そのまま電車に乗って

2つ先の駅で降りた

 

テミンに連れていかれたのは

オフィスビル街にある中でも

特別大きな建物の前だった

 

「こんな大きなビルに

   事務所があるの…」

 

僕は、そのビルを見上げて

びっくりした

 

テミンが所属する芸能事務所が

そんなに

大手の事務所だとは思わなかった

 

「当然だよ

   U-Knowと同じ事務所だもん

   これくらい、当たり前だろう?」

 

テミンは、少し得意げな顔で

僕にそう言った

 

「えっ⁉︎」

 

僕は驚きの声をあげた

 

『U-Know』

 

芸能人に疎い

僕でも知っている有名人

 

黒い切れ長の一重の瞳が印象的で

彫刻のような綺麗な顔立ち

 

女性のように繊細な雰囲気を持ちながら

その一方でワイルドな一面も表現出来る

 

モデルで人気に火がついて

歌も上手かったからCDも出した

 

それから

多くの人に知られるようになった

 

学生の頃から好きだったという

ダンスも本格的で

今では、モデルの仕事よりも

そちらの方が

本業みたいになっていた

 

そんなに、有名な人がいる

事務所に行けるなんて

滅多にないチャンスだ

 

「へぇ…凄いね!

   本人に会えたりするのかな?」

 

U-Knowに会えたなんて

人に自慢出来る…

 

平凡な学生の僕には

こんな機会なんてそうあるもんじゃない

 

なんて事を思いながら

気軽な気持ちで

テミンに、聞いてみた

 

「もちろん会えるよ」

 

テミンがあっさりと返事をした

 

「わぁ!凄いね

    テミン彼と仲がいいの?」

 

僕は、飛び上がって喜んだ

だって、そんな有名人にあえるなんて

今までになかった事だったから…

 

そんな僕の様子を見ていたテミンが

呆れた顔をして

 

「だって、紹介したい先輩って

    そのU-Knowの事だもん」

 

事も無げに

僕に向かってそう言ったんだ…