「チャンミン!」

夏休みに入ったばかりのある日
満員電車の中で
少し離れた場所から
声をかけられた

人が多くて
誰だかよくわからなかくて
声が聞こえた方を見ていると
人を掻き分けながら
高校時代の友人の
テミンが近づいて来るのが見えた

「久しぶりだね   元気だった?」

高校を卒業して以来
初めて会ったテミンは
相変わらず、女の子のように綺麗な
笑顔を見せて僕の隣に立った

「本当に久しぶり
   3年以上会ってないよね
   懐かしいね」

僕とテミンは同じクラスだったけど
いつも、一緒にいる友達ではなかったから
電車の中で声をかけられて
少し驚いていた

「大学楽しい?」

会話が続かなくて…
そんなことを聞いてみた

「大学?やめちゃったよ
   今は、モデルの仕事をしてるんだ」

「モデル⁉︎」

「そう、ファッション雑誌の仕事が
    主で、まだ駆け出しだけどね」

にっこり微笑むテミンの笑顔は
確かに学生時代と違って
男の僕でも、ドキッとするほど
妖艶な輝きを見せていた

「チャンミンは大学忙しいの?」

「今日は、アルバイトの面接に行くんだ
   休みの間に
   少しお金を貯めようと思って
   今より時給がいい所に行きたくてね」

就職した後、家から独立したい僕は
その資金を
自分で貯めたいと思っていた

「だったら  僕の事務所に来るといいよ
   チャンミン夏休みだろう?

    付き人さんが怪我をして
    困っている先輩がいるんだ
    君は真面目だから
    きっと気に入って貰えると思うよ」

「付き人⁉︎」

テミンのいきなりの話に僕は戸惑った
いきなり、触れた事のない
世界に誘われて、どうしたらいいのか…

僕が迷っていると
テミンが

「とにかく、これから一緒に
    事務所に行ってみない?
    嫌だったら、断ればいいじゃん」

そう言って、僕の腕を掴んだ

「それに…時給もいいよ」

テミンにそう言われて
僕は…
なんとなく納得してしまった

結局、そのまま
テミンに付いて行って
彼の所属する事務所に
行ってしまったんだ

それが…僕の、苦労?の
始まりだった