えきれないため息の様な思いが心を過った。今残っているのは、その壊れた幻想の残響だけだった。

 しかし、私の内側は、彼女を愛した初日の様に生き生きと燃え続ける不可能は欲望があった。

 

ウィリアムの視点

 オフィスを出て、エレベーターを待っていると、すぐに注意が向いた。ジョルジュが茶色い髪を後ろで結んでいる女性と話していた。パティだ。アルバートの妻。何て興味深い偶然でしょう。彼は彼らを観察し、そこで私の頭は働き始めた。アルバートは最近彼女に無関心だった。もし彼が彼女を大切にしていないなら、盤上で役に立つ駒に出来るかもしれない。

 彼は深呼吸をして、お膣浮いて彼女に近づき、「わあ、もしかしたら、パティですよね?」彼女は少し緊張しながら顔を上げ、「ああ、はい、ウィリアムさん。ここであなたに会うとは思わなかった。」彼女の最初の不快感と礼儀正しさが混じっているのに気が付いた。彼女はジョルジュに頼まれた書類を届きに来て、今帰る所だと言った。「タクシー?送って行くよ。私もそちら方面に行く予定だから。」と彼は言い、彼女はためらった。「迷惑を掛けたくないのよ。ウィリアム、それに…あなたとアルバートは…普段は…」「仲良くない?」彼は面白そうに口を挟んだ。「確かに私達は違います。でも私がそんなに悪い影響だと思う?」彼女は顔を赤らめて、「いいえ、もちろんそんな事じゃないわ。」と言った。

 「あなたはとても賢い女性ですね。パティ、そして友好的で…」彼女の唇が驚きと恥ずかしさの間で震えていた。

 アルバートは決して情熱的な言葉の持ち主ではなかった。一方で私は、女性を溶かす言葉を正確に知っていた。「ええと、もしそう言うなら、乗るわ。」「じゃあ、行こう。こんなに素敵な女性を一人で待たせたくないからね。」一緒に駐車場まで行った。車のドアを開けた時に、運命は時に私の計画に寛大だと思った。彼女は純粋で、読み取り易かった。それは弱点だ。

 車に乗り込むと、彼は軽い口調で話し始めた。「君と話すのは久しぶりだね。アルバートが何でも自分の中に隠しているのは面白い。あなたにとって、簡単な事じゃないでしょう。」「アルバートは…いい人よ。ただ…彼は頭の中で色々考えている。」と指輪をいじりながら言うパティ。「多すぎると思うよ。」と理解した振りで私は言った。「帰る前にコーヒーでもどう?すぐに終わるって約束するし、アルバートには知られなくていいって。彼に悪く思って欲しくない。ただ…もう少しあなたの事を知りたいです。」「分かったわ。コーヒーだけ…」「話は決まりだ。」と私は片方だけ上がった笑みを浮かべた。車が前進するにつれて、冷たい満足感が私を駆け抜けた。それはパティの事ではなかった。本当の意味では。アルバートの事だ。そして、彼の世界を一つづ壊していくことが出来る…

 

第10章 パティの視点

 ウィリアムの様な人が私に話しかけて来るとは思いもしなかった。私は結婚によりアードレー夫人となり、両者の愛ではなく、眼鏡をかけた、普通の体、家族の集まりでは気づかれない恥ずかしそうな笑顔の女性です。しかし、今日会議室を出た時、ウィリアムが本物の笑顔で近づいてきた。振り返れば、彼の青い瞳に宿る計算高い輝きに気が付くべきだった。

 「パティ、アルバートは今日が外出だって知っているよ。コーヒーでもどう?」彼は柔らかく、ほとんど守る様な声で言った。私は受け入れました。なぜ?それは紳士的なジェスチャーだと思っていた。ずっと自分にとって馴染みの無い家族に溶け込もうとする試みだった。それにウィリアムはアルバートの双子で、同じ金髪、同じ明るい青い目をしていたが、アルバートが温かさを持っているのに、ウィリアムは…何か別のものだった。

 私達は彼の個人オフィス、ビルの最上階に上がった。広々とした空間で、ミニマリストの家具と堂々とした街の眺めが広がっていた。彼がドアを閉める前に秘書に何か静かに言っているのに気が付いた。「邪魔しないでくれ。」と彼は呟いた。その瞬間、背筋に小さな寒気が走ったが、エアコンのせいだと思った。

 「どうぞお座りください。コーヒーは直ぐに来ます。」と彼が黒い革のソファを指さした。私は頷き、落ち着いて眼鏡を直し、落ち着いたふりをした。コーヒーが届くと、彼は私の隣に座った。近すぎる。義兄妹同士の会話には近すぎる。その時は、まだ自分がただの駒に過ぎない事に気が付いていなかった。後まで…

  

ウィリアムの視点

 スィートのドアの鍵が、カチッという音を立てて閉まり、私が自分の演出した小さな劇の始まりにぴったりの音だった。目の前では、パティはソファの端に座り、落ち着かない指でブラウスの端をいじっていた。彼女のすべてが不安を叫んでいた。見られたいという哀れな欲求が。

 アルバートは、いつも世界の無意味な称賛を集める才能を持っていたが、私は彼そっくりだが不完全な鏡像として、狡猾さで一寸一寸の土地を勝ち取らなければならなかった。キャンディは勝利だったが空虚だ。彼女は今でも兄の幽霊を恋しく思っている。でもこれは…これは違った。これは深層から毒に満ちた勝利となるだろう。単にアルバートから何かを奪う事だけではなかった。彼が選んだ女性でさえ、私の影響から逃れられない事を示すためだった。

 「コーヒーは直ぐに届くだろう。」と私はわざと低い声で言い、彼女は頷いた。眼鏡の奥には目に届かない、恥ずかしそうで緊張した笑みを浮かべた。彼は些細な事を話しながら、彼女の一挙手一投足を観察した。それは開かれた本で、私が流暢に話せる脆さの言語で書かれていた。

 コーヒーの乗ったトレイが届いた。上質な陶器のカップにコーヒーが2杯、苦い香りが私達の間を満たしていった。私は彼女の隣に座った。計算されたパーソナルスペースへの侵入が、壁を壊す第一歩だった。彼女は少し困ったが、動かなかった。

 彼女はアルバートの事、旅の間にどれほど彼が恋しかったかを話した。それが私のオープニングでした。「あなたの手はとても繊細ですね。」と私は囁き、自分のカップを置いて、彼女の手を覆い隠した。彼女の肌は冷たかった。彼女は息を呑んだ。小さく、ほとんど聞こえない息遣いが私には交響曲の第一音の様に響いた。「アルバートは盲目だ、パティ。」目の奥に疑念が宿る大きな目が私の目と合った。「彼は目の前に何があるのか見えていない。君は美しい。」「美しい」という事が簡単に口から出た。私にとっては形容詞で、道具に過ぎないが、パティにとっては、それは聞きたかった真実の確認だった。ささやかな褒め言葉は、彼女の不安の中心に的を突いた。

 私の脈は穏やかで、彼女のほとんど気が付かれない震えの中でも絶え間ないメトロノームの様に鳴り響いていた。私の腕がゆっくり彼女の腰に回った。彼女は一瞬硬直し、最後の弱々しい防御の試みだった。「しっ」と私は彼女の耳元で言い、背筋に冷たいものが走るのを感じた。怖がらないで、大切な人。誰も貴女を傷つけたりしません。もちろんそれは嘘だった。彼女はそれを信じたかった。もう一方の手で彼女の眼鏡をはずし、テーブルの上に置いた。「見せてくれ。」彼の顔は直ぐ近くにあった。「称賛されるってどんな感じか教えてあげるよ。」私の唇が彼女の唇に触れた時、最初の接触は静止的で、恍惚としたものだった。彼女は動かず、欲望と礼儀の間で麻痺していた。でも急がなかった。私の口はしつこく、説得力があり、彼女が、正しく予測可能な私の兄とは経験した事の無い体験で動いている。そしてそれが起こった。

 喉から擦れたうめき声が漏れ、全身が崩れ落ちた。彼女の唇は反応し始めた。最初はぎこちなかったが、やがて必死に切望した表情で、私はみだらな満足感で満たされた。彼女の手は、今は私のシャツの脇にしがみ付いていた。

 私は一瞬彼女を押しのけて、彼女の顔を見た。うるんだ目、半開きの唇、息を切らした息。勝利は安っぽいキャンディと他人の涙の味だった。「とても美しかったです。」

 私は彼女を寝室へ案内した。夕暮れの光がブラインドを通して差し込み、オレンジ色に包んでいた。それは温かいはずなのに、私の目には征服の色に映っていた。彼女の唇から漏れるため息の一つ一つ、体を震わせるすべてのものは、私自身の勝利の残響し過ぎなかった。呼吸はまだ荒れていたが、快楽や優しさの様な感覚は何も感じなかった。ただ冷たく、絶対的な確信だけがあった。アルバートは想像も出来ないくらい苦しむだろう。この女性、パティは内気な心と愛されたいという欲求を持ち、私の最も正確な武器になった。しかも彼女はそれに気が付いていなかった。

 彼は彼女を見つめ、自分では感じていない敬意を装い、拳を握り締めた手で、彼女の髪を撫でた。ゲームは始まったばかりだ。

 

パティの視点

 遅い、厳しい現実に戻れ。ウィリアムのスィートのシャワーで流れる水の音が、呪文が解ける為に思い出させてくれた。欲望とお世辞の霧は消え、その代わりに、胃に絡みつく刺す様な冷たさが残った。そこに私は裸で、彼の匂いがする綿のシーツの間にいた。魅力的で恐ろしい力の匂いが漂っていた。マットレスのわずかな軋みの音で逃げたのがバレるのを恐れて、慎重に足を動かした。全身の筋肉が痛み、それは情熱からではなく、突然使い捨ての体になった事の緊張からだ。おもちゃだ。その言葉は、平手打ちの様に私の心に響いた。それで終わりだったのか?ウィリアムの手にあるただのおもちゃ?

 震える手で服を着て、ブラウスのボタンを無造作に留めた。パティ、見えない妻。気づかれずにいた人。今私は汚れていて、間違った危険な形で見える様に感じた。

 私は頭を下げて建物を出て、警備員の視線を避けた。夫のアードレー邸に戻る車の中で、ネオンの光と罪悪感のボケた時間でした。アルバートになんて言う?彼の目を見ても良いですか?頭の中で言い訳を作った。頭痛、祖母の訪問、肌を焼くような真実を隠す様に。

 到着すると、屋敷の重苦しい静けさがは私を迎えた。夫の心配そうな視線と、時には機械的ではあるものの、私の存在を認める様な質問を期待していました。代わりに、最も信頼されているメイドのドロシーが思いやりのある笑顔で近づいてきました。「今晩は。パティ夫人。アルバートさんから電話があって、彼は申し訳ないが、緊急で遅くまでオフィスにいると言っていました。」と静かに言った。「彼は貴女に彼抜きで食事をする様に言い、もし望むなら祖母のマーサを訪ねてもいい。」と言いました。

 

第11章 パティの視点

 彼の言葉はあまりの甘く、安堵にはならなかった。それらはとどめを刺した。私は固まったまま、手はまだドアノブに置いてあった。彼は直接私に言ってくれなかった。彼は私の不在に気が付かず、私の孤独にも気に掛けていなかった。内側で蝕んでいた罪悪感が消え、冷たく痛みを伴う憤りに取って代わった。私は外で、偽りの愛の囁きで彼の弟に身を委ね、最悪の裏切り者の様に感じていた。そして、アルバートは私が家にいない事すら気づいていなかった。こんな事が他に何度あった事だろうか?どれだけの夜、私の隣が空っぽで、彼が気が付かなかった事が夜がどれほどあった事か?

 「奥様?」ドロシーの声でトランス状態から覚めた。「ああ、ありがとう、ドロシー。」私は何とか言った。「実はもう祖母と一緒に食べたんです。それは即席の訪問でした。」嘘は私の口から飛び出した。それが私を恐れさせた。私はためらわなかった。まるで従順に待っているだけのパティから切り離されたかの様だった。

 私は階段を上がり、部屋へ向かった。広くて完璧に整った夫婦の寝室は、突然ホテルの部屋の様に感じられた。冷たく、無機質だった。眼鏡をはずして、鏡の中の私を見た。唇が少し腫れている。私の目は泣いているのではなく、静かな怒りで輝いていた。私は片手を腰に当てた。ちょうどウィリアムの腕が、夫が示した事の無い所有で握られた場所だった。「彼は私がいない事に気が付かなかった。」と私は鏡の中の自分にささやいた。

 そして生き残るための行為として、裏切者で飢えた私の心は起こった事を書き換え始めた。もはや弱さを見せる為の行為でも、胸が痛むような失敗でもなかった。それは情熱…激しさ。アルバートが無関心な、心地良く、私を望んだ事の無い形で求められる事を。ウィリアムは私を利用した。それは分かっている。彼の青い瞳には石の様なものがあり、アルバートの目とは全く違っていたが、そっくりだった。しかしその瞬間、結婚の痛みの生々しさの中で、私は結婚の冷たさの事実よりも、彼らの嘘の温もりにしがみ付く事を選んだ。胸に重く危険な決断が降りかかった。

 たとえ邪悪なゲームの中でも、ウィリアムがこの孤独の避難所を提供したら…彼女はそれを断るつもりだろうか?私はベッドに横たわり、隣の空虚さを海の様に感じた。もう罪悪感を感じなくなった。私は戦争中だ。もうどちら側でも、あるいは心の奥底で、両側が敵なのかどうか解らなくても、戦う覚悟が出来た。

 屋敷の静寂は今や私の共犯者となり、ウィリアムのソファではなく、凍り付いた自宅の心臓部で始まった裏切りの秘密を守っていた。

 

ウィリアムの視点

 背中に温かいお湯が落ちる感覚は、起こった事の味を完全に消し去る事は出来ない。鏡の前で蒸気が消えるのを見ながら、自分が望んだものを手に入れた時の半分微笑みを浮かべる自分を見つめる。パティがかつてキャンディに対して感じた感情を私の中に呼び覚まさせた事は否定できないが、誰を騙しているのでしょうか?私は成功した。空虚な気持ちになるべきではないのに、そう感じている。彼女は読みやすく、内気と孤独が入り混じっていた。無理強いする必要はなかった。注意深く見て、適切なタイミングで彼女の手に触れるだけで十分だった。残りは一人で来た。誇りには思いませんが、恥じる事も無い。結局、アルバートは私から何度も奪っているのだから、彼女が感謝の気持ちを知らなかったものを奪わない理由はない。

 私はタオルを落とし、濡れた髪に手を通し、彼女がもういない事に気づいて小さく笑った。彼女は逃げた。女性は落ちた後に逃げ出せば罪悪感が軽くなるといつも信じている。しかし、彼女は戻って来る。遅かれ早かれ、そうなる。私は人の目を読む術を知っている。そして彼女の目には、恐怖や混乱以上のものを見た…好奇心。親愛なるパティ、好奇心はいつも降伏への一歩だ。

 

 

 

 

 

 

 

文字制限数を超えたため、「その2」に続きます。