「チャンミン…」

俺は、何と言葉を発していいのか 
頭の中でいろんなセリフを思い浮かべる

でも、結局
ストレートに今のチャンミンの気持ちを
知りたいと思った

「チャンミン…今日
    俺の職場にシオンさんが訪ねて来た
    君は、病院で大事なプロジェクトに
    参加するとになっているんだって?」

チャンミンは肩をピクリと震わせて
驚いた顔をして振り返った

「ユノさん…なんで…」

俺の意外な問いかけに
それ以上言葉が続かないのか
目を見開いて
ただ俺を見つめていた

「今日  俺の職場に
    シオンさんが訪ねてきた」

シオンさんの名前を出した途端
チャンミンの肩が微かに震えた

「シオン…さんが?」

「他人から聞かされるより
    チャンミン…
    君の口からちゃんと聞かせて欲しかった」

俺が一番言いたかった事…

チャンミンの本当に望む事を
本人から直接聞きたい

その上で、きちんと話し合って
2人で結論を出したい

「ユノさん   ごめんなさい
   昨日は突然の事で
   言い出せなかった

   だけど…僕の気持ちは…
   この話は断ろうと思っています」

チャンミンは普段通りの表情で
俺に返事を返した

だけど…俺は何故だか
それが納得できなかった

「シオンさんの話だと
    これは、学生時代からの
    君の夢でもあるんだろう

    そんなに簡単に諦めていいのか?」

俺の言葉にチャンミンは
少し小首を傾げふっとため息を吐いた

「確かに…それはそうなんですけど
   でも、今はそれよりも
   ユノさん…
   あなたのそばにいたいんです」

そう言うとチャンミンは
俺の胸に飛び込む様に抱きついて来た

「チャンミン…?」

そんな姿に俺は一瞬戸惑った

チャンミンは
俺の戸惑いに気づいたのか
さらに背中に回した手に力を込めて

「ユノさん…僕の気持ちは
    迷惑ですか?」

少し震える声で
そう問いかけた

「そんな事はないよ
    でもね…大事な事だから
    よく考えて答えを出して欲しいんだ」

本当は…
チャンミンの言葉は嬉しかった
だけど…
俺の頭の中に
シオンさんの話が響く

『チャンミンのお父様が
    他の過疎の村で働いているんです』

もしかしたら…
チャンミンは、父親と何処かで
再会したいと思っているのではないかと
ふと…思ってしまった
      
だとしたら、
このままチャンミンの気持ちを
受け入れていいのかと
迷いが生まれて 
俺はチャンミンを抱き締め返しながら
そう答える事しかできなかった